中のものを確認して、びくりと硬直した、のち、心の中で悲鳴をあげる。

(ななななに考えてんですかリボーンさん!!!)

10代目から伝えられた「使う」という言葉から、
てっきりなにかの道具かと思っていたら・・・いや、道具は道具だけども。
なにやら怪しげな色をした液体の入った小瓶に、
小さいものから大きくグロテスクな、いっそ笑いを取るような形状をしたものもあるさまざまな道具たち。
これを使え、との命令なのだろうか。
いや、しかし、いくらリボーンさんからのものとはいえ、
成分の分からない薬を10代目に飲ませることも、
ただでさえ負担のある行為にこんな道具を使うこともはばかられる。
一瞬薬や道具によって乱れる10代目の妄想が脳裏をよぎり、ごくりと生唾を飲み込んだ、けれど。
やはり、使えない。
10代目の体も心配だし、なにより自分以外のものが10代目の中に入ることに抵抗を感じる。
無機物にさえ嫉妬してしまうのだ。
少し心引かれるものがないことはないが、使えない、
そう思うものの、今度はこれの処分に悩む。
使わないにしても、10代目の言うように捨ててしまうこともできない。
だからといって10代目にお返しすることもできないので、
10代目に見つかりにくいだろう頭上の棚の、一番奥へと仕舞い込んだ。
根本的な解決にはなっていないが、10代目をお待たせする訳にもいかない。
これの処理はあとで考えることにして、アイスティーとケーキを用意して10代目の待つリビングへと移動した。

クーラーで冷やした部屋は快適で、暑い中歩いて帰ってきた体にはとても心地よかった。
グラスに水滴を作るくらいに冷えたアイスティーは
体中に染み込んでいく感じがして、飲むごとに生き返る心地がした。
我ながら良い出来だと満足する。
10代目もおいしいと言ってくださり、その笑顔でその言葉が偽りのないものだと教えてくれる。
一緒にお出ししたケーキも食べ終えてまったりしていると、そういえば、と10代目が声を出した。

「さっき山本が貸してくれたビデオってなんだろ?見てみようよ」
「ああ、そんなのもありましたね」

せっかくの10代目との二人きりの時間、山本に会ったことなどすっかり忘れていた。
10代目の言葉でようやく思い出し、コンビニの袋に入れたままキッチンに置きっぱなしにしたビデオを取りにいった。

大雑把な、いかにも体育会系というように、カバーにも入っておらずむき出しのビデオテープ。
タイトルさえ書いていないのでなんのビデオなのかさっぱり分からない。
テレビの電源を入れてビデオ画面にし、テープを差し込んで再生ボタンを押す。
ザー、という砂嵐が数秒流れたあとに始まったのは、


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