「!」
10代目の悲鳴が上がり、そして死ぬ気弾が打ち込まれた。
確かあれで脳天を撃たれた者は一度死んでから死ぬ気になって生き返るんだったな。
これでさっきよりは少しくらいマシになるだろう。
「死ぬ気で消火活動!!!」
しかし投げたダイナマイトの導火線はその間にも短くなり続け、ほとんどのダイナマイトが爆発寸前だ。
ここで死ぬ気弾を使ったところで何ができる?
少しあがいて爆破されるだけだろう。
そう思って10代目の様子を見ていると、思いがけない行動に出た。
「消す!」
「!」
素手で火のついた導火線を握り、火を消したのだ。
それはさっきまでのひ弱な10代目からは想像のできない行動だった。
「消す消す消す消す消す消す消す消す!!」
「なっ!」
ひとつの火を消すだけでは留まらず、オレが投げつけたダイナマイトを1本残らず消していった。
さすがにこれは予想外だ。
あのやわな奴が死ぬ気弾を使ったところで大したことはないと高をくくっていたのだから。
だけど目の前に広がる爆発しそこなったダイナマイトの残骸を見て、考えを改めた。
「2倍ボム」
ある程度手強い相手じゃない限り、この量は使わない。
それをこんなに早いうちから使わせるとは、やわなように見せておいて、実力は相当のものだ。
「消す消す消す消す消す消す消す消す消す!!!」
ジュッと火が消える音。肉が、焼ける音。
2倍に増えたダイナマイトをひとつ残らず消していく。
こんな奴に負けるわけがない。負けられない。
気ばかりが焦ってどんどんとダイナマイトを増やしてしまう。
「3倍ボム」
本当は、まだこの技は完成していなかった。
だけど2倍ボムでも火を全部消されてしまったんだから、もうこれしかない。
ありったけのダイナマイトを取り出して、持てるだけのダイナマイトをかかえて、その全てに火をつけた。
あとはそれを、10代目に向かって投げつける、だけ・・・
「!」
ポロ、と手からダイナマイトが滑り落ちる。
早く手の中のダイナマイトを遠くへ投げて、落ちたダイナマイトを拾わないと。
ポロポロポロポロ、動揺したオレの手からは抱えたダイナマイトが次々に転がり落ちる。
「しまっ!」
この量が一気に爆発したら、少し離れたくらいじゃ逃れられない。
ジ・エンド・オブ・俺・・・
爆風にさらされ慣れていたって、火傷に慣れていたって関係ない。
殺すつもりで仕込んだ量だ。
自分の最期を悟って動きを止める。
「消す!!!」
「!」
ジュウウウと火が消える音。肉が、焼ける音。
それが足元から聞こえてくる。
爆発間際のダイナマイトを、間一髪で消していく。
「消す!消す!消す!消す!消す!消す!消す!」
もうオレでさえ覚えていない、火をつけた順番に。
焼け焦げたにおいが鼻をくすぐる。
一本だって消し残すことなく、10代目がオレのダイナマイトを消してしまう。
オレの闘争心だとか、怒りだとか、そういったものを鎮火するように。
裏切られたとか、期待はずれだとか、興ざめだとか、そういったものを埋めてしまうように。
危険を冒してオレを助けたところで10代目には何の得にもならないだろうに。
オレがあきらめてしまったことを最後まであきらめずに、結果、全てのダイナマイトを消してオレを助けてしまった。
敵であったオレをなりふり構わず助けてくれた。
この人はなんて懐の広い人なんだ。
それが見抜けなかったオレのなんて小さなこと。
「はあ〜なんとか助かった〜〜〜」
「御見逸れしました!!!あなたこそボスにふさわしい!!!」
ダイナマイトを消し終わって一息つく10代目に向かって、勢い良く膝をついて地面に頭をつける。
「!?」
「10代目!!あなたについていきます!!なんなりと申し付けてください!!」
「はぁ!??」
「負けた奴が勝った奴の下につくのがファミリーの掟だ」
「え゛え゛!!?」
急なオレの言葉に10代目は戸惑っているようだが、そんなの構っていられない。
これは10代目をかけた戦いだったはずだ。
誰がどう見ても、これはオレの負け。
オレが10代目の下につくのは決まったことだし、そんな決まりが無くてもオレは10代目についていくつもりだ。
オレの目的はオレの信頼できるボスを見つけること。
オレが10代目を倒してボスになりたかった訳じゃない。
「オレは最初から10代目ボスになろうだなんて大それたこと考えていません
ただ10代目がオレと同い年の日本人だと知ってどーしても実力を試してみたかったんです・・・・・」
「・・・・・・」
「でもあなたはオレの想像を超えていた!俺のために身を挺してくれたあなたにオレの命預けます!」
10代目を試すなんて、この人を試すなんて、なんて愚かな事を考えていたんだろう。
信頼できないなんて、そんなことあるはずがない。
オレと10代目が命をかけて見つけ出したものは、疑いようが無い。
10代目は信頼に値する人だ。
「そんなっ困るって命とか・・・ふ・・・普通にクラスメイトでいいんじゃないかな?」
「そーはいきません!」
クラスメイトなんてそんな曖昧な関係はいらない。
自分の命をかけてまで、向かっていったオレの命を助けてくれた。
一度は無くしたと思ったオレの命だ。
それを拾ってくれた10代目のために使わなくてどうする。
10代目が何と言おうとも、10代目の1番の部下になって傍で10代目をお護りするんだ。
「獄寺が部下になったのはお前の力だぞ。よくやったなツナ」
「な、何言ってんだよ!」
リボーンさんは認めてくれてる。
10代目はまだ認めてくれてはいないけど、
これからオレのいいところをいっぱい見てもらって、1番に信頼できる部下になればいい。
オレの勘違いで10代目には嫌な思いばかりをさせてしまったから、
これからは名誉挽回のためにも精一杯尽くそう。
「ありゃりゃサボっちゃってるよこいつら」
そこへとてもじゃないが頭の良さそうに聞こえない声が響く。
「こりゃおしおきが必要だな」
「サボっていいのは3年からだぜ」
「何本前歯折って欲し〜い?」
こいつらは確かさっき10代目を追いかけていた奴らだ。
「オレに任せてください」
10代目の信頼を得るために、オレのよさを分かってもらおう。
オレがあなたの手足になることを信じてもらうために。
「消してやら―――」
まずは目の前に現れた敵を、吹き飛ばすことから。
End
................
カウンタ14000番リクエストのおまけです。
標準語バージョン。(笑)
書いてて思ったのが、獄寺の部屋、火気厳禁だろうなぁ、と。
ダイナマイトにタバコとか。スプリンクラーがあるから大丈夫なのか?ちょっと不安。
ちょっとダイナマイト仕入れすぎた。
この話の関西弁ページはこちら。(笑)
(2004.12.12)
前
文章目次
戻る