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この獄ツナは付き合っていません。



05:1日何箱?


「獄寺君・・・」

名前を呼んで見上げれば、獄寺君はオレのしてほしいことがすぐ分かる。
たまに勘違いをして一人で突っ走ってしまうところもあるけれど、
それでもオレのためにしてくれてるんだって分かるから、
困った振りをして見せてても、本当は嬉しいんだ。
だけど、間違えずに願いをきいてほしいときもある。
そんなときには、もう一言、つけ加えるだけでいい。

「トイレ、行こう・・・?」

それだけで、獄寺君は分かってくれるから。



家に帰る少しの時間すら待ちきれず、獄寺君と二人で特別校舎へと向かった。
ここには理科の実験室や技術室、美術室なんかの特別教室が並んでいて、
放課後で騒がしい、教室のある校舎とは正反対に静かで、人がいない。
そのさらに奥にあるトイレの中の、ひとつの個室に二人で入った。
一人で入るだけでも狭いのに、二人で入ればすごく狭い。
必然的に触れ合った獄寺君の体からタバコのにおいがした。
いつもより強いそのにおいに少し眉を寄せる。
獄寺君、最近タバコの量が増えてるみたいだ。
体の心配や、先生やヒバリさんからの注意の心配をしている間にも、
触れ合った体から伝わってくる獄寺君の体温にどきどきと心臓を高鳴らせていく。
自分から誘っておいて、緊張してしまう。
こくりと小さくつばを飲み込めば、かちゃりと鍵を閉める音が響いた。

「10代目・・・」

低い声。
こういうときにだけ聞く、かすれた声。
その声を聞いただけで、これから起こることに期待して、体の奥がじくりと騒いだ。
いざとなるとやっぱり恥ずかしい。
ゆっくり息を吸って、吐いて、覚悟を決めてベルトに手をかけた。
かちゃかちゃと不器用に音を立てながらベルトを外し、ズボンの前をくつろげていく。
その間に獄寺君は便器のふたを下ろしてその上にハンカチを置いている。
もたもたとズボンとパンツから右足を抜いて、左足も、と思ったところで
バランスを崩してふたの上にしりもちをついた。

「わぁっ・・・!」

乱暴に扱われたふたが、ガコン、と無機質な悲鳴をあげる。
こんなときなのにうまくできない自分の不恰好さにさらに恥ずかしくなっていたけれど、
獄寺君はあまり気にした様子もなく声をかけてくる。

「10代目、もう少しこちらに」

そう言われて腰を獄寺君の方へと寄せた。
体が傾き、背中がタンクに当たり、ひやりと冷たさが伝わってくる。
腰を支えるものがない不安定な格好に、慌てて腰掛けたふたの上に両手を置いた。

「失礼します」

太ももの内側に手のひらを置かれ、ゆっくりと開かれる。
足の間に体が入り込み、足が閉じられなくなった。
恥ずかしいところをさらけ出す格好に、かっと顔が赤く染まる。
その間にも獄寺君の体が動き、足に置かれていた手が離れて、
その大きな手のひらで下を向いていた性器を持ち上げるようにして竿を包まれ、ゆるやかに扱かれる。

「あ・・・」

ぴくん、と体が小さく反応してしまう。
まだ反応していない性器にくすぐったい刺激が走った。
優しく上下に擦られて、少しずつ息が上がっていく。
このときが、少し苦手だ。
どこを見ていればいいのか、なにを考えていればいいのか分からない。
前に獄寺君はなんにも考えずに気持ちいいことだけ感じてればいいって言っていたけれど、
こんな狭いところで、こんな近くで、本当に目の前で、
立ち上がるところから、達する瞬間まで見つめられてしまうんだ。

「・・・っ」

ぞくりと体の中をなんだか分からないものが駆け上った。
せめて、自分は見ないようにと獄寺君の大きな手のひらに優しく撫でられているところから目を離した。
視線を上げて、獄寺君の顔を盗み見る。
手元を見つめる様子は真剣そのもので、オレが見ていることにも気づいていないようだ。
傾いた顔の横から銀色の髪の毛がさらさらと落ちる。
まつげまで銀色だっていうのはつい最近知ったこと。
オレのことをまっすぐに見つめてくれる宝石みたいにきれいな緑色の目は今は伏せられていてよく見えない。
髪の毛も、おでこも、ほっぺたも、触ったらとっても気持ちいいんだろうな。
自分の手で触れてみたいと何度も思った。
獄寺君と話すだけで嬉しくて、笑いかけられるとどきどきした。
オレのこと見てほしい、傍にいてほしい、そう思うけれど自信がなくて、勇気がなくて、
獄寺君の言葉に漬け込んで、こんなことさせて。
自分の欲だけ満たして、それなのに満足できない。
なんて馬鹿なことをしてるんだろう。
こんなことばっかりしてたら、そのうち獄寺君に嫌われてしまう。
そんなのはやだから、嫌われたくないから、やめなきゃって思うのに。

「10代目、気持ちよくなったら我慢せずに出してくださいね」

伏せられていた目がちらりとこちらを見上げてどきっとする。
自分の考えにとらわれていて言われた言葉の意味をほとんど理解しないまま
薄い唇が開かれていくのを見つめてしまう。
赤い舌が覗いて、ぬるりとした口の中に含まれた瞬間、
とろりと先走りが溢れてしまった。

「あっ・・・獄寺、君・・・」


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