説明文の音読(1年)〜大事な部分を強調する〜

 岡  篤


1 説明文の音読
 私は、説明的文章(以下説明文)の音読をするときに、文学教材とは明らかに違うことを子どもに求めます。それは、

 大事なところを強調する 

ということです。
 文学作品の音読の場合、同じ言葉でも、解釈や表現方法によっては、音読の仕方が大きく違ってくることもあります。しかし、説明文における「大事なところ」はそんなには違わないはずです。また、「強調する」は、大きく読むことと同じ意味で1年生の子どもに対しては使いました(実際には、強調する方法は「大きく」だけではありません)。これも子どもによって変わるということがありません。

 説明文の学習の要素に要約があります。「結局、『人類は滅びるか』で言いたいのは、『動物も人間も同じ』ということかな?」「この本から、得た知識はこれとこれだ」ということわかるのは、私たちが説明文を読むときに大切なことです。
 この「大事なところを強調する」という作業は、要約の過程でもあり、要約のトレーニングにもなると考えています。

2 指導方法
1)「大事なところ」とは、どこか?

 とはいえ、「大事なところ」と言われても、どのレベルで答えてよいのか、どのように範囲を指定すればよいのかわかりません。私が、子どもに言っているのは、まず、次の2つです。

 1 だいと同じことば
 2 だいとかんけいのあることば 

 これは、かなりわかりやすい。「題名と同じ言葉」は、『どうぶつの赤ちゃん』なら、最初「どうぶつの赤ちゃんは、生まれたばかりのときは」で始まります。ここでは、下線部を強調して読み、残りを普通によむことになります。「題名と関係のある言葉」は、『じどう車くらべ』なら、「バスや、じょうよう車は」「トラックは」を強調するわけです。これは、1年生でもほとんどの子が理解できます。
 この2つ以外に、

 3 しつもんしている文 

というのもあります。「それぞれのじどう車は、どんなしごとをしていますか。」「どのようにして大きくなっていくのでしょう。」といった文です。これも比較的わかりやすい。
 この3つは、説明文ということを考えると、ほぼ、「大事なところ」といえます。もちろん、完全ではありません。作者がこった題をつけたり、題と関係のある言葉が重要でないところでつかわれることもあります。しかし、説明文を読む姿勢としては、「題と同じ言葉が出てきた」「しつもん(問題提示)の文が出てきた」ということを意識するのは間違ってはいないと考えています。
 ここから、先は、ちょっとややこしいことになります。文章によっては大事なところとはいえないこともあるからです。

 4 数字
 5 しつもんに答えている文 

 他にも考えられますが、1年生には、この程度で十分ではないでしょうか。高学年では、文章全体を考えて、「作者の一番にいたいこと」「文章の結論」といったところも「大事なところ」に入るでしょう。

2)「強調する」とは、どうすることか?
 強調する、つまり大きく読むには、2通りの方法があります。

 声を大きくする
 読む人数を増やす 

 読む人数を増やすと一人一人の声が同じでも当然、グループとしての声は大きくなります。つまり、そこが強調されるわけです。いわゆる群読です。
 グループで練習するときは4人と決めています。次の理由からです。

 1 人数の変化で強調できる。 (一人ではできない)
 2 話し合いや練習がやりやすい。(5人はちょっとやりにくい)
 3 グループの中を、2つに分けることができる。(偶数の理由) 

3 「どうぶつの赤ちゃん」(光村・1年)から
 例えば、「どうぶつの赤ちゃん」に、次のような文章があります。

 ライオンの赤ちゃんは、
生まれて二か月ぐらいは、

おちちだけのんでいますが、
やがて、おかあさんのとったえものを
たべはじめます。

 第4段落の第1文です。ここでは、下線部が強調(大きく読む)部分になります。
「ライオンの赤ちゃんは」 −題名に関係のある言葉
「生まれて二か月ぐらいは」−数字
となるからです。
 実際の授業では、全員で読んだ後、4人グループで練習しました。途中で、練習がよくできているグループに発表してもらいました。すると、他のグループも刺激をうけ、その後は集中力が高まります。
 練習が終わると、グループごとに前に出て、発表します。他の子は、ノートに評価メモをします。表を私が書いて、それをノートに写します。項目は、「しせい」「ぜんいん(で読んでいるか)」「(声の)大きさ」「くふう(強調できているか)」といったものをよく使います。それぞれを班ごとに◎○△などとつけていくのです。
 1年生でも、自分たちで相談して、下線部を全員でのこりを2人でするなどとやっていました。残っているの私のメモによると、「くふう」の評価は、10班中、◎が5つ、○3つ、△2つとなっています。
強調する部分をつくったり、グループで練習するようにすることで、子どもたちの意欲はかなり高まったように思います。

4 その他
 1年生に、いきなり「四人グループで、大事なところを強調して読みなさい」というのは無理です。昨年度一年生を担任したときは、
1学期『とりとなかよし』  四人でそろってしっかり読める
2学期『じどう車くらげ』  強調部分を4人いっしょに大きな声で
3学期『どうぶつの赤ちゃん』強調部分を4人で分担して
という見通しで取り組みました。その分、むりなく授業が進められたように思います。まずは、

 一人一人がしっかり読めている 

ということができていないと、人数の変化をつけても声の大きさがあまりかわらず、強調したことにならなかったということにもなります。
また、技術的なことですが、強調部分をどの言葉まで入れるか、というのは難しいところです。私は、音読のしやすさという視点から、

 強調部分は読点で区切る 

ことにしていました。
 学年が進めば、原則にはずれた例外の部分について、文章の内容にそった話し合いもできるでしょう。強調の仕方も、声の大きさ、人数だけでなく、さまざまな工夫がでてくるはずです。
                           (落ち研ニュース「読み」 99/7/26)