リビングに入り、暖房の温度を少し上げる。
さすがに毛布一枚で寝るのは今の温度では少し寒い。
泊まりの客がくることなんてないから客用の布団なんて用意していないし、
10代目が泊まるようになっても一緒にベッドで寝ていたからやっぱり布団を買おうなんて気にはならなかった。
それは今後も同じで、10代目以外の人間を泊めることなんてないだろうし、
今日みたいな状況じゃなければ一緒にベッドで寝るだろうから、この部屋に布団が来ることなんてないんだろう。
しんと静まり返った部屋の中でブーン、という暖房の音を聞きながらそんなことを考えていると、遠くでがちゃりと物音がした。
あの音は寝室のドアの音だ。
もう一度がちゃりと、たぶんドアの閉まる音。
それから軽い足音がするから、10代目が部屋から出てきたんだろう。
トイレか、それとも暖房をつけているから喉が渇いてしまったんだろうか。
乾燥しないようにコップに水を入れて置いておけばよかったと小さく後悔していると、その足音はぱたぱたとこちらに近付いてきた。
リビングのドアの向こう側に10代目の気配。
何かあったのかと体を起き上がらせると、ちょうど10代目がドアを開けて中に入ってきた。
「10代目?何かありましたか」
声をかけても返事はなく、10代目は無言で近付いてくる。
移動の間も寒かったのか、掛け布団を頭からすっぽり被って、10代目のお宅にある絵本で見たゆきんこを思い出した。
「10代目・・・?」
歩いている間何もしゃべらずにいる様子にただならぬ気配を感じ、姿勢を正す。
立ち上がろうとしてソファから足を下ろそうとした瞬間、
布団の下から伸びてきた10代目の手に、体にかけていた布団を剥ぎ取られてしまった。
どうしたんだろう、と思っている間に10代目にもう一度ソファに押し付けられ、そのまま体の上に乗り上げられる。
オレの腰を跨ぐ状態に驚いて見上げると、10代目は潤んだ目でオレのことを見ていた。
「10代目・・・」
ごくり、と唾を飲み込む。
暗闇にかき消されることない強い意志を秘めた瞳は、甘く潤んでいてとても扇情的だった。
オレの肩を押していた手が動き、ジャージのチャックを下げられる。
ジジジジジ、という音をどこか遠くの世界の音のように聞きながら、
10代目の手がジャージの前を広げていくのを見ていた。
本当に明日そのまま登校するつもりだったから、ジャージの下は体操服を着ている。
暗い中でもその白さはやけに目立って、頭が少し覚醒した気分だ。
10代目は腰を浮かして、オレの体操服をズボンから引き出した。
「じゅ、10代目、どうしたんですか?」
体操服を持ち上げる手を掴んで顔を覗きこむ。
腹に外気が当たって少しひやりとしたが、すぐに暖房で暖められた生暖かい空気が肌をなぞる。
オレに掴まれた腕から顔を上げて、濡れた瞳で睨まれる。
その目で睨まれても、怖いというよりは煽られるだけだ。
なるべく反応しないように冷静に冷静にと自分を落ち着かせて10代目が何か言ってくれるのを待つ。
10代目の方は掴まれた腕を無理には動かそうとせず、一度視線を逸らしてから、再びきつく睨んできた。
「オレが勝手にやるから、獄寺君は寝てていいよ」
そう言うと10代目は体を倒し、自由な方の手でオレの体操服の襟を引っ張ると、鎖骨の上の辺りに唇を押し付けた。
ちゅ、と小さく吸われ、唇を離して舌で舐められる。
乾いた部屋の中に濡れた音が響き始めてオレはいよいよ慌て出した。
「10代目、ほんとに、どうしたんですか・・・!?」
慌てるオレに構わず、10代目はオレの体操服を持ち上げて体を沈める。
くちゅ、ちゅ、と音を立てながら胸や腹を舐められて、くすぐったさに身を捩る。
捩っても追いかけられて肌を吸われ、ぞくぞくと腰に熱が溜まり始めた。
やばい、そう思っても10代目の行為は続き、
やめさせなければと思う自分と、その気持ちよさに流されたいと思う自分に挟まれて身動きが取れない。
吐く息にも確かに熱が混じり、暖房が少し熱いと感じるようになってくる。
相変わらず10代目はオレの体に吸い付いて、時折ぬるりと唾液を絡めて舐めてくるからたまらなかった。
本当に抑えが利かなくなりそうでもうやめてもらおうと10代目を見れば、
オレの肌を舐めながらゆるゆると腰を振っている。
腰の上に跨った10代目の体に意識をやれば、擦りつけられた10代目のペニスが、緩く立ち上がっているのが感じ取れた。
オレの体に口付けて、立ち上がったものを擦りつけて。
その様子を頭の中で処理すると、一瞬で沸騰するようにペニスが勃ち上がる。
やばい、とか、そういうレベルを超えてしまった。
もう、やめられない。
「10代目」
からからに渇いた声で10代目を呼ぶ。
さっきまでとの声の違いに気付いたのか、それまでは見向きもしなかった10代目が顔を上げる。
体を持ち上げて10代目の頭に手を添えて、逃げられないようにしてから口付けた。
驚いて開いた唇に舌を差し入れて、さっきまでオレの胸や腹を舐めていた舌を探し出す。
小さな口の中で舌はすぐに見つかり、奥に逃げそうになるそれを絡めて引き出した。
「んん、んっ・・・ふぅ、ん・・・!」
唾液を絡めた舌はぬるぬるとして気持ちがよく、ぴちゃりと濡れた音を立てた。
そのまま口の中に迎え入れて、強く吸う。
びくんと震える体。
頭から手を離して指先で背中を撫で下ろすと、また体がびくびくと震えた。
「あっ、あ・・・ん、ぁ・・・」
耐えられずに口を離され、声が漏れる。
離れた分体を寄せて、先程と角度を変えてまた深く口付けた。
息も漏らせないくらいにぴったりと合わせて、舌を深く絡ませる。
くちゅ、くちゅと音を立てながら溢れる唾液を啜り、同時に舌の裏を舐め上げる。
10代目の体の震えが大きくなり、ペニスの硬さが増すのが分かる。
体を少し寝かせ、10代目とオレの体の隙間に右手を差し込んで、ジャージの上から10代目のペニスを撫でた。
「んんっ・・・!」
ぴたりと重ねた唇からはくぐもった声が聞こえてくる。
びくんと反応する体も背中に添えた左手で押さえ、形を確認するように刺激する。
ジャージの上からゆっくりと撫で上げて撫で下ろし、そのままペニスを握りこむ。
くぐもった声にも甘さが混じり、鼻から抜ける声には甘えを含んでいるようにも思えた。
ちゅ、と音を立てて舌を開放し、唇を離す。
「は、あ・・・ぁあ、あ・・・!」
途端に甘い声が耳元で聞こえ、背筋をぞくぞくと快感が抜ける。
10代目は自分の声に恥らった様子で口を噤み、けれどすぐにまた解けて、甘い声を零した。
くちくちと濡れた音がする。
10代目が先走りを漏らし始めたんだろう。
ジャージからでは濡れた様子は分からないけれど、下着はもうびしょびしょになっているかもしれない。
それを考えるだけで興奮してしまう。
唇の端や首筋にキスをしながら手を動かす。
10代目が汗をかいて石鹸の匂いがふわりと濃さを増す。
その匂いをかぎながらまた、自分も熱が上がるのを感じた。
「ぅ、あ、や・・・や、あ・・・」
ペニスへの刺激はそのまま、首筋を舐め上げる行為を続けていると、
10代目は舐められている側の首筋をかばうようにして身を捩る。
その動きで舌が首から離れてしまい、追いかけようとする前に胸を両手で押さえられた。
震える手でそんなことをしたって効果は無い。
強引に引き寄せてしまうこともできたけれど、身を捩って逃げようとするから動かしていた手を止める。
「10代目、どうしました?嫌ですか?」
「んっ、んん・・・」
ペニスから離した手で脇腹を撫で上げ、
耳に舌を捻じ込んでから息を吹き込み、低く囁く。
10代目は耳が弱いから、それだけでもへたり込んでしまう。
腰に押し付けられた10代目のペニスは、先程よりも硬くなって存在を主張している。
ズボンと下着を下ろして直に触って差し上げたい、
そう思いながらも耳たぶを甘く噛むだけに止まって10代目の返事を待った。
「はっ、ん・・・ごく、でらくんは、やらないん、でしょ」
途切れ途切れに聞こえる10代目の声を拾う。
やらない、とはどういうことだろうか。
緩く歯を立てた耳たぶをもう一度舐めてから口を離し、問いかける。
「どういうことですか?」
「さっき、やらないって、いったくせに」
さっき、とは寝室でのことだろうか。
確かにあの時はやらない気でいたけれど、
10代目からこんなことをしておいてそれはないと思う。
反論を口に乗せる前に、10代目の言葉が続く。
「だから、獄寺君は、やっちゃだめだよ」
「・・・10代目?」
どういう意味だろうか、と考えるよりも先に、10代目に肩を押さえられて体がソファに沈む。
10代目はオレの上から降りてオレの足の方へ移動すると、ジャージに手をかけて脱がされてしまう。
ジャージの下にはやはり体育のハーフパンツを履いていたけれど、それもすぐに下着ごと脱がされてしまった。
「じゅ、10代目・・・!?」
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