どくり、と血が集まるのが自覚できるほど、オレの下半身が熱を帯びる。
ひっきりなしに上がる高い悲鳴の後にそんなことを言われたら、今まで抑えてた分、限界をすぐに超えてしまって。
「力、抜いてください」
耳元でそう囁くと、肩が大げさなほど揺れる。
快楽に染まった頬と、期待に満ちた目に煽られる。
すぐにでも突き刺したい衝動をこらえて、サイドボードの引き出しからコンドームを取り出した。
手早く袋を開けて、痛いくらいに張り詰めたペニスにかぶせた。
そして10代目のアナルの入り口を、2本の指で広げる。
顔を背けて深く息を吐く10代目の耳の後ろにキスをしながら、ペニスの先端を入り口に擦り付ける。
ぱくぱくと食いついてくるアナルに、思わず自分の唇を舌で舐めた。
「いやらしい、10代目。そんなにオレのが欲しいですか?」
「あっ、欲し、欲しいよぉっ!」
もうその言葉だけで、イッてしまいそうなくらいの快感が頭のてっぺんまで突き抜けた。
ゆっくりと、そう思ってるのに体が言うこと聞かなくて。
ずぷずぷと音を立てながら勢いよく10代目の体を貫いた。
「ああぁぁぁっ・・・!」
誘うような声と内壁の動きに理性を剥ぎ取られて、
コンドームについたジェルと唾液のすべりにそそのかされるように、
オレは狂ったように腰を打ちつけた。
肌と肌がぶつかる音が、どこか遠くから聞こえるように感じられる。
「はぁっ、ごくでらくん、ごくでらくんっ・・・!」
ただ、10代目の熱とオレの熱だけを感じて。
それだけしか考えられなくて。
「じゅう、だいめっ、」
自分でも息が荒くなってるのが分かる。
獣みたいだ。
10代目を欲しがる飢えた獣。
腰を押さえつけて、首筋に噛み付いて、むさぼるように。
外からも中からも10代目に食らいついて。
この人の体も心も、全部オレのものになってしまえばいいのに。
せめて今だけでも、オレのものにしたくて。
「10代目、好きです、10代目・・・」
10代目の体をめちゃくちゃに揺さぶって。
奥を突くたびに上がる嬌声に耳を心地よく弄られて。
熱くねっとりと絡んでくる内壁に意識を持っていかれそうになるのを歯を食いしばってこらえる。
浮き上がる汗と湧き上がる10代目のにおい。
10代目の首筋から香る香水なんて目じゃないくらいのくらくらするにおいがオレの神経を麻痺させる。
「ごくでらくんっ・・・ぁ・・・」
きゅう、とますます締め付けてくる10代目に、オレの熱も膨れ上がって。
「も・・・いっちゃう・・・!」
されるがままになってた10代目がゆっくりと腕をあげて、その腕がオレの首に絡みついてくる。
誘われるままに体を倒して噛み付くようにキスをした。
体から香るにおいも、オレを包み込む熱も、唇の隙間から漏れる鼻にかかった声も、オレをますます興奮させて。
10代目からもたらされる感覚の全部が、オレを支配して。
やっぱりオレは10代目のものなんだって認識する。
だって10代目とじゃなければ、こんなに気持ちよくなんてない。
限界まで広がった10代目の中に夢中になってオレの欲望を押し込んで。
切っ先が前立腺を刺激するたびに10代目はおいしそうにオレに食いついて。
もっともっと奥まで入りたくて。
10代目の体を二つに折り曲げるように足を折り曲げた。
持ち上がる背中と、あらわになったアナル。
その光景にごくりとつばを飲み込んで、思いっきり腰を打ちつけた。
ひくひくと痙攣するのが目に見えて、ペニスで感じて、ただただ興奮して腰を動かした。
「10代目、10代目ッ!」
「あ、あぁぁあ―――――ッ!!」
ふるりと震えたペニスから白濁とした精液が飛び散った。
ぎゅうぎゅうに締め付けるアナルの中を容赦なく抜き差しし、
すぐにでもイきそうになる感覚を歯を食いしばって耐える。
その間も10代目は射精し続けてひっきりなしに泣き声を上げる。
「もぅっ、やめ・・・だめっ、ぁ、あぁっ・・・!」
オレの動きを止めるためにか、締め付けが強まる。
強くオレを包みこむ内壁がそのまま収縮して、余計にオレの動きを煽る。
10代目のペニスから精液が途切れた頃、10代目の一番奥まで身を沈めて、射精した。
「じゅ、だいめ・・・」
気を失った10代目の中にしばらくとどまって余韻に浸る。
時折痙攣する体に軽くキスを降らせてから、ペニスを抜き取った。
ぁ、と小さく漏れた声にどくりとまた欲望が灯るのを抑えつけて、
涙と唾液に濡れた10代目の顔を手で包み込んでそれらを唇でぬぐっていく。
それがくすぐったいのか身をよじって、それからふわりと笑うその表情に、こんなにも満たされる。
やわらかい唇にひとつキスを落として、10代目の体を拭くためにタオルを用意しに風呂場へと向かった。
熱くもなく冷たくもない、なまぬるい湯に浸したタオルで10代目の体を拭っていく。
顔を拭いて、首や肩や胸などの汗を拭って。
それから10代目の精液が落ちた腹のあたりを。
拭おうとして、手を止めた。
(何かもったいないな・・・)
舌を伸ばして腹を舐めた。
ぴくりと少しだけ反応したものの、起きる気配がないのでそのまま続けた。
ぺろぺろと腹の上を覆うようにこぼれた精液を舐め取っていき、へそにたまったものをちゅう、と吸い上げた。
「こら―――――!!!」
急に聞こえた怒鳴り声に大げさに肩が跳ねた。
「じゅ、10代目っ!?」
「10代目!?じゃないよ!何やってんの獄寺君!!?」
「え、あの・・・10代目の体を拭いてたんですけど」
手に持っていたタオルを見せて、正当防衛を試みる。
「だったらそれで拭けばいいだろっ!?何変なことしてんの!!」
余計に怒られた。
「でも変なことじゃないですよ!?10代目の精え」
「言うな―――!!」
疲れているのに大きな声を立て続けに出したせいか、10代目ははぁはぁと大きく肩で息を吸っている。
「はぁ、もう、いいよ・・・シャワー浴びる」
「湯も沸かしてありますから、よかったら浸かってください」
「うん・・・ありがとう」
「タオルとか替えの下着とか用意してから行きますから、先に行っててください・・・あ、ひとりで歩けます?」
「んーーー、なんとか」
よろよろと立ち上がった10代目を少し心配になって見ていると、大丈夫だよ、と言われた。
それでも部屋を出るまで10代目を見守ってから、クローゼットに向かう。
体を拭くバスタオルと、替えの下着と。
それから脱ぎ散らかした衣服を拾い上げているところで10代目の叫び声が聞こえた。
「あ―――――!!!」
その声に、頭で考える間もなく、体が動いた。
手に持ったものはそのままに、全速力で風呂場に向かう。
「10代目!どうしました!?」
勢いをつけて脱衣所の扉を開けると、鏡を見ていた10代目がこちらを振り返る。
「敵ですか!?それとも蛾の野郎が入り込みましたかっ!!?」
敵対するファミリーの者が侵入したという最悪の事態がよぎったが、
脱衣所に10代目以外の気配はせず、少しだけほっとする。
それでも10代目が見ていた鏡のある辺りをにらみつけて、気配をさぐる。
職業柄、家に簡単に何かが入れるようにはしていないので考えにくいが、虫や何かが入り込んだのだろうか。
10代目を自分の方へ引き寄せようと手を伸ばしたところで、10代目が声を上げた。
「獄寺君!」
「はい」
「噛んだねっ!?」
「・・・はい?」
何のことだろうと視線を10代目に戻すと、俺を見て、怒っている。
「首んとこ!歯形ついてる!」
ここ、とご自分の首を指差して、オレに見るようにさせる。
そういえば、さっきセックスしてる時に噛み付いたような気が。
首筋にうっすらと赤い痕がついていて、よく見ると点々と濃いめの赤い痕。
見る者によっては、それがすぐに歯形だと分かるだろう。
「あ・・・」
しまった、と口に手をあてる。
「明日リボーンに死ぬ気弾撃たれたらどうするんだよー!」
オレとしてはそれで10代目を狙う奴への牽制になれば万々歳なのだけど。
10代目が恥ずかしいからと嫌がっていることなので
なるべく見えるところに痕をつけないように気をつけていたのだが。
「すみません10代目・・・あまりにも10代目が欲しくて、つい」
「ほ・・・っ!?」
カーッ、と音が聞こえてきそうなほど急激に赤く染まった10代目の顔。
もしかして、つい、とか言ったから怒らせてしまったのだろうか。
つい、噛み付いてしまうなんて、オレはそれくらいで戒めを破ってしまう奴なんだって。
「あ、あの、たぶんこれくらいだったら、明日にはもう少し目立たなくなってると思いますんで・・・10代目?」
10代目の首筋に手を伸ばして、なけなしのフォローを入れる。
オレを睨みつけていた目は顔が伏せられたために見えなくなってしまった。
無責任なことをして、無責任なことを言って、余計に腹立たしく思われた・・・?
オロオロと慌てるオレをよそに、10代目は黙って風呂場に入ってしまう。
「10代目っ!!」
オレはもう半泣き状態で10代目を呼んだ。
「分かった!もういいよ!!」
扉が閉まる、少し前に。
ちらりと見えた10代目の顔は。
何だか照れた時と同じ表情に見えた。
もしかして怒ってたんじゃなくて、照れて赤くなってたんだろうか?
何故急に照れてしまったのかは分からないけれど、
「もういいよ」ということは、オレが歯形をつけたことも許してくださったんだろう。
それだけで、顔がゆるんでくるのが分かる。
どれだけ現金にできてるんだ、オレ。
そうは思っても、言葉が口を突いて出るのは止められなかった。
「10代目っ!お背中お流しします!!」
タオルを持って扉を開ける。
するとそこにはほら、やっぱり照れた顔をした、10代目が。
End
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