「いたたたた・・・」

学校から帰っている途中、急に歯が痛み出した。
何日か前から、ものを食べると歯が痛んだ。
虫歯だ、とは思いながらも、まだ大丈夫だと思いこんで医者には行ってない。
右のほっぺたを手で押さえていると、獄寺君が心配そうにのぞき込んでくる。

「10代目、どうしました?」

痛いのはオレなのに、なぜか獄寺君の方が泣きそうな顔をしている。
その表情にいつもオレはほっとして、にっこりと笑えるんだ。

「大丈夫だよ。ちょっと歯が痛いだけ」
「虫歯ですか?」

さっきよりも少しほっとしたような表情で尋ねられる。

「まだ医者には行ってないけど、たぶんね。自分で鏡見ても分かんなくてさ」

たぶんこの辺なんだけど、とほっぺたの上から奥歯のあたりを指さす。

「オレが見てみましょうか?」
「ん?じゃあお願い」

背中を丸めてオレをのぞき込む獄寺君がなんだかかわいい。
ぱたりと立ち止まって獄寺君を見上げる。

「口、開けてください」
「ん」

口の中が見やすいように大きく口を開ける。
その時になんとなく目は閉じた。
じっ、と口の中を覗かれているのが感覚で分かる。
じっくりと何秒間かの間があってから、獄寺君が言う。

「やっぱり虫歯みたいですね。小さく穴が空いてます」
「えっ、ほんとに!?」

びっくりして思わず目を開けた。
何度か痛いと思うところを自分の舌でなぞってみたりもしてみたけど、
穴なんて空いてなかったように思う。
それを言うと、自分では探りにくい場所にありますからね、と言われた。
虫歯はどこにあったんだろう?そう思って獄寺君に聞いてみると、

「それはですね」

上を向いたあごに手を添えられて固定される。

「ここです」

ぽかんとばかみたいに開けたままだった口にぴったりと口を合わせられる。
すぐに入ってきた獄寺君の舌にぬるりと歯茎を舐められたかと思うと、
その舌はずっと奥の方に入ってきて、ずきりと痛む場所にたどり着く。
ほっぺたと歯茎の間をぐいぐいと進んでくる獄寺君のそれは、
目的の場所に届くと舌先を尖らせるようにしてそこをいじる。
歯の外側の、付け根のあたりを探るように動いている。
そして少しすると何かを見つけたように、同じ所を何度も何度も舐められる。
その刺激は優しいものだったけど、舐められたところがじくじくする。
確かにその部分に、穴が空いてしまってるんだろう。

「んっ・・・ぁ・・・」

しばらくしてゆっくりと獄寺君の舌が抜かれる。
ようやく口を解放されて、口の中にたまったつばをごくりと飲み込んだ。

「10代目、ちびたちと一緒に夜おかし食ってんでしょ。
 寝る前にちゃんと歯をみがかないとだめですよ」

オレの行動なんて全部お見通しみたいな言い方だ。
でもその通りだから反論のしようがない。

「そうする」

もう獄寺君に道ばたでこんなことされたくないし。
獄寺君と反対側を向いてぶっきらぼうに言う。

「そうしてください」

獄寺君は嬉しそうに笑っていた。





End





................

ある日のニュースに「虫歯を見てあげる」とか言って
口を開けた女の子(小学生)にキスした男の人(38歳?)が逮捕されたって話がありまして。
その手は使えるなぁ、とネタにしてみました。(人間としてどうなのか)
この男、他にも「カブトムシ見せてあげる」とかそんなこと言って女の子連れ込んで、
キスしたり自分の体触らせたりもしてたそうで。
アレ=カブトムシみたいなオヤジ的発想しかできない自分が痛いです。
最後はツナの健康を心配する獄寺に軍配が上がった感じでうまくまとまったと思います。
どう終わるのか自分でもヒヤヒヤしてたので。(笑)

それにしてもべろちゅーなのに色気がないな。

(2006.01.24 拍手文として)

拍手でいただいたコメントによれば、
虫歯ってキスでうつるんですって!そういえばなんか聞いたことある!
獄寺はツナにうつしてもらった虫歯を治療できずに激痛に悩まされたりするんでしょうか。
ほっぺた腫らしたところでツナに歯医者に引きずられて行ったりしたらかわいいと思います。
あれ、ヘタレ?

(2006.11.14)


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