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関西青年経営者会議は自動車補修部品をを専門とする阪神地域の経営、研鑽の切磋琢磨の会です。

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大阪都

菊地一雄HEADLINE

今何が起きているのか(2012/04)

 このところ橋本大阪市長の率いる「大阪維新の会」が、大変注目されています。
橋本市長が一般に受け入れられているのは、主張が明確で行動にスピード感があり、何よりも何のしがらみもなく大胆に決断することではないかと思うのです。

 そこで「体制維新――大阪都  橋本 徹  堺屋太一  文藝春秋刊」を読むと、彼の本当の主張、狙いは、
「政権交代でも政策論争でもなく現在の政治体制、統治機構を根本的に改革せねば日本の本当の復活、成長は無い」ということのようです。なぜなら、「現在の政治体制は明治以来の体制で、時代が大きく変化しているのに対応できなくなってしまっているから」とのことです。

“時代の変化”とは、
“世界の文明の転換”だと位置づけているようです。

 私は、この考え方に基本的に賛同します。50年続いた自民党政権が民主党に変わっても、日本全体の動き― 政治、経済等 ― のどれをとっても基本的には何も変わらない事を実感しています。これから日本を再生するためには、明治維新の時のように社会の仕組み政治体制、統治機構―を変えねばならないと思うのです。何故なのかについて、私なりの視点で考えてみたいと思います。

 ‘資本主義’は、言うまでもなく“資本の論理”で経済が動きます。
 “資本の論理”とは、「投下された資本は、必ず利益を上げて回収されねばならない」と言うことです。資本に利益をもたらすのは、労働力です。だから資本を投下する資本家は、できるだけ安い労働力を使おうと努力します。 

 例えば、熟練労働者より単純労働者の方が安く使えますから、生産工程をできるだけ単純労働にする様に作ります。よく知られているのは、フォード方式です。一般に言われる“大量生産方式”です。

 大量生産方式が有効に働くための前提として“大量消費の為の市場”の存在が不可欠です。
大量消費の為の市場を常に存在させるためには、2つの方法があります。

 
1つ目は、文字通り真っ白な市場を探す事です。

 
2つ目は、新商品を投入して新たな市場を作り出す事です。

 戦後の日本は、国内では何もかも戦争で亡くした真っ白な市場に鍋釜を初めとする軽工業を立ち上げ、軽工業から重工業、化学工業、自動車工業等ハイテク産業まで次々と新しい産業を立ち上げながら、更に各分野のグレードアップをしながら市場を絶え間なく作ってきました。

 その間、市場の拡大が生産の規模に追いつかなくなると、当然輸出にその市場を求めるようになります。戦後まもなくの日本の賃金は、戦勝国特に西欧諸国の数分の一でした。
 更に、国内価格よりもかなり低価格で輸出をしていましたから、商品によっては西欧の市場をかなりの勢いで席巻して行きました。

 こうして国内外から回収した資本を再投資することで資本の拡大を続けてきました。資本の拡大は、一方で労働力の価格の上昇ももたらします。詰まり
賃金の上昇です。賃金の上昇は、労働者の購買力の拡大 −市場の拡大− をもたらします。
 
 一方で、商品の価格競争力、特に貿易での競争力が無くなって行きます。賃金の上昇が市場の拡大を上回り、
価格競争力を衰退させると市場の拡大が止まります。市場の拡大が止まると、資本は再投資をしなくなり資本の拡大再生産が鈍化します。

 資本の拡大再生産が鈍化すると、金余りが生じます。なぜなら、投資した資本は利益を伴って回収されます。市場が拡大しているときには、利益によって拡大した資本を再投資しますが、市場が拡大しなければ再投資しても利益が見込めなくなり再投資をしなくなるからです。
  
 “金余り”によってだぶついた金は、生産以外の所へ利益を求めてさまよいます。つまり、
投機資金として不動産や株、商品市場へと流れるのです。 日本のバブル期の不動産、株式市場、商品市場の高騰や、アメリカのリーマンショックに見られる投機資金の動きの一要因だと考えます。

 ついでに申しあげますと、アメリカのサブプライムローンは金余りをきっかけにして過大な信用創造によって引き起こされた面が強いと思います。勿論、日本のバブル期にも株の二階建て、三階建て、不動産と株の何階建てと言った過剰な信用創造が有り、崩壊時の傷口を更に大きくした面はサブプライムと同じです。これは、極めてあたりまえな資本主義経済の発展の姿といえます。

 
近年は、不況対策として各国が紙幣をどんどん増やしていますから、更に投機資金がふくれあがり健全な資本主義経済体制を蝕んでいると言えます。日本は、明治以来途中世界大戦を挟んで20年前のバブル期までは、資本主義経済のシステムが比較的健全に機能していたと考えられます。そしてバブル経済は、資本主義経済システムが健全性を失い機能不全に陥った状態になって起きたといても良いでしょう。詰まり、現在の資本主義経済システムは、成熟期を過ぎて制度疲労に陥っている状態と言えます。
 
 明治以来こうした経済のメカニズムの上に乗って強大な権力を形成してきたのが、現在の官僚機構であり政治機構だといえます。 経済構造の大きな流れは、アダムスミスが「国富論」で分析しているように“神の手”によって作られ、動かされていると考えます。官僚機構や政治機構が、基本的な経済システムを作ったり動かしたりすることは出来ず、目先的な発展のスピードや落ち込みをコントロールするに過ぎません。

 しかし、特に日本の官僚や政治家は、あたかも官僚機構や政治が日本経済を形成しコントロールしたから今日の発展があると考えている節があります。この誤った自信が、昔からの“御上”意識と結びついて国民無視へとなってきているのではないかと思われます。

 更に悪いことには、強大な組織力と権限を武器に政治家や経済界が手を繋いで排他的組織を形成しています。 属に言う‘政財官のトライアングル’です。このトライアングルは強大な既得権益を持ち、もはや何があっても既得権益を手放すことが出来ないようになっているのでしょう。

 最近の経済状況のようになかなかパイが広がらない状況になると、この
既得権益を政官財だけではなく労働組合や各種団体と言った諸々の組織までが手に入れ、手放さないための画策をしているようです。“既得権益”を守るためには、絶対と言って良いほど前進的改革を拒否するようになります。なぜなら“既得権益”は、過去の流れの中で築き獲得してきたものだからです。

 もし前進的改革をするとしても、過去からの基本的流れや組織を守りながら緩やかな 
‘改善’をする程度しか出来ないでしょう。
 
 先述しましたように、資本主義経済のシステムが機能不全に陥り加えてコンピューターによって第二の産業革命とも言うべき産業構造の大変革が進行しています。 そんな時代にあって自らの既得権益を守ることに汲々としている、しかも権力まで持っている組織を温存することはこれからの日本にとって、国民にとって決して良いことではありません。なぜなら時代の流れに取り残され、経済的発展をするチャンスを無くしてします可能性があるからです。既にその傾向は、随所に見られます。
 
この状況を打破し変革するためには、かなり思い切った方法、言い換えれば国の形を変える必要があります。
 
橋本大阪市長の手法や考え方の全てに諸手をあげて賛同する訳ではありませんが、現在までの彼の考え、行動を見る限り今の日本の閉塞的状況を打破できるのではないかと期待します。

 この文書をお読みになった皆様の忌憚のないご意見をお待ちしています。


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