「ツナー、獄寺―」
すっかり肌を日に焼いた山本が寿司桶を持ってやってくる。
「あれ、山本。店の手伝い?」
「おー、久しぶりに部活休みだからな。たまには店手伝おうと思ってな」
山本が差し入れと称して寿司を持ってくるところや
実際に自分で握っているところも何度か見たことはあるが、
目の前に現れたこの小麦色の肌と寿司桶というのは妙にミスマッチだ。
「えらいねー、オレなんか毎日だらけてるけど家の手伝いなんてしようと思わないよ」
「10代目はちゃんとガキどもの面倒見てやってるじゃないですか!お母様はとても助かってると思いますよ!」
10代目が山本を褒めてさらにはご自分を卑下するような言葉まで言い出すので
10代目の素晴らしい点を挙げて言えば、くすくすと控えめに笑われてしまった。
反応の意図が分からず首をかしげていれば、山本に声を出して笑われた。
「てめ、なに笑ってんだよ!」
「いやー、獄寺もえらいのな!」
「ああ?!」
意味が分からず声を荒げるが、山本はどこ吹く風といった風にまったく気にもしていない。
こいつのこの能天気なところにも腹が立つ。
「そうだ」
それまで10代目と二人きりでとてもいい気分だったのに。
早く帰れ、そして早くオレと10代目を二人きりにしろ。
おおっぴらには言えない言葉を視線に込めながらじりじり山本をにらんでいると、
込めた言葉に気づいていない脳みそ筋肉バカは
へらへらと笑って肩からかけていたかばんからなにかを取り出した。
>「これ、二人に貸してやるよ」
>「これ、二人にやるよ」
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