言わなくたって分かる。
表情とか、にじみ出てるオーラとか。
それに今回が初めてというわけでもないし。
でも、なぁ・・・。
怒ってる、ん、だよな・・・?
たぶん、獄寺君はオレが他の人と仲良くするのが好きじゃない。
獄寺君のいないところで、たとえばうちで夜ランボと遊んだって話をすると、見事に嫌な顔をする。
そんなだから余計、獄寺君のいるところで他の人と話をすると気に入らないんだろう。
相手が母さんとかリボーンとかイーピンとか、獄寺君が認めてるやつならいいらしいんだけど、
獄寺君の基準でいけば大体が気に入らない人に分類されるので、しゃべるたび話すたび、不機嫌そうにされる。
嬉しいといえば嬉しい。だって獄寺君に好かれてるっていうか、ひとりじめにしたいって思われてるってことだ。
つきあってるんだから、恋人を独り占めしたい気持ちは分かる。
オレだって、獄寺君が女子にきゃーきゃー言われてるのを見て楽しくはない。
だけど獄寺君はちゃんとオレのこと好きって分かってるから、
他の子に気持ちが奪われてしまうことはないって分かってるから、がまんできるのに。
イヤだけど、安心できるのに。
獄寺君が嫉妬深いのは、オレの気持ちが届いてないのか、
それとも、「恋人」っていう対等なものじゃなくて、
子どもが気に入ったおもちゃを取られたくないとか、そういうのに似た気持ちなのかもしれない。
独り占めにしたい、誰にも触られたくない、
目に見えない気持ちは、他人からはその形が正確には分からない。
ただ、オレが意思のある人間だから、嫌われたくない、怒らせたくない、そんな気持ちで不満を押さえ込んでるんだろう。
獄寺君はやっぱり不機嫌そうな顔で隣を歩いていた。
いつもならこんなとき、獄寺君の方からやけに明るい声でまったく関係ない話を振ってくるか、
オレの方から話しかけるか、どちらかして、なんとなく、元のとおりに戻っていくんだけど。
だけど今日は、オレの方からうやむやにしてしまう気はなかった。
このまま黙っていたら、獄寺君はぎこちなく話しかけてくるのだろうか。
そこまで考えたとき、ふと、獄寺君が立ち止まった。
続いてオレも足を止める。
振り返ってみると獄寺君は口を開いて
>声を出した
>また口をつぐんでしまった
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