相手がオオカミである自分を信じてついてきてくれている。
そのことは、このうえもなく嬉しいことだが、もともと獄寺はヤギの肉が大好物なのだ。
ずっと一緒にいると、空腹のときもおいしそうな匂いが勝手に鼻から忍び込んでくる。
頭とおなかの葛藤に苦しまなければならない。
ぐうううう、と獄寺のおなかの虫が鳴く。
空腹は限界を超えて、ついにツナの知るところになる。
「ふふふ、獄寺君、おなかすいたの?」
「は、はい・・・」
そのことをあんまりツナには知られたくなかったので、ついつい獄寺の口が重くなる。
おなかがすいたということは、肉が食べたい、ということだから。
(そういえば、ツナヨシさんと友達になってすぐに、
片耳だけ食べさせてくれないかなぁ、なんて思ったこともあったなぁ)
そう思って隣に座るツナを見た。
ぐるるるる、とさっきよりも大きくおなかが鳴る。
ぷにぷにとした白い肌はなめらかで、とてもおいしそうだ。
その肉を一口でも食べれたらどれだけおいしいだろう・・・いやいや、だめだ。
ツナヨシさんは大切な友達なんだから、食べるとかそんなこと考えちゃだめだ。
獄寺はツナの体を見て、そのにおいをかいで、
とても我慢できないところまできていたけれど、
大切な秘密の友達なんだからと、食欲を押さえつけた。
そんな様子をじっと見ていたツナは、ふふふ、と控えめに笑う。
「?どうしたんスか?」
「ん、ごめんね。獄寺君の顔がおもしろくて」
「ひどいっスよ・・・」
おいしそうな肉の隣で、こんなにも我慢しているというのに。
いやいや、違う。ツナヨシさんは肉じゃなくて友達で・・・。
獄寺の頭の中ではおいしそうな肉とかわいらしいツナがはかりにかけられてぐらぐらと揺れている。
「ヤギの肉って、そんなにおいしいのかなぁ?」
ツナは獄寺が葛藤している横で、自分の腕を眺めた。
草食の自分には、とてもおいしそうには見えない。
でも獄寺がここまでうなって葛藤するほどだから、
彼にとってはとてもおいしいんだろう。
ツナはじっと眺めていた自分の腕に、がぶりと噛み付いた。
「痛い!」
「だ、大丈夫ですか!?」
ツナは自分の腕から口を離し、その跡を見る。
思い切り噛み付いたから、歯型がついてしまった。
「そんな思いっきり噛み付いたら、痛いに決まってますよ!」
「でも食べる時は噛まなきゃいけないじゃないか」
「そりゃそうですけど・・・」
昔は何でもなかったことが、今では酷く気にかかる。
ツナの体に傷がつくのを見て、何故か自分が痛かった。
そんな獄寺の表情を見て、ツナは気分を変えるように明るく尋ねる。
「ねえ、獄寺君。ヤギってどの辺がおいしいの?」
「そりゃあやっぱり、腹の肉がいちばん脂がのってておいしい・・・」
ぎゅるるるる・・・と、これまでよりも大きくおなかの虫が騒ぐ。
おなかがすいた状態で、ヤギと一緒におしゃべりをするなんて、
頭が我慢できても、おなかが限界だった。
それに、話の内容が内容だ。
ヤギを見ながら、肉の話をするなんて・・・。
「ふふふ、ちょっとくらいなら舐めてもいいよ」
「え・・・?」
ツナの言葉に獄寺は目を丸くする。
この、目の前にいるヤギは、何と言ったのか。
オオカミに、おなかを舐められてもいいだって・・・?
その言葉に、獄寺の目はもう一度ツナのおなかに向く。
白くて、なめらかで、やわらかそうで、とてもおいしそうだ。
思わずつばがこみ上げてきて、それをごくりと音を立てて飲み込んだ。
「ほ、ほんとに・・・?」
聞き返す獄寺の声は震えている。
だって、ツナと友達になってから、食べていないのだ。
この、大好物の、ヤギの肉を。
「君になら食べられてもいいとも思うけど、
でもやっぱり君と一緒にいられないのは嫌だから。
舐めるだけなら、いいよ」
そう言われて、頭の中に色々な感情が混ざり、ごちゃごちゃになる。
嬉しい、食べたい、食べたくない、欲しい。
もう一度、ごくり、と溢れてくるつばを飲み込んだ。
「じゃあ、舐めるだけ・・・」
獄寺はそう言って、差し出されたツナのおなかに舌を伸ばした。
べろり、と、おなかの真ん中辺りを小さく舐める。
やわらかい。
久しぶりのその感触、それがツナのものだと思うと余計に感情が高ぶる。
はじめは小さく舐めるだけだったのが、獄寺はだんだんと大胆になり、
ツナのおなかの上から下までを大きく舐めだした。
べろり、べろりと獄寺の舌は何度もツナのおなかを往復する。
ツナのおなかに鼻先を近づけ、そのおいしそうな匂いに
飲み込んでも飲み込んでもつばが溢れてくる。
飲み込みきれなかったつばは、
舌でツナのおなかに塗りつけられて、ぺちゃりぺちゃりと音を立てた。
草の上に座っていたツナは、
いつの間にか獄寺が舐めるのにしたがって、草の上に仰向けになっていた。
獄寺は草の上にツナを押し付けるように、力を抜くことを忘れてべろべろと舐め続ける。
つばでべろべろになった舌は、ぬるぬるのおなかを滑って胸まで到達する。
「っあ、」
それまで声をこらえていたツナは、思わず小さく悲鳴を上げた。
ツナのおなかを舐めることに夢中になっていた獄寺は、それでやっと顔を上げる。
「すみません、つい夢中になって・・・」
そこまで言ったところで獄寺は固まってしまう。
ツナの様子を見て、獄寺の血液は沸騰しそうなほどに熱くなった。
おなかは獄寺のつばでぬるぬるとお日様の光を反射して、
その上にある胸は、ほとんど触っていないのに上を向いて尖っていた。
そしてツナの顔は赤く染まっていて、表情はとろとろに溶けて目が潤んでいた。
「ツナヨシさん、少しだけ、かじってもいいですか」
ごくり、と獄寺はまたこみ上げるつばを飲み込む。
食欲ではない欲が、ゆらりと獄寺の中に灯る。
「や・・・痛いのはやだよ・・・」
さすがのツナも、かじられて血が出るのは嫌だ。
焦点の定まらない目を必死に獄寺に向けて言う。
その様子に、余計に獄寺の欲が高まるのも知らずに。
「痛くはしませんから・・・」
そう言うとツナの返事を待たずに、またおなかに口を寄せた。
今度は舌を伸ばすのではなく口を開けて、かぶりつくように。
ツナは衝撃を予想して固く目をつぶった。
かぷり、と、確かに獄寺は噛み付いた。
しかしそれはエサを食べるようにではなく、他の意図を持って。
皮膚を噛み切ってしまわないように注意を払って、
鋭い牙でやわやわとおなかに噛み付いた。
「なに、やだ・・・」
何度も何度も舐められたおなかに歯を立てられると、
ツナはびくりと体を震わせた。
獄寺は反応のあったそこに重点的に噛み付いた。
「ぁ、あ、あ・・・」
噛まれるたび、舐められるたびにツナはびくびくと体を跳ねさせた。
獄寺はもちろん動いた分だけ追いかけて、執拗にツナの体を舐める。
「や、やだ、ぁっ、ぅ・・・」
ずっと見開かれたままのツナの目からは涙が零れる。
それが痛みのためなのか、それとも別のもののためなのかは他人からは判別がつかない。
だって周囲から見れば、それはまさしくヤギがオオカミに襲われている場面なのだから。
噛んだり舐めたりを繰り返し、獄寺が顔を上げると、
ツナの白い肌は花が咲いたように赤く染まっていた。
「ツナヨシさん・・・」
獄寺は熱に浮かされたようにツナの名前を呼ぶ。
自分が呼んだその名前の響きにまたうっとりとして、舌を伸ばす。
さっき少しだけ舐めた、胸に向かって。
オオカミの舌がヤギのおなかから胸へとぬるりと移動する。
たっぷりとつばを乗せて、べろりべろりと何度も繰り返す。
胸の小さな突起は舌を押し返すように固く、獄寺を楽しませた。
その感触を気に入った獄寺は、今度はそこばかりを舐める。
「ァ、ァ、んっんぅ、!」
小さな突起を押しつぶされるたび、ツナの口から声が漏れる。
その声に心地よく耳をいじられながら、獄寺は満足するまでそこを舐め続けた。
それまで獄寺の両手はツナの体を覆うようにして地面に置かれていたが、
興奮するまま、片手をツナの体に乗せる。
その場所にはちょうど、舐めていない方の突起があって。
獄寺の手の肉球に、むに、と突起を押しつぶされて、ツナは悲鳴を上げる。
「やっ、あーーー!」
びくびくと痙攣を起こし、それでも獄寺は構わずにぐいぐいと手を押し付けた。
そのためにツナは甲高い声をひっきりなしに上げ続けることになる。
片方をぬるぬるとした舌に刺激され、もう片方をやわらかい肉球に刺激され、
ツナはぽろぽろと涙をこぼしながら体をよじろうとするが、
オオカミの力には叶うわけもなく、そのままむさぼられ続ける。
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