真央資料室

「夫が多すぎて」感想

 兵庫県芸術文化センター(中ホール)
2014.12.11(木)12:00開演

大阪上本町:大阪新歌舞伎座
2014.12.14(日)12:00開演


2014.12.21 9:20更新


            



真央さんの「夫が多すぎて」を兵庫と大阪と2回観てきました。

全国的に寒さが厳しさを増し始めた12月11日(木)には、前々からの予定であった兵庫芸術文化センターへ。そしてその3日後の12月14日(日)には、全く予定ではなかったのですが、大阪の新歌舞伎座へと。

歌舞伎座の方は急遽行くと決めた為、当然チケットを持っていなかったのですが、1枚くらいなら当日券で何とかなるだろうと、タカをくくっていました。しかし甘かった。着いた時、すでにチケット窓口には、まさかの【本日公演:全席完売】の赤い文字。真央さんファンとしては嬉しい事とはいえ「えっえ~~?」。そして【只今立見券のみ発売中】の文字も。「うそ~~~立見券しか無いの~」

立見?・・・立見なんて・・・・・・一体いつ以来だ?

むかし、むかしの大昔、真央さんの宝塚時代に経験した以来かも。そう、あの頃の私は若かった。3時間でも平気だった。しかし・・・今の私は、あのころに比べれば足腰が数段弱っている(・・・ほっといて)そんな私が立見?「嫌だ嫌だ」バタバタバタ(←弱った足ね)

いやいや、どんな人気演目でも、30分前くらいになれば必ずや1枚や2枚のキャンセルは出る筈。

そんな希望を持って、係りの人に、キャンセルがあるとすれば何分くらい前に発売しますか?と聞いてみた。係りの方、涼しい顔を少しもくずさず、事務的に仰いました。「いえっ!この劇場は、基本キャンセルは受け付けておりませんので、キャンセル券の発売はありません」・・・え~そんなぁ~ホワン♪ホワン♪ホワンホワーン♪(←弱った腰くだけ・・・)。

万が一券が取れなかったら、お茶してウインドーショッピングでもして、の~んびりして帰ればいいや・・・なんて思っていたのに、いざ観られないと思ったら、券を持っている人のウキウキ感と、券のない自分とのギャップ感が、やけに身に染みる。ちょっと寂しく惨めな気分。
例えるなら飴を舐めてる子が羨ましくて、ひとさし指を舐めている気持ちに似ているかな?(なんのこっちゃ)。こうなったら絶対あの人たちと同じ空間に入ってやる!と闘志がわき(?)意を決して、立見券を買い求めました。何するのもめんどくさいやっちゃ(笑)。

立見と言っても宝塚の時のように1階の後方ではなく、3階の後方。最近はファンクラブ席のいい席で観るのが当たり前になっているので、まぁ舞台までが遠い遠い。今日はここで立ちっぱなしで、2時間半耐えなければならないのだなぁと、気を引き締めました。取りあえずは真央さんのいる空間に入ることができたし、(西宮では前の席だったから)今日は全体を楽しもうと心に決め開演を待ちました。
当日券を求めて来た人もチラホラ見かけましたが、さすがに立見券を買い求めた人はあまりいなかったようで、私が見る限り立見の人は私を含め3人(一人は男性)だけでした。

そんな中、

開演10分くらい前に、劇場の偉いさん風の男性が現れ、なんと、直前にキャンセル席がでたとかで、同じ3階の空いた席に私達を座らせてくださいました。左の端の端で下手(しもて)に立たれると全然観えない席でしたが、座って観劇できることが本当に嬉しかった。そして劇場側の優しい心遣いを感じて、とっても幸せな気持ちになりました。勇気を出して入ったからこそ訪れた幸せでした。

ごめんなさ~い、前置きが長くなりました。感想。感想。
W・サマセット・モーム作、板垣恭一演出の「夫が多すぎて」の感想・・・それがですね~観劇後何日経っても何にも出てこないのです(笑)。ただ楽しかったなぁ~しか・・・。感想を書くのは毎回苦労しますが、今回の公演は本当に何も出てこない(笑)。どうしよう。でも、そうも言っていられないので、とりあえず書き始めます。

【プログラムより】
大地真央・・・ヴィクトリア【かわいい女性】
中村梅雀・・・ウイリアム・カーデュー少佐【大戦の勇士】
石田純一・・・フレデリック・ラウンズ少佐【もう一人の大戦の勇士】
徳井 優・・・レスター・ペイトン【戦争成金】
水野久美・・・シャトル・ワース夫人【ヴィクトリアの母】
未沙のえる・・・ミス・モンモランシー【未婚の淑女】
樋渡真司・・・ミスター・ラーハム【弁護士】
岡野真那美・・・ミス・デニス【マニュキュア師】
朝廣亮二・・・テイラー【執事】


まずはヴィクトリアの真央さん。すべての台詞が動きが(しぐさが)、お茶目度100%炸裂でチャーミングなヴィクトリアさんでした。ビジュアル的にも申し分なく、本当に可愛いかったです。わがまま言っても全然憎めなかったし。ヴィクトリアって「えっ?そう取る?そう来る?」と突っ込みたくなるようなユニークな発想の持ち主だと思うのですが、本人には全くその自覚はなく、何の迷いもなくその考えをグイグイ押してくるので、例えそれが間違ったことでも、、正しいと錯覚してしまうほど不思議パワーが炸裂でした。ウイリアムにプレゼントしたものを、ウイリアムが死んだからと言って(実際は死んでなかった)フレデリックにそのまま回すとか、フレデリックにしたら気ぃ悪いですよね~(笑)、しかし、本人には悪気は全くないので、それを隠すでもなく、倹約の一貫だと言う。でもいざ自分自身への投資となると【衣装やネイル代】は倹約の対象外らしい(笑)。石炭が不足していても、自分の寝室だけは暖炉の火は絶やさない。でも・・・フレデリックやウイリアムが石炭を使うことは無駄遣いらしくて、使おうとすると怒る(笑)・・・「僕だって寒い」というフレデリックにあなたは仕事場で温まってるからいいじゃない・・・みたいなことをサラッと言うし・・「オイオイそういう問題じゃないでしょ」と突っ込みたくなる解釈がいっぱい(笑)。


私の身近にこんな女性がいたら絶対嫌いになる(笑)。でも、真央さんヴィクトリアは笑って許せてしまう魅力がありました。容姿のせいかなぁ~今も昔も美人は得ってことかな?あっ!でも内面が可愛くないと、やっぱ可愛くは感じないから、容姿だけの問題じゃないですね、きっと。良かった~私にも希望があって(笑)。とにか~く~、真央さんはプログラムの役名の横に書かれている【かわいい女性】そのものだったという事です。そしてヴィクトリアに振りまわされている感じがする二人の夫たちも(ウイリアム、フレデリック)とっても愛すべきキャラで、それを、石田さんと、梅雀さんが、とても自然に演じていらしていて、それぞれの役にぴったりでした。フレデリックの物腰がソフトで、でも芯は一本通っていて、懐が大きくて、とことん優しくてそのうえハンサム。石田さんそのものじゃないですか。梅雀さんにしても石田さんにしても、腑に落ちなないと思いつつも、いざ、ヴィクトリアの前にたつと「うんわかった」と言ってしまう、それこそ男性特有の可愛らしさが、そこここで醸し出されていらっしゃいました。。男と女、立場の違う三人のやり取り、そして役の上での三人三用の関係が、実際の真央さん、石田さん、梅雀さんのキャラとうまく相まっていたように思います。


登場人物にはそれぞれの優しさがあり、(一応ヴィクトリアも二人の夫の事は比べられないくらい愛していて、自分はとっても優しいと言っているので入れときます・・・笑)お話はホンワカとした雰囲気で進行していきますが、実際は、1918年、第一次大戦後の暗い時代の話なのですよね。そんな時代の暗さをを微塵も感じさせない創りで、それがサマセット・モームが描きたかった世界だったのですね。悲惨な出来事なのに喜劇として書かれたと・・・何かで読んだような、聞いたような。


それにしても、小悪魔的なヴィクトリアをあまりにも自然に伸び伸びと演じる真央さん、本当に地もこんなじゃないかと思えてきます。ただ実際、真央さんにもヴィクトリア的なところは、多少おありだと思うのですが(笑)・・・でも、さすがにここまでじゃないとは思いますが(笑)。

【私が今回真央さんで一番ツボったシーン】

離婚調停裁判の為に弁護士に言われるがまま、ウイリアムに首を絞められたふりのシュミレーションを何度もやらされたヴィクトリア、他の人の台詞のやり取りの間、ひそかに首のコリを盛んにほぐしていて、そのしぐさが、たまらなく可笑しかった。新歌舞伎座で近くに座っていらした、二人のご婦人は、どうやら、台詞を言っている人より、真央さんヴィクトリアに目が行ってしまったまったらしく、涙を流さんばかりに笑いころげて、いらっしゃいました。ここまでやってしまう真央さん、あの美貌であれができちゃう。ある意味すごいです。国宝級です(笑)。


最後に、その他の出演者の皆さんの事も一言づつ書かせてくださいませ。

三番目の夫に選ばれた戦争成金の徳井さんは、派手な服装でちょこまか動いて、どちらかというと動きで笑わせてくださいました。国会議員に立候補するつもりのくだりでは、ヴィクトリア以外誰もいないのに、わざわざヴィクトリアを舞台前方に呼び寄せて、背中をすり合わせながら二人で内緒話するの(笑)。も一つ意味分かんないそのシーンが、何故かとても可笑しい。その時見せる真央さんの表情が、いたずらっ子のような表情で、私、昔から真央さんの、あの表情が大好きなので嬉しかった(分かる人にしかわからない超マニアックな好み)。

ヴィクトリアの母の水野久美さんは、上品で美しくて、少し低音な声で、抑えた演技もさすがでした。美しいヴィクトリアの母だと納得でした。でもお母さんは、まともなのね(笑)。

未婚の淑女の未沙のえるさん。ミス・モンモンシーさん、役柄からすると、もっともっと作りこんでもっと派手に弾けてもよかったんじゃないかと思いました(例えば塩沢ときさんくらい)。私だけかもしれませんが、外部に出てからの未沙のえるさんに、宝塚時代のような輝きが感じられなくて・・・何だかとっても悔しいです。まわりに遠慮せず、他の出演者を食ってしまうような、未沙のえるさんが観られる日が必ず来ると信じて楽しみにしています。

弁護士役の樋渡真司さんは、役者巧者。長い台詞もスラスラと立て板の水ごとくしゃべり続け、そのうえ、きちんと一語一句がこちらに響いて来る。笑のツボもバッチリ。小劇場などで実績のある役者さんは、本当に上手いなぁ~といつも感心します。唸りました(笑)。
笑いのツボが似ている、真央さんと、漫才コンビ組んでほしいくらい(笑)。

マニュキュア師の岡野真那美さんは、タッパがあり、見栄えのする素敵な女優さん、あまり見せ場がなかったのが勿体なかったです。

執事役の朝廣亮二さんは、わがままヴィクトリアにどこまでも尽くす、忠誠心がある執事役、ヴィクトリアの魅力に一番気づいている人なのかも知れないと思わせる、最後の台詞が印象的でした。容姿演技共、ぴったりでした。

出演者わずか9人でしたが、、皆さんの熱演で人数の少なさを感じることなくとても楽しませて頂きました。真央さん始め出演者の皆さん、シアター・クリエから始まり、全国公演の長丁場の公演、本当に本当に、お疲れ様でした。