リボーンの修行にも張り合えるくらいに厳しい修行が今日も終わった。
ごはんを食べてシャワーを浴びて、くたくたになった体を引きずって部屋に戻ると中から楽しそうな声が聞こえてくる。
ドアが開いて目に入ったのは、獄寺君のベッドで寝転がるランボとイーピンだった。
「こんな時間になにやってんだ?」
部屋の中に入ると後ろでドアが閉まる音がした。
シーツの上にはらくがき帳と色とりどりのクレヨン。
声をかけるとランボの足がぴょこぴょこ動いてイーピンが起き上がる。
ヒバリさん似の人形と目が合って、また少し疲れが出た。
「ツーナー!遅いぞー!」
「〜〜〜!」
チビたちの声に呼ばれるようにベッドへ行き、腰をかける。
らくがき帳を覗くとそれぞれ個性的な絵が描かれていた。
いろんな色の線が混ざり合って不可思議な色を作り出しているランボのらくがき帳、
いろんな色がきれいにまとまったカラフルなイーピンのらくがき帳。
「なに描いてんの」
「えっとー、ブドウとー、ハンバーグとー、クッキーとー、あめ玉とー、」
「〜〜〜」
言いながらさらに手を動かして白いところにも色が乗っていく。
イーピンの方は花とお姫さまかな。上手に描けてる。オレよりうまいかも。
「〜〜〜」
「ツナもかいていいぞー」
「オレはいいよ」
しばらくの間そうやって二人のことを眺めているとドアが開く音がして、
シャワーを浴びた獄寺君が戻ってきた。
「…なにやってんだお前ら」
「あ、ほら獄寺君戻ってきたから今日はもう終わり」
「やだやだー!」
「こらランボ、わがまま言うな…ちょ、イーピンまで…」
二人はクレヨンを放り出すとぎゅうとオレにしがみついてきた。
イーピンは腹に、ランボは足に、ぎゅうぎゅうと頭を擦りつける。
「だってツナぜんぜん遊んでくんないんだもん!今日はずっとずっと遊ぶんだもんね。朝まで起きてるんだもんね!」
しがみつく二人の小さな手や体温を感じ、この時代に来てから自分のことで頭がいっぱいになっていたことに気づく。
ごはんは一緒に食べてたけど、食べてる途中で寝てしまうくらいに疲れていたし、
ランボの言うとおりぜんぜん構ってやれてなかった。
二人の頭を撫でながら獄寺君を見上げる。オレがなにか言う前から分かっているのか、獄寺君は困ったように笑っていた。
「…ごめんね、獄寺君。疲れてたら上で寝てくれていいから」
「いいですよ。オレもお供します」
そう言って獄寺君はランボとイーピンを挟んでオレの向かいに座った。
イーピンのらくがき帳にお城が建って、ランボのらくがき帳が食べ物のようなものに埋め尽くされ、
そこに獄寺君の前衛的なセンスが加わった頃、騒ぐ声が途切れがちになって、ころりころりとクレヨンが転がっていく。
最後にぽすんとチビたちの小さな体がシーツに落ちた。
「眠ったねぇ。いつもこうだとかわいいのに」
転がったクレヨンを拾って箱の中に直していると、不意に気配が近づいた。
「10代目、子守は終わりです。次はオレの面倒見てください」
体を寄せて瞳の奥まで覗けるような近い距離で、獄寺君がそんなことを言う。
「獄寺君まで子どもみたいなこと言って」
「ええ、オレはガキみたいに独占欲強いんです。しがみつきますよ」
まじめくさった言い方で冗談のように装いながら、たぶんほとんどが本音なんだろう。
隠しきれていない、それこそ自分でも言うように、子どもみたいなオーラがにじみ出てる。
くすくすと笑ってしまうとますます拗ねたように顔を膨らませる。
これじゃあ本当に子どもみたいだ。
オレの笑いが治まって、獄寺君の表情が真剣なものに戻ったとき、
近づき合った姿勢から、そっと唇を触れ合わせた。
「二人を部屋に連れてってからね」
離れてすぐそばにある顔にそっと小さく話しかけると、きれいな顔がやわらかくほころんだ。
片づけたらくがき帳とクレヨンを持って、チビたちを両手に抱えて歩く獄寺君のあとを追う。
やわらかな口づけの続きも、広い背中にしがみつくのもつかれるのも、子どもたちが寝たあとで。
End
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なんかペーパーの話は寝てしまいますね。
未来編の二段ベッドとかチビたちを絡めてみました。
(2008.11.23)
(2008.10.12発行 『嘘みたいなアイラブユーsecond記念ペーパー』より再録)
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