佐藤幸司『小学校道徳授業 成功の極意』(2014.10明治図書)の中で、マンガの『課長 島耕作』第3巻(弘兼憲史/講談社)の1場面を使っています。
このマンガを持っていたので、早速スキャンしました。右が問題の場面です。
立っているのがつらそうな老婆に気付いた島さんは、声をかけます。
「大丈夫ですか 荷物をお持ちしましょうか?」
一方、老婆の前には、新聞を読んでいる男が腰掛けています。
佐藤氏の本には、詳しい展開は書いてありませんでした。私なら、まずはこの画面を見せた後、次のような問いを出していきます。
1)みなさんは、島さんのことをどう思いますか。
2)新聞を読んでいる男の人のことをどう思いますか。
3)島さんは、このあと、どうするでしょうか。
4)島さんは、このあと、どうするでしょうか。
この場面だけで問えば、島さんに対しては好意的な感想が出、男の人には否定的な感想が出るでしょう。
島さんは、男の人に声をかけます。
「すみませんが こちらのおばあさんが 少し疲れていらっしゃるようで 出来ましたら席をゆずってあげていただけないでしょうか」
内心怒りながらも、島さんは丁寧にお願いしています。
5)島さんに席をゆずるようにお願いされた男の人はどうしたでしょうか。
ここでは、席をゆずったかゆずってないかを挙手で予想させて、
6)男の人は席をゆずりませんでした。なぜ、ゆずらなかったのでしょうか。
男の人は、次のように言っています。
「冗談じゃない 疲れているのはこの老婦人だけじゃない 私だって疲れているんだ」
「あんたらが何時間寝たか知らないけど 私は昨日からずっと仕事で2時間しか寝ていないんだ 人の事情も知らんで勝手なことを言わんでくれ!」
「わたしはね この電車の席を取るために始発駅のホームで20分も立って並んだんですよ 私には座る権利があるんだ そうやってやっと手に入れた席をたった今乗ってきたこの人に 何でゆずらなきゃならないんだ?」
その男の人に対して、島さんは、次のように言います。
「権利とか そういう問題じゃないでしょう!要するに あなたの気持ちのことを言っているんですよ」
佐藤幸司氏は、「島さんと男の人、どちらの考えに賛成ですか」と尋ねるそうです。
結局、別の人が老婆に席を譲ってくれます。
私なら、最後に、次の問いを出してみたいです。
7)おばあさんのために、島さんはどうしたらよかったのでしょうか。
別に、新聞を読んでいる男の人にこだわる必要はないのです。
最初は老婆のために声をかけたかもしれませんが、途中からは、男に対する怒りから言い争いになっています。相手が自分の思い通りの行動をしてくれなかったことに腹を立てているともいえます。
自分のことで、島さんと男の人が言い争っていることに、老婆もいたたまれなかったことでしょう。
「みなさん、誰か席を替わってる人はいませんか。」
と、周りの人に声をかけたらよかったのです。
自分の正義を押し通そうとする余り、本当に大切なことを忘れてしまうこともあるのです。それでも、まあ、島さんには好感を持てますけどね。
(2015.5.17)