今日は10代目と会う約束をしていた。
特にこれといった用事はなく、のんびりと一緒に過ごす予定だ。
10代目と過ごすというだけで何をしていなくてもかけがえのない時間だと思える。
顔の筋肉が緩んでやに下がった顔のまま、10代目のお宅のチャイムを鳴らした。
「10代目ー」
早く会いたくて、早く顔を見せて欲しくて、大きな声で10代目を呼ぶ。
「おはよう、獄寺君」
ガチャ、とドアを開けて挨拶してくださったのは10代目のお母様だった。
「おはようございます!」
ピシッと揃えた手を体に沿わせて、背中をまっすぐにしてお辞儀をする。
いつもえらいわねぇ、とか、きれいなお辞儀ねぇ、とか褒められてからは、
それまで以上に気持ちを込めて挨拶をしている。
「ごめんなさい、ツナはまだ寝てるの」
この方の笑顔はさすが10代目のお母様というべきか、
本当にやわらかく笑われるので、それを向けられるとふわふわとした気分になる。
オレもつられて笑い、言葉を返した。
「10代目に早くお会いしたくて約束よりも早めにきたんです。お気になさらないでください」
「まぁ、ツナも喜ぶわ。もしよかったら獄寺君がツナを起こしてくれるかしら」
「いいんですか?眠っておられるのに俺が部屋に入っても」
「獄寺君なら構わないわ。獄寺君に起こしてもらったらツナも飛び起きるんじゃないかしら」
「!!!」
それって、それってお母様。
オレのこと10代目の側近だって認めて下さってるってことですか?そうですよね!?
10代目のお母様ってお方は本当に、オレの喜ぶことばかりを言ってくれて。
現に今もオレの頬は紅潮していることだろう。
感動で目が潤みそうなくらいだ。
「さあ獄寺君、遠慮しないで上がって」
「ハイッ・・・!!!」
オレは言われるままお母様の後に従った。
09:The End of…
「起きたら着替えて、ごはん食べに降りてくるように言ってくれるかしら」
「はい、分かりました」
「獄寺君はごはん食べてきた?」
「はい」
「そう、えらいわねぇ。じゃあ何かフルーツでも用意しておくわ」
「お手数おかけしてすみません、ありがとうございます」
ニコニコと言ってくださるお母様にきっちりとお辞儀してから階段を上がる。
上がりきってすぐの扉の前に立ち、姿勢を正してノックした。
「入っていーぞ」
リボーンさんの声に促されてドアを開ける。
部屋の中には朝からピシッとスーツを着込んだリボーンさんと、ベッドで眠る10代目がいた。
「おはようございます、リボーンさん」
「ちゃおっス」
きゅっきゅっと念入りに銃の手入れをしている合間に、チラリと視線をこちらに向けられる。
「ツナを起こしにきたのか」
「ええ。お母様に頼まれました」
そうか、と一言返したきり、リボーンさんはまた銃の手入れに専念する。
好きなようにしろ、ということだろうか。
ドアの手前に突っ立ったまま軽く一礼をしてから部屋の中に足を踏み入れる。
リボーンさんの横を通り、10代目の眠るベッドまで歩を進める。
床にひざをつき、10代目の寝姿を拝見した。
掛け布団は豪快に蹴り上げられ、ベッドの上で足元へと追いやられている。
手足はマットレスいっぱいに広げられ、10代目の活発さを表していた。
その反動からか、パジャマの上はずり上がって腹部があらわになっている。
安らかな呼吸に合わせて上下する腹部と胸部を見ていると心の中が暖かくなった。
息をして、心臓を動かして。
10代目がここにいる証を見ていたかった。
とはいえお母様の言いつけもあることだし、いつまでも眺めているわけにもいかない。
10代目の眠りを妨げるのも忍びなかったが、とりあえず声をかけてみることにした。
「10代目、朝です・・・起きてください」
10代目のやわらかい寝息を聞きながらふわふわとした気分で静かに囁いた。
「そんな声で起きるわけねーだろ」
オレの声に反応があったのは、前からではなく後ろからで。
「起こす気あんのか」とまで言われた。
だけど起こす気があるのかと聞かれると、少し考えてしまう。
お母様から与えられた任務はちゃんとこなしたいと思うけれど、
気持ちよさそうに眠っている10代目を起こすのはどうにも気が引ける。
いや、正直に言ってしまえば、オレが10代目の寝顔をずっと見ていたいのだ。
そんなオレの思考を読み取ったのか、
リボーンさんはやれやれといった体で立ち上がる。
オレが10代目を見ている間に銃の手入れは終わってしまったようだ。
ガチャリ、と安全装置を外す音。
それがこちらへと向けられた。
「お前が起こせねーんならオレが起こしてやる」
その銃口が10代目の枕元へ向けられた。
慌てて間に入り、リボーンさんを止まらせるために口を開く。
「リボーンさんのお手を煩わせるまでもなく、オレがお起こししますので・・・!」
その言葉にリボーンさんはニヤリと口元に笑みを敷き、
「じゃあさっさと起こしてツナに朝メシを食わせろ。ママンが片付けできなくて迷惑だ」
それだけ言うと、こちらへ向けていた銃をしまってドアへ向かう。
「リボーンさんは今から朝食ですか?」
「ツナと一緒にするな。オレはもう食ってる」
「はあ・・・」
「コーヒーショップの開店時間になったからな。一杯飲んでくる」
「そうですか、お気をつけて」
間抜けな返答を返したオレに気分を害するでもなく、オレの言葉に笑みを返して、
リボーンさんの体はドアの向こうへと消えていった。
かろうじて感じられた気配が完全に消えてから、オレはまた10代目に向き直る。
すぐ近くで話していたのに、起きる気配がない。
遅くまでリボーンさんと特訓をしていたのだろうか。
本当は10代目が自ら目を覚ますまで眠らせて差し上げたい。
オレは外敵から10代目の眠りを守り、そのごほうびに寝顔を見せて頂けたら。
それだけでオレは満たされるけれど。
お母様からの言いつけもあるし、リボーンさんから釘もさされた。
このまま寝顔を眺めているわけにもいかなくて、意を決して10代目を起こしにかかる。
「10代目、もう朝ですよ。起きてください」
固めた決意とは裏腹に、小さな声が漏れた。
「10代目、起きてください」
ゆっくりと近づいて
「10代目」
ひとことづつ、10代目の耳元に寄って囁く。
「10代目・・・」
すぐ側で囁くと、10代目がぴくりと反応した。
「ん、・・・」
小さな声と小さな身じろぎに、慌てて体を離す。
危うく10代目を起こしてしまうところだった。
・・・?
起こして、いいのか。
いや、起こさないといけないのだ。
ひとつ深く呼吸をして、決意を改めた。
「10代目、起きてください」
「ん、ぅ・・・」
パジャマがめくれた10代目の腹に手を添えて、ゆっくりと体をゆすり、
それまでよりも少し大きめの声で話しかけると反応があった。
少しだけ眉間にしわを寄せて、体をよじる。
その途端、腹に添えた手がすべり、図らずも10代目の柔らかい肌を撫でることになった。
「っ・・・!!」
慌てて手を引き剥がし、すぐに消えていく10代目の熱を感じながら10代目をこっそりと眺める。
まだ起きたくないのか、顔を枕にうずめてしまった。
そのままゆっくりと体の線を目で辿り、先ほど自分の手が撫でた腹まで下りて視線が止まる。
白い肌に誘惑されるように手が伸びて、ぺたりと手のひらを吸い付かせた。
さらさらとした触り心地にうっとりしつつ、脇腹を撫で回す。
横を向いていた体がまた逃げるように動き、元のように上を向く。
ふと視線をずらすと、パジャマの下を押し上げているものが目に映った。
ふんわりと持ち上がったものに吸い寄せられるように手を動かし、そこに触れる。
10代目はぴくりと一度足を振れさせたものの、すぐに反応を返さなくなる。
顔をうかがいながら人差し指でそのふくらみをパジャマ越しに撫でた。
「んんっ・・・」
その瞬間、伸ばされていた足が立てられて、慌てて手を離した。
様子を伺い、んー、とうなりながもまだ起きる気配を見せない10代目に気が大きくなり、
もう一度人差し指で付け根から先端までなぞり、その後手のひらでゆっくり握りこんだ。
10代目がびっくりしてしまわないように、壊れ物を扱うみたいにゆっくりと、やわらかく。
ゆるやかな刺激にもペニスは反応をして、パジャマと一緒にオレの手を押し返してきた。
10代目の元気な状態に、あぁ今日もご健康で何よりだ、と
のんびりと考えながら休まず手を動かしていると、足がびくびくと震えだして。
「あ、あぁ、ァ・・・」
抑えようとせずにそのまま発せられる嬌声は、普段にも増して色っぽくて、思わずごくりとつばを飲み込んだ。
(普段の声だってもちろん色っぽい)
いつもは恥ずかしいと言って噛み締める唇も意識のない今では薄く開かれていて、
その奥では赤い舌がちらちらと誘うように揺れている。
「ん、ごくでらくん・・・」
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