エーラー式ベーム式特殊管メタル各種記念写真




Heckel
Biebrich
ドイツのヘッケル製クラリネットのA/Bbセットです。
Heckelといえば、今や全世界で使用されているファゴットのキィシステムを完成させたメーカーとしてファゴット奏者のみならず器楽奏者ならば誰でも知っている名前でしょう。
Heckel社の歴史を紐解いていくと、おびただしい数の発明と特許だけでなくHeckelphonシリーズともいえる自社オリジナル楽器を数多く製作しています。また、WagnerやR.Straussといった歴史に残る大作曲家との友好関係もあったようで、その研究心、堅固たる物作り精神、輝かしい歴史はドイツにおいては他のメーカーとは比較にならぬほど突出していると言っても良いでしょう。
さて、写真の楽器は独自のF#/G#トリラーを装備したHeckel-Klarinetteです。キィシステムは、独自の"Halb-Boehm System"、即ちハーフベーム式と言われるもので、下管の両手小指にて操作するキィシステムはベーム式と同様、それ以外はドイツ語圏で一般的に普及していたドイツ式の運指で操作します。また、1900年にドイツでパテントを取得しているdouble speaker key mechanismも装備されており、このシステムはWilhelm Hermann Heckel時代の1931年、Heckel社創立100周年記念カタログにも見ることができます(メカの表側)。レジスターホールを二つにするメリットは不明ですが、動きがユニークでヘッケル式ファゴットの予想外の動きに似てなかなか興味深いものです。
音色はよくフォーカスされていて、引き締まった感じはやはりドイツ管といった印象ですが、独特の強い抵抗感を持っています。WagnerやR.Straussの持っていたクラリネットの音色のイメージとはこのようなものだったのかもしれませんね。
ロゴ

H.Selmer Paris
Albert System No.12
パリ・セルマーのフルアルバート式クラリネットです。
フルアルバートという呼び方は本来ありませんが、下に掲載している標準的なアルバート式と比べると、かなりキィの数が多く見受けられます。まるでエーラー式のようにも見えますが、これも刻印されている古いロゴからして1920年代後半から1930年くらいまでにに製造されたもので、Selmerブランドの木製アルバート式クラリネットでは最高機種にあたります。4トリラー、Ebレバー、アーティキュレイティッドG#キィ、Eb/Bbフォークを含めた17キィ6リングで、アルバート式においてはフル装備といえます。音色もラージボアの特徴が顕著に表れており、センタード・トーンやシリーズ9の前身であることを思わせます。

OSKAR ADLER & CO.
Markneukirchen
オスカー・アドラーのフルカヴァードクラリネットです。
ぱっと見た目はドイツ式っぽく見えますが、下管のキィシステムを見ればわかるとおり、完全なベーム式的指使いによる楽器で、ジャズパンドが流行り出した1950年代からこの当時はサクソフォン奏者が持ち替えとして使用したJazz-Klarinetteの一種といえます。サクソフォンと同様の運指でクラリネットが演奏可能という触れ込みで普及したものですが、実際には円錐形の管体を持つサクソフォンはオーヴァーブローが8度、閉管構造のために12度のオーヴァーブローをもつクラリネットと比較すれば、運指の問題は別次元の話なのかもしれません。O.Krollは著書"Die Klarinette"のなかでこのことを指摘しつつ、”極度に入り組んだキィシステムの助けを借りて、すべてのオクターヴ関係の運指が同じになるだけのことである”と言って斬り捨てています。しかし、サクソフォン同様に全てのキィがプレートになっている分メカニックも通常の楽器と比較すると複雑な構造になるため、これはこれでなかなか興味の尽きない楽器であると思います。

Boosey & Co.
London
ロンドンのブージー社製クリントン・ベーム式クラリネットのBb管です。
Clinton Systemについてはこの下の項目にて述べましたが、Clintonは更にデザインを進め、1800年代終わり頃から使い始めたのがClinton-Boehmです。
上管にはBarret Actionを残し、Speaker Keyを背面に配置しました。
下管小指のMuller Keyを廃してBoehm SystemのRod-keyメカを採用、左小指にAb/Ebレバー、Forked-F Ventはそのまま、patent C#、F#-G#Triller、また、写真の楽器はワンピースボディですが、上下管連結部にFull-Boehmの様なArticulated G#を採用したものもあります。パッと見た目にはかなりFull-Boehmや見方によっては1010に似た印象を与えますが、かなりユニークなデザインと言えます。下管の運指など、見た目ベーム式のように見えますがGerman SystemやAlbert Systemと同様になっています。
ロゴ

    Boosey & Co.
    London
ロンドンのブージー社製クリントン式クラリネットのA/Bセットです。
ClintonというのはGeorge A Clinton(1850-1913)の事で父Arthurも兄弟Jamesも奏者であると同時に開発・デザインを行なう家系でした。そのGeorge A Clintonが、Boosey&Coの音響デザイナーであったDavid James Blaikleyと共同でデザインしたのが"Clinton System"です。これはAlbert Systemの上管にBarret Actionを組み込んだ物で、上管リングに付いたEb/AbとF/Cを右手人差し指で操作するものです。Barret Actionは現在もOboeに見られる(Oboeの場合は下管F# Keyで操作)メカです。更に下管に替え指C#とForked-F Ventを装着していました。旧タイプだとSpeaker Keyは管体側面ですが、背面に付いていることから1800年代後半以降のものであることがわかります。内径は現在でもイングリッシュボアと呼ばれる15.15〜15.3mmほどの円筒形ラージボアを誇り、後のベーム式を受け入れた1010などの前身となりました。マウスピースのジョイントは現在のものと比べると、幾分細く出来ているために、専用のマウスピースが必要となります。現在のイングリッシュスタイルを代表するP.EatonやHorwarth,マウスピースにいたってはE.Pillingerなどとはやはり雰囲気が異なります。
ついでに豆知識として、”木管楽器とその歴史(アンソニー・ベインズ著奥田恵二訳)”によれば、Clinton Systemは1855年頃に考案されたとの記述がありますが、恐らく1885年の間違いであり、1850年代のClinton&Co.との混同が指摘されています。Clinton社はGeorge.A.Clintonとは全く別のJohn Clintoにより設立され、こちらは主にフルートの開発・製作をしていたようです。

H.Selmer Paris
Albert System No.5
パリ・セルマーのアルバート式クラリネットです。
恐らく1920年代後半の楽器で、当時はF.Barbierの項でも述べたとおり、上級のSelmer、中級のBundy、スチューデントモデルのBarbierという3つのブランドを持っており、それぞれのブランドにベーム式やアルバート式はもちろんのこと、さらに木製のみならず金属製、BundyやBarbierにいたってはエボナイト製のものも作っていました。Selmer社の楽器は、当時でも沢山存在した他社と比べると完成度は群を抜いており、現在野中貿易が日本市場向けに発行されているカタログにも過去に様々な博覧会にて多数の賞を受賞していることが掲載されています(現行カタログに記されている「1935年メタルクラリネット、カタログデビュー」というのはどうやら誤りのようです)。
また、BundyやBarbierが大量生産可能な近代的な工場で作られていたのに対し、Selmerブランドの製品は管体の成型などは郊外の工場で作られましたが、キィの鍛造や管体の仕上げなどは熟練した職人がすべて手作業で行っていました。
写真の楽器は木製の"Selmer"で、15キィ4リングのごく一般的なアルバート式ですが、恐らくSelmer独自のアイデアであろうと思われる上管に大変興味深いメカが付いています。このメカは、左手親指とレジスターキィのみ押さえて出すC#の音が開かないようにするためのもので、右手人差し指F/Cに連動するよう連結がなされています。このメカは、現在のドイツ式タイプの楽器にも欲しいくらいですね。ロゴは、1930年代に入って廃止されてしまった、現在のクランポンのようなマークが刻印されています。現在のロゴは、クラリネットに関しては1928年にデビューした金属製クラリネット"Master"に恐らく初めて採用されたと推測しています。

MADE BY C.G.Conn
ERKHART. IND
アメリカのC.G.コーン製F#-G#メカ付きアルバート式クラリネットです。
C.G.Connについてはもうお馴染みかと思いますが、写真の楽器は通常のRegular SystemにF#-G#Trillerを装備したモデルです。F#-G#Trillerは今までに様々なメーカーが独自の興味深いメカニズムを開発してきましたが、C.G.Conn社もその例外に漏れず、楽しいアイデアを提供してくれました。
このF#-G#Trillerは下管左小指レバーがC#/G#キィと連動するため、通常上管に付いている筈の左小指キィがありません。ですから通常のC#/G#は最低音EおよびチューニングAのレバーを押さえて出さねばならないため、あまり優れたメカではありませんでした。
ロゴ

Stephen Fox
Benade NX
カナダのスティーヴン・フォックス氏によるベナード式クラリネットのA/Bbセットです。
ManheimのErnst Schmidtが設計した現在でも規範とされるリフォームドベーム式を元にアメリカの物理学者Arthur H.Benade(〜1987)が従来の慣習的な設計方法ではなく、全く新たな計測によって導き出された設計図を描きました。Benade氏はアマチュア演奏家で楽器の収集家でもありました。氏の没後、カナダの物理学者でありクラリネット製作家でもあるStephen Fox氏が現存しているBenade氏の楽器のデータを採取し、今までには無かった全く新しいクラリネットを誕生させました。
運指は全くのベーム式ですが、ボアは円筒形に近く、昔のドイツ管のような特徴も持っています。また、上管左手薬指Eb/Bbキィが上管サイドキィと連動しているためにトーンホールの数が従来のものよりも減るため、乱気流が起こりにくくしています。スロートのBbの抜けを良くする為のBbメカも付いています。そして最も目に付くのがベルで、タロガトーのように円錐形のベルには多数のトーンホールが空いており、低音の抜けが他の音域と同様に響くように配慮されています。
写真の楽器はココボロ製の管体に金めっきキィですが、音響学的には材質が音色に与える影響は少ないとされています。しかしココボロによる軽い重量ゆえ、暖かく明るい音色を持っているように感じます。
Stephen Foxはクラリネット以外にタロガトーや古楽器などの製作も手掛けています。
ロゴ

    C.G.Conn
    ELKHART INDIANA
    Albert-system
アメリカ合衆国インディアナ州エルクハートの老舗C.G.コーン製アルバート式クラリネットのA/Bbセットです。
詳しくはこちらで紹介した楽器と同タイプの楽器です。A/Bbセットで専用のダブルケースも付いているので、オーケストラで使用されるために作られたものでしょう。ブラスバンドが盛んだったこともあり、野外用のエボナイト製が主だった時代(1930年代?)でしたので、Bb管に比べるとA管は希少性があると言えます。とはいえ、野外用の付属品であるリラも付いていますが。

B ● F
シンプルシステムのA管クラリネットです。
メーカーは調べましたが不明のままです。上管にリングが無いことや、下管右手小指のキィにローラーが無いこと、パテントC#メカが装備されていない事から推測すると、1900年前後でしょうか?もしそうだとすれば比較的モダンなロゴのようにも感じますね。

France
HENRY GUNCKEL
PARIS
ビュッフェ・クランポン(米名:ヘンリー・グンケル)のアルバート式C管クラリネットです。
ロゴは"Henry Gunckel"と刻印されていますが、紛れも無くBuffet Cramponの製品であり、"Paris"の表記も見うけられます。
"Henry Gunckel"というブランドは、19世紀後半から20世紀初め頃まで営業していたアメリカ合衆国の販売店及び輸入業者の名前で、金管楽器のコルネットも扱っていたことが伝えられています。
通常製作されていたこの当時のアルバート式は、下のC.G.Conn同様に多くのメーカーがブリュッセルのEugene Albertによって製作された15mmの内径を模倣していましたが、Buffetのアルバート式は幾分ボアが小さく作られており、それがBuffetの特徴でもあったそうです。
ロゴ

EUGENE THIBOUVILLE
AIVRY-LA-BATAILLE
ユージン・ティボーヴイルのEb管アルバート式クラリネットです。
Thibouville家の歴史を辿ると、なんと17世紀後半にまでさかのぼるようです。
Eugeneは1855年にParisにて創業、またThibouville家の文献によれば1862年にはIvry-la-batailleにてNoblet家の誰かと共に"Noblet & Thibouville"という水力を動力とした工房を構えていたようです。
この写真の楽器のようなロゴを持った楽器は19世紀後半で姿を消しましたが、1890年と1895年のParis市住所氏名録にはNoblet氏と共に名前が残っています。
より細かな文献は現在でも残っているそうですが、いずれにせよフランスでもかなり古いメーカーのようです。写真のアルバート式もまだ上管にリングキィが装備されていないシンプルな作りとなっており、時代を感じさせてくれる貴重な逸品です。

C.G.Conn
ELKHART INDIANA
Albert-system
アメリカ合衆国インディアナ州エルクハートの老舗C.G.コーン製アルバート式クラリネットです。
C.G.Connは主に野外バンドの演奏用管楽器を作っていた歴史があります。この楽器もやはり野外用に作られています。管体は黒いので木製に見えますが、ベークライト(製作年代からプラスチックではない)らしき素材が使われています。C.G.Conn社がいつまでアルバート式を生産していたかの確たる資料は私の手元にありませんが、上管左手薬指で塞ぐトーンホールにリングが付いている箇所から1930年代以降であることがわかります。内径もオリジナルであるブリュッセルのアルバートとほぼ同じくラージボアでありながら、本体の重量は木製のものと比べて大変軽いために、現在のクラリネットとは一味違った音色を持っています。ほぼ同時期にParisのBuffet,Selmer、NewyorkのPenzel&Muellerなどもたくさんのアルバート式を作っていましたが、1930年代から1940年にかけてはちょうどベーム式への過渡期にあたり、この後間もなくアルバート式は廃れてしまいました。ですから、この楽器はかなり後期のアルバート式といった面において貴重な資料だと言えるでしょう。
ロゴ1
ロゴ2

Schwenk & Seggelke
Bamberg
シュヴェンク&ゼゲルケのリフォームドベーム式A/Bbセットです。
ぱっと見は普通のリフォームドベームですが、このシステムの特徴は上管左手中指と薬指で押さえるリングキィのポストが通常向かって左側であるのに対し、右側に付いているためにフォークEb/Bb(fの運指)のための下管リングキィとの連動はありません。しかしその代わりに左手人差指+薬指の運指でドイツ式と同じようにフォークBbがだせるようになっています。その他には一般的なリフォームドベームに見られるスロート音域Bbの抜けを改善するためのBbメカニズム、下管のB/F#レゾナンスホール、Fレゾナンスホールが装備されています。

Richard Keilwerth
Jazz-Klarinette
リヒャルト・カイルヴェルトのフルカヴァードキィクラリネットです。
とりあえずはドイツシステムですが、下管の小指以外はベームシステムとキィ配置が同じなので、シャリュモー音域の中音Fを除けばSaxophonに近い運指だということになります。上管及び下管の小指は全くドイツシステムの運指で演奏されなければなりません。管体はグラナディラですから野外用ではなく、"Jazz"という名前の通りSaxophon奏者が持ち替え用に使用する目的に作られました。
本来はリングキィである箇所は全て白蝶貝で美しく飾られたカヴァードキィになっています。

HOHNER
Pocket Clarinet
ドイツのホーナー社製のポケットクラリネットです。
Hohnerと言えばプロフェッショナル用のハーモニカやアコーディオンが大変有名ですが、こんな可愛らしい楽器も作っていたのですね。説明書に"6歳くらいの子供たちがクラリネットやサクソフォンを吹くにあたってトーンホールを塞ぐにはまだ指が届かないでしょうが、このポケットクラリネットなら大丈夫"という内容が載っており、"リードは薄めのものが発音しやすいでしょう”などの記述もあり、製作・販売対象は初心者に向けられていることが伺えます。しかし、愛らしい音色と持ち運ぶ際の手軽さは大変便利で、ちょっとした外出にも嵩張らずに済みます。写真の楽器はキィ無しですが、上ランクの2キィ(Thumb keyとIndex key)の楽器は2オクターヴの音域を奏することができます。
Hohner社はPocket Clarinetの他にPocket Fluteも製作・販売しています。因みに調性はin Cです。

BILTON
LONDON
リチャード・ビルトンのツゲ製9キィクラリネットです。
Richard Biltonは1826年創業のロンドンにあった工房でした。当時Londonは管楽器製作が盛んだったようで、調べただけでも相当な数の工房がありましたが、中でもBILTON製の古楽器は高い評価を得ています。
写真をご覧になられると判るように、あめ色のツゲ製管体に象牙製の補強リングというまさに工芸品のような美しさを持っています。キィは真鍮です。
所有者は大日本C管義勇會のBach氏です。入れ物の写真はありませんが、設計図等を入れるプラスチック製の円筒形の入れ物でした。。

竹製クラリネットです?

Normandy
Plateau System Clarinet
ノルマンディーのフルカヴァード・キィシステム(ベーム式、フランス製)です。
普通は指で直にトーンホールを塞ぎますが、この楽器はフルートのようなカヴァードキィで全てのトーンホールを塞ぎます。野外バンドなどで使用するユニフォームのグローブを着用したままの演奏に対応するために開発されたそうですが、クラリネットを始める初心者、または手の小さい方や指の短い方にも最適かと思われます。管体はプラスチック製ですので炎天下や冬の寒い野外でも割れる心配はありませんし手袋を履いたままでも演奏可能な優れものでもあります。現在は作られているかどうか判りませんが、フランスでは比較的多く作られたようで、野外ブラスバンドの間ではフルカヴァードキィのクラリネットが普及していたようです。下管の音抜けに関しては決して良いと言えませんが、便利さに免じて許してあげましょう。キィのメカニズムは大変上手に考えて作られています。スチューデントモデルなために結構安価で入手できるので、ベーム奏者の方は野外用に一本いかかですか?
キィの拡大写真

Albert-System in H
H管のアルバート式クラリネットです。
最初はBb管の設計ミスかハイピッチのBb管かと疑ったのですが、Bb管と管の長さを比較してもC管とBb管の間なためにチューナーで測ったところ、メーターがしっかりと”H”を指したのでH管であるという結論に達したわけです。この楽器はプラスチック製でとある骨董品屋にて売られていた詳細不明な楽器です。特徴としてはタンポが真っ赤なところから判断して、恐らくインドのChery製だと推測していますが詳しくは判りませんのであしからず。

V.Kohlerfa Synoue
Kraslice
Albert-System in H
チェコ製のH管アルバート式クラリネットです。
これも上のCheryと同じ管の長さです。オリジナル木製マウスピースが付いており、チューナーで計ってもドの音は実音の”H"を指しました。この楽器は1920年代頃のものらしく、小指のキィの作りはアルバート式というよりもエーラー式に近い形をしています。ベルと下管には"V.Kohlerfa Synoue Kraslice"とあり、あの有名なチェコのAmatiの工場がある町と同じ所で作られたことがわかります。クラスリッツェの町は旧東ドイツとチェコとの国境近くの山間に位置しており、ドイツ管とフランス管の両方が混在するために音色もどちらとも言えない丁度良い感じです。しかし調性までがA・Bb・Cのどれでも無いのは少々困ったものです。ベーム式やドイツ式も製作していたようで、ドイツ向きには"V.KOHLERTS & SOENE"というドイツ風綴りの刻印が入っているそうな。

McIntyre System
マッキンタイアシステムのクラリネットです。
マッキンタイアシステムとはスロート音域からクラリオン音域へ移行する際に(特にラからシ、シbからシまたはド等)に、ベーム式では左手人差し指の動きがスムーズに行なわれないといけません。クラリネットの演奏において最も難しいとされる運指の箇所なのですが、このシステムにおいては、上管に配置される3つのリングをソ#、ラ、シbのトーンホールと連結させてそれらの音を出してしまおうというシステムです。即ち、”開放+左手薬指リング”で”ソ#”、”開放+左手薬指リング+中指リング”で”ラ”、”開放+左手薬指リング+中指リング+人差指リング”で”シb”となるわけです。フランスのメーカーThibouville Freresで製作を手がけましたが楽器としてのInventionが1959年になっておりますのでその年度が製作年度と考えられます。これまでのクラリネットの運指を変えなければならないという致命的な欠点(?)があったためにいつの間にか残念ながら姿を消してしまいました。
メカニズムの拡大写真

THE RUDOLPH WURLITZER CO.
made in USA
Albert-System in C
ルドルフ・ヴーリッツァのC管クラリネット(アルバート式)です。
いわゆるアメリカのヴーリッツァ(ウーリッツァ?)で、ドイツからイギリスへ、そして大西洋を渡ったヴーリッツァ分家がアメリカにて楽器商を始めたという話を聞いたことがありますが、私には詳しく判りません。しかし史料では1856年に創立、1893年にはすでに楽器の販売を始めており、その時の主な取り扱い商品はクラリネットやサックスなどの管楽器、そしてヴァイオリン、ギター、バンジョー、ウクレレなどの弦楽器でした。1920年代から30年代頃にかけてギターやウクレレは現在でも有名なC.F.Martinなどが製作していました。その後R.Wurlitzerは自動ピアノや電子オルガンなどの電子楽器の先駆者として、ジュークボックスやLP・SPプレイヤー、またステレオやアンプ、スピーカーなどのオーディオ類の分野においても確固たる地位を築き上げるようになりましたが、このクラリネットはR.Wurlitzerにおける草創期の楽器といえるでしょう。昔懐かしい気分にさせてくれるクランポンやO.エーラーのような刻印が入っています。マウスピースは木製オリジナルが付いています。

MAHILLON & CO.
LONDON
マイヨンのシンプルシステムのクラリネットです。
恐らく1920年代から1930年代に作られたもので、管体はCocus Woodではないかということです。しかし、”LONDON"と表記されているマイヨンの管楽器は1900年から1920年頃にかけてということですから、ひょっとするともう少し古いものかもしれません。全体的に小さなトーンホール、小さなキィですので、どちらかといえばフランス系の面持ちで、イングリッシュボアではないような感じです。写真はオリジナルの木製マウスピース付きです。

 シンプル式クラリネット in Es
KULOW Magdeburg
旧東ドイツに位置するマグデブルクの”KULOW”製クラリネットです。クーロフという工房か?マイスターか?とりあえずマグデブルクで作られたクラリネットのようです。聞くところによると、大変古く、どうやら19世紀後期のものらしいです。キイシステムはシンプル式で、下管両小指キィが連結しておらず、上管左人差し指G#/Aキィも交差していない初期型です。この時は吹けるコンディションではなかったために音色等は判りませんが、上管リングが無いため、わたくし的にはかなりポイントの高い楽器だと思います。因みに1つ下に紹介しているBb管もこれと同タイプのクラリネットです。

シンプル式クラリネット in Bb
とある骨董品屋で見つけたシンプル式クラリネットです。
12キィ2リングという最もシンプルなキィシステムを持った形で、小指キィにはローラーも無く、これの前身にあたるミューラー式に限りなく近い姿をとどめていると言えるでしょう。左手人差し指のA,Gisキィも独立しています。メーカー及び製作年代は一切不明です。しかし、キィやキイポストは大変しっかりと作られており、キィネジというよりはキィ杭で支えられています。バレルはO.ハンマーシュミットと同じ62ミリで、マウスピースとのジョイント部の内径は幾分細く出来ているようです。オリジナルマウスピースは木製で、「蓄音機から聴こえてきそうな音色」との評価を受けております。古き良き職人技の息づいた工芸品とも言える逸品であると私は信じております。

アルバート式クラリネット
大阪で見つけた中期アルバートシステムのクラリネットです。上に登場したシンプルシステムと比較すると、リングやキィの数は多く、小指のローラーも装備されています。これもメーカーや製造年代は不明ですが、長らく日本人が所有していた模様で、恐らく国産品であろうと分析しています。ケースもオリジナルで、非常にコンパクトかつ軽量に作られており、なんとも言えない味わいを感じます。調整が完全に成されていなかったために、吹く事が出来なかったのは残念でした。戦後間もなくの頃までは日本でもアルバート式は使用されていました。その時のある日本人クラリネット奏者の忘れ形見として、あの哀愁を帯びた音色をまたいつか奏でる時が来るのを夢見ているのでしょうか?

左:ニッカンのアルバート式
右:謎のアルバート式
 またまた大変珍しい(かどうか判りませんが)現場を押さえてしまいました。なんとアルバート式クラリネットの2ショット。
左はニッカン製(Gm氏所蔵)で右は北海道にて(Ks氏により)発見された謎の代物。これらも私には説明できませんが、左の楽器に似たようなものをどこかで見たことありません?そう、「クランポン」のカタログには「ベーム式」と誤って載せられているあのクラリネットとほとんど同形なのです(マウスピースとバレルはくっついてませんけど)。だから、実はあのカタログの写真はアルバート式だったというわけです。皆さん、お便りしましょう!「間違ってるよ」ってね。

左から 謎のアルバート式
Herbert Wurlitzer 100cS
Buffet Crampon B-12c
(全てBb管)
左からアルバート式(詳細不明です)、ヘルベルト・ヴーリッツァ、ビュッフェ・クランポンです。
左のアルバート式はどこで作られた何製か判りませんが、吹き心地はとても良く(ヴーリッツァのマウスピースで吹いたからかな?)見かけもアメ色のキィに黒光りする管体でとても保存状態が良かったです。しかしバレルにニスが塗られていたのが少し残念でした。戦前生まれの方にはとても懐かしい楽器ではないでしょうか。真ん中のヴーリッツァは言わずと知れた名器でございます。さて、右に写っている透明管銅めっきのクランポンも今となってはなかなかのキワモノです。1990年のクランポンのカタログには、「クリアーモデルB-12c」と紹介されていてマーチングやブラスバンドのために作られたもののようです。因みにこのカタログではABS樹脂で作られている事になっていますが、透き通ったABS樹脂は存在しないらしく、まあ単なるプラスチック製だということで。余談ですが左のアルバート式のキィは真鍮製です。

5 Klappen Klarinette

謎です。
私には判りません。
東京の御茶ノ水にある「S楽器」に陳列されているものです。



エーラー式ベーム式特殊管メタル各種記念写真

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