造艦テクノロジーの戦い−科学技術の頂点に立った連合艦隊軍艦物語
吉田俊雄  光人社/光人社NF文庫   文庫 380p うち写真ページ 8p

  タイトルは”造艦テクノロジー”ですが、良くも悪くも副題の”連合艦隊軍艦物語”
 がメインです。したがって、図表資料やツッコんだ技術内容は殆ど出てきません。
  各艦の設計上の特徴が知りたい方は「(空母/戦艦/巡洋艦)入門」(佐藤和正 同)
 方位盤射撃の仕組みや艦内電源、その他・探照燈やアンテナ等、諸設備の構造や原理等
 について知りたい方は「軍艦メカ開発物語」とその姉妹編「造艦テクノロジー開発物語」
 (深田正雄・同)をお勧めします。


  主な内容としましては、
   幻の砲戦  超戦艦「大和」建造の思想
   栄光と悲劇 高速戦艦「比叡」悲憤の最後
   奮迅の戦い 高速戦艦「霧島」の航跡
   不屈の闘志 航空戦艦「伊勢」の奮戦
   幸運の神  航空母艦「瑞鶴」の強運
   誇りと責任 航空母艦「飛龍」の出撃
   好機到来  重巡洋艦「利根」の秘密
   海軍の伝統 水雷艇「友鶴」の教訓
   出撃の時  駆逐艦「神風」の勇戦敢闘

    etc・・・

  これら、日本海軍艦艇の中でいわゆる名艦と呼ばれているものや、技術的革新が
 あった艦艇について、その生い立ちを(時折著者自身の乗艦体験も交えてながら)
 「血沸き!肉踊る!!」名調子で進めていきます。よってこのコーナーよりもさらに
 ベタ誉めです(笑) まぁ欠点は欠点として出てきますが。

  おなじみの大和を皮きりに、唯一戦艦同士の激戦を展開した高速戦艦 霧島、
 航空巡洋艦として機動部隊と共に縦横無尽の働きをした利根、”友鶴事件”と
 その後に続く第四艦隊事件へのキッカケとなった水雷艇友鶴・・・などなど、
 何れも日本海軍の艦船設計において重要な役割を果たした有名艦、また隠れた
 名艦の設計思想や特徴(この辺に造艦テクノロジーが絡んでくる。例えば神風型
 のウェルデッキや瑞鶴の各種不沈・不燃対策)、建艦裏話から平時から開戦まで、
 そして戦闘、その生涯を閉じるまで、をあまり難しい専門用語は使わず、講談風
 の名調子で書いています。また、オマケとして日露戦争での栄光艦、戦艦三笠、
 及び、同時期に活躍しながら、その後も支那方面艦隊旗艦や練習艦として活躍
 した装甲巡洋艦について、駆け足ながら述べられてます。
  エピローグは「四人の連合艦隊司令長官の指揮統率」と題して、各司令長官の
 作戦指導とその結果について述べられてます。

  各艦とも、大改装で受けた内容や新機軸などの説明は随所にでてきますが、
 図表にはまとめられていないので、資料としてはあまり使えません。
 むしろ、この技術が如何に実戦に関わっていったか?!」がメインです。個艦への
 思い入れが強い方
にはお進めでしょう。また各艦の設計思想=日本海軍の艦隊決戦
 思想(いわゆる漸減作戦)について」と自然と(というか必然的に)話の方向が行く
 ので、そのあたりの入門書として適当かと。
 まぁいちばんお奨めなのは、お堅い話から離れて「いけいけ我らのくろがねの城!!」
 を楽しみたい人向けですね。
  (あとは書きかけ…ぉぃ)


 戻る