「部活で回ってきたんだけど、オレが最後でさ。あと見るやついないからしばらく貸しといてやるよ」
そう言って山本はオレの手にそれを押しつけてきた。
「んじゃ、オレ配達の途中だから」
「あ、ごめん、引き止めちゃって」
「謝らなくていーっスよ、10代目。こいつが勝手に寄ってきたんスから」
「獄寺君!」
少し強めにたしなめられて口をつぐむ。
その様子をニヤニヤ見ている山本にまた腹が立った。
「それじゃ、山本。手伝いがんばって」
「あんがとな、ツナ。じゃーな、獄寺」
屈託のない笑みを振りまきながらもたもたと歩いていく山本に黙っていられなくなって声をかけた。
「油売ってないでさっさと行ってこい!食中毒起こしても知らねーぞ!」
その声が聞こえたのかそれとも聞こえていないのか、山本はぴたりと足を止めてしまった。
人の話聞いてんのか。これ以上外でもたもたして万一病原菌が食中毒の発症菌量まで増殖したらどーすんだ。
人の心配をよそに山本はいつもの笑顔で振り返る。
「ほんと獄寺っていいヤツなのな!」
「笑いごとじゃねーぞこのバカ!」
そう言ってもまだけらけらと笑いながら歩いていく山本を視界の外へやって
10代目に目を向けると、10代目までおかしそうに笑っていた。
少しふくれて10代目を見れば、抑えてくれてはいるものの、まだ目元が笑っている。
けれど10代目が笑っていてくれるのなら、それでいいという気分になる。
自分がバカにされているというのに、怒りの感情は起こらなかった。
ほんとに食中毒ってのは厄介なんですよ、10代目。
半分あきらめのような気分でいれば、
ようやく笑いの収まってきた10代目に手元を覗き込まれた。
「それで、山本はなに貸してくれたの?」
「・・・あぁ」
それまでまったく気にも留めていなかったものを思い出し、手の中に目を向ける。
>「タイトル書いてないんですけど、ビデオのようです」
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