不意に視界がいっぱいになる。


   唇と唇が触れあった――――――――


   やわらかい感触・・・さっき飲んだジュースとおなじ、ほんのり甘酸っぱい味―――



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  唇を離した後もしばし無言、互いに並んだまま俯いている。

  やがて、慎子のほうからゆっくりと口を開いた。

 慎子「ね……黒木くん、あたしのこと・・・好き?・・・」

  俯いたまま、横目でゆっくりと委員長の顔をのぞき込む慎子。
 自然と上目づかいになり、しかもほんのりと頬を朱に染めている。
 その姿に黒木はさっきのキスの時よりもドキドキと鼓動が速くなるのを…
 いやむしろ”どきり”となってしまった。


  胸の高鳴りと、思ってもみなかった質問とでしどろもどろになる委員長。
 そりゃそうだろう。キスしたばかりの相手に好きかどうかと訊ねられるという事は
 自分のした行為がはたしてそれでよかったのか自信がなくなってくるものである。


 黒木「そっそんなの、きまってるよ、もちろん・・・ど、どうしたの?急に…」

 慎子「ん…なんとなく。だってまだ…黒木くんに『好き』って言ってもらった事、
    なかったから・・・」

 黒木は"はっ"と思い出す。そう、委員長は慎子に面と向かって告白した訳ではない。
 元はといえば慎子の親友であるアキコが引き起こしたラブレター騒動に巻き込まれ
 (黒木の方は前々から意識していたが)一騒動も二騒動もあった後、気が付いたら
 いつのまにか両想いになって、いつのまにかひっついていた とゆう感が強い。




  しかし
 

  ほんとうに「なんとなく」なだけだろうか・・・

  今まで言ってなかったからなだけだろうか・・・






    いや違う―――――、



   黒木はなんとなくだが慎子の気持ちがわかっていた。





   彼女は不安なのだ。

   もちろん黒木自身そうである。だがそれ以上に、彼女は不安なのだ。
   もう2度と会えないかもしれない 本土と北海道という単純な距離の問題などではない、
  ふたりの”こころの距離”が離れてしまうかもしれない。
   それは青函連絡船で渡るといったことは決して出来ない、一度できてしまったら容易に
  埋めることのできない ”こころの溝”。 それが彼女は怖いのだ。



    お互い、『好き』ということはわかっている。

    でも、"ことば"として確かめておきたい。

    それは、単なる気休めかもしれない。

    だけど、それで少しでも安心できるのなら・・・・・

    それで、少しでも不安が取り除かれるのなら・・・・・






  しかし、いざ言おうとしてみてもこういった台詞はやはり気恥ずかしいものである。

 案の定………

 黒木「・・・・・・・す・・・す・・き・・・・だ・・・よ・・・・

  と、まるで蚊の鳴く声のような委員長に、、、

 慎子「ちゃんといってっ」

  と、さっきの”不意打ち”の仕返しとばかりに悪戯っぽくほほ笑む慎子。



 黒木「っと...ぼ、僕は...む…村下さんのことが・・・、す…好きだ。
    ぇ……っと…、かわいくって……ちょっとおっちょこちょいで……でも…
    一緒にいると安心できて・・・僕は…そんな村下さんのことが、大好きだ」

 慎子「・・・あたしも・・・、やさしくて・・・真面目だけどちょっと頼りなくて、
    でもいつもすっごく一生懸命な…そんな黒木くんが・・・大好き」


  ドラマや映画なんかに出てくる気のきいた台詞なんていらない。

  ただお互いに確かめあえるだけで 好きの一言だけで いい―――――。



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  またしばしの沈黙。ふたりとも平静を装ってはいるものの、傍から見れば今にも顔から
  湯気が出てきて卒倒しそうなくらい真っ赤だったであろう。また不意に慎子から訪ねる。



 慎子「黒木くん…。お嫁さんに…してくれる?・・・・・・」


 黒木「うん・・・約束するよ・・・・・」



  またしても唐突な質問。

 しかし今度は動ずることなく、やさしく答えるのだった。


  普段の委員長ならばおそらく返事もままならぬまま固まってしまったことであろう。

  慎子の方も別に他意など無く、単に勢いで言ってしまっただけかもしれない。


  ただそう言ってみたかった、そう答えてみたかった。 それだけだろうか??


  しかし それはそれだけのようで それだけではない・・・・・







   ”記憶”という名の文字盤に刻まれる きえることのない 永遠の盟約―――――
















  慎子「黒木くん…」


  黒木「村下さん…」


 安心したかのように、慎子はそっと…黒木の肩に…からだをあずけるのだった・・・



































 アキコ「こらーーー!!さがしたぞー!!!!」

 慎子「っわ!?!!あ、アキコ!??(と部長さん…)」
 アキコ「もー、随分探したんだからぁ。待ち合わせ時間になって委員長だけきて―――」

  どうやら一緒に慎子を探しにきていたらしい。部長さんはいつものように無表情だが
 アキコはというとどうもにまにまとしてるように見える。いや、あきらかにしている。


  アキコは慎子の耳元に顔をよせて

 アキコ「委員長さんの心配のしようったらそりゃぁおもしろかったんだから。もぅ
     『何かあったんじゃないか』とか『もしかして事故にでも』って、そりゃあもう
     そのうち"誘拐さてたんじゃないかー"って警察にでも飛び込みそうな勢いで。
     おアツいことよねぇ〜〜」

 黒木「ぅ…///ア、アキ子さん、その話はもぅ・・・///」

 アキコ「ん??そうよね、何はともあれ見つかったわけだし!!ちょお〜っとお邪魔虫だった
     みたいだけどね〜むふふふ」

 慎子「ア、アキコ...き、聞いてたの・・・**> <**」

 アキコ「さぁーどうでしょうかねぇ〜??」

 部長「あのー―そろそろー――」

 抜群のタイミング(?)で口を挟む岩本部長、さすがである。

 黒木「そ、そうだね!!もぅ7時わまってるし(汗)」

 アキコ「よぉーし、せっかくだからちゃんぽんたべてこー。もぅあちこち探し回ったから
     お腹ペコペコ・・・・・・………」―――――





















  楽しかった…2度目の修楽旅行…





  お別れ旅行じゃない。黒木くんとわかりあえた始まりの旅行―――












  またいつか、








  お金がたまったら










  今度は………













 黒木くんに会いに、北海道へ行くんだ♪♪





 〜*おわり*〜













 [後書き]

  え〜委員長と村下さんのらぶらぶ物でした〜。
 約束の丘とともに自分の1番好きな作品であるとともに私がやぶうちっくワールドに
 引き返せない所まで引き込まれたのが2泊3日とこの作品です。
 おそらくやぶうち先生の作品で最もらぶらぶしていたのがこの作品ではないでしょうか.
 『水色時代』や『純情powerのトップ!』では一部神戸ネタや阪急ネタにひかれてた部分
 もありましたが、最初に読んだとき初めて純粋に作品として強く印象に残りました。
 (水色6巻で少し出てきてたので前々から読んでみたかったというのもありますが…)
 いまではもう傑作集は絶版のようですので元作品を知らない方にはなんのことだか
 わからない内容となってしまいましたが、もしご存じないのでしたら古本屋さん等で
 がんばってください。
  P.188上のコマでの1コマを、作中で慎子が不安に思っていた事を基に自分なりに
 考えてみました。P.157で慎子が不安に思っていたことの解決がちょっと作中だけでは
 不十分かな?と以前から考えていたのでその辺の補完をやってみました。
 ふたりの未来に幸多からん事を祈ります・・・









  なんてかっくいい事言って、実はと言うとほんとは布団に入ってテープ聴いてたら、
 いきなし電波受信して慌てて原稿用紙に30分で即効書きしただけだったりします(爆)
 執筆BGMがアレなのはその為です(爆笑)[あーぁ、最後に全部台無し]

  えー、修正・加筆にに丸一日かかりました(苦笑)
 一部ちょっと古い表現とかがありますが、まぁ元の作品も十余年前のものだということ
 でそのへんはご勘弁を(笑)あと誤字脱字も見付け次第修正していきます。
  暫定盤は昨晩ジョルジさんとおうま♂さんに読んでもらったんですが、初めは用紙
 2枚分だったのが修正してるうちにどんどん尾ひれ背ひれがついてきてしまい(笑)少々
 支離滅裂になってしまったかもしれません(^^;←素直に認めろヨ

  わかる人が見れば「あーコイツ、○○に影響されとるな」と判ってしまう場面が
 あるかもしれませんが(苦笑)できるだけ切り離して文章考えたつもりです←認めろヨ
 やっぱりどうしても影響受けたモンというのはボロが出てしまうもんですかねぇ。
 それでは、またお会いしましょう、サヨナラ・サヨナラ、サヨナラ―――――。

                           3月2日:GF司令長官

 打ち込み:VzエディターVer1.60
 使用FEP :NECAI AIかな漢字変換システム
 原稿執筆BGM:『日本の軍歌(2)―露営の歌―』
 打ち込みBGM:上記の他『決定盤 日本のマーチ』


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