「ねぇ、10代目・・・あなたは誰が好きなんですか?オレはあなたのなんですか・・・」
まさか、そんなことを聞かれるとは思わなかった。
その一方で、やっぱり、と思う自分もいた。
驚いて、すっと頭が冷えていく。
そう言った獄寺君本人も自分の言葉に驚いた様子で、
その表情からこんなことを聞く気はなかったんだろうって分かる。
だけど逃がしてやる気にはならなかった。
口から出たってことは、聞く気はなくても心のどこかで考えていたことだろうから。
その証拠に今の言葉を取り消そうとする言葉は出てこない。
「獄寺君は」
握りしめられたままのこぶしに目をやり、そこから視線を上げて、獄寺君の目を見る。
「自分のこと、オレの、なんだと思ってる?」
獄寺君の質問に答えるよりも先に、獄寺君の答えを聞きたかった。
答えじゃなくても、反応を知りたい。
君はどう思ってオレと一緒にいるの?
きれいな緑色の瞳が見開かれてオレを映す。
部下?右腕?守護者?友達?恋人?それともオレのことはおもちゃかなにかと思ってる?
正直に答えるか、言葉を濁すか、先に答えろって怒るかな。
じっと目を合わせたままでいると、ゆっくり、獄寺君が口を開いた。
「オレは、あなたの、恋人だと、思ってます」
「うん」
「独り占め、したいんです、本当は。だけどあなたはオレだけのものじゃない。すべての人間に優しいから、たくさんの人間に好かれて、大勢の中心にいて。その隣に、一番近くにいられるだけで幸せなのに。自分に自信がないから欲深くなる。あなたがずっとオレを見てくれればいいのにって、恋人、だからって、独り占めできるわけじゃないのに、オレの中にはあなたしかいないから、不安になるんです。あなたが誰かと親しくしていると、置いていかれてしまうんじゃないかって、思うんです」
ぽつぽつと言葉とともにあふれてくる獄寺君の気持ちを受け止める。
たどたどしく詰まらせながらつむがれた言葉は獄寺君の不安な気持ちを表していた。
硬いままのこぶしにそっと手を触れさせる。
オレは獄寺君を置いてなんかいかない。
それに関する不安だけは取り除くことができるだろう。
だけどその他の部分に関しては、オレも同じように思っていることだから、
思うように不安を取り除いてあげることはできない。
「10代目・・・」
獄寺君の言うオレを好ましく思ってくれる人は、オレだけじゃなくて、オレたちを好いてくれてるんだよ。
獄寺君だってみんなの輪の中にいるんだ。
それに気づかない、気づこうとしない獄寺君には教えてあげない。
シャマルやビアンキ、ディーノさんやリボーン、オレと知り合う前の獄寺君を知っている人たちは、
獄寺君に対してオレに見せないような視線を向けることがある。
獄寺君もまた同じように、オレに対する反応とは違う対応を見せる。
そのことに獄寺君はやっぱり気づかないけれど、見せられるたびに心の中がざわりと騒いだ。
獄寺君の中にはオレしかいないと言うのなら、そのすべてをオレに見せてくれればいいのに。
オレのすべては、獄寺君が気づかないだけで、とっくに君のものになってるんだから。
「ぜんぶ、ちょうだい」
すべてをオレにくれればいいのに。
そうしたらオレは君だけのものだって君もすぐに気づくだろうから。
「きみをぜんぶ、オレにちょうだい」
君のすべてとオレのすべてをとろりと溶かして混ぜ合わせて、
ひとつになってしまったら、不安なんて分からなくなるだろう。
End
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エンドリスト(6/10)
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