「恥ずかしいのがイイんでしょう?さっきイッたばかりなのに、もう元気になってますよ」

オレの唾液でぬるぬるになった指が性器に絡みついてきて、息をつめる。
そうしないと、また変な声を出してしまいそうだったから。
部屋の中に、くちゅりと水音が響く。
獄寺君が手を動かすたびに、さっき出した精液と手についた唾液が音を立てる。

「っ・・・ふ、ッ・・・!」
「ああ・・・唇に傷がつきますよ」

性器をいじる手はそのままに、もう片方の指がオレの唇を撫でる。
噛み締めた歯にも手を這わされて、力が緩んだ隙にまた口の中に指を入れられた。

「っあ、はっ・・・あっ・・・」

口を閉じることができなくて、恥ずかしい声が漏れる。
指に力を入れられて、顔を背けることもできない。
口の中の粘膜をこすられる感覚に、だんだんうっとりとしてきて抵抗ができなくなる。
性器と一緒に根元の袋まで揉みこまれ、背中に快感が突き抜ける。
快感をやり過ごすように顔を左右に振ると、獄寺君の指が口から抜け出る。

「は、なして・・・!」

このままではまた獄寺君の手の中に吐き出してしまいそうだ。
でもそれは避けたくて、自由になった口で必死に言葉をつむぐ。
それでも獄寺君の腕は離れず、むしろそのまま吐き出してしまえとでも言うように、手の動きは早くなる。

「ぅ、はぁっ・・・!」

くちゅくちゅと下から聞こえてくる音が大きくなって、聴覚を刺激される。
変な声が漏れそうになって、慌てて手のひらで口をふさぐ。
手の隙間から漏れるくぐもった声も恥ずかしくて、
声を殺すことばかりに集中していると、急に獄寺君の声が耳元で聞こえた。

「10代目、すごく気持ちよさそうですよ。恥ずかしい液がたくさん溢れてるの、分かります?」
「っ・・・」

言葉の後に耳を舐められて、ぞくりとする。
耳元と下腹部から響いてくる濡れた音で頭の中がぐちゃぐちゃになる。
変わらず止まらない手の動きに背中が浮く。
獄寺君の手から逃げたいのかもっとして欲しいのか、もう自分でも分からない。
耳元でくすりと笑う気配がする。
図らずも獄寺君の手に性器を擦り付ける格好になり、
獄寺君はそれに逆らわずに力を入れてスライドさせる。
先端から漏れ出した精液が伝ってすべりがよくなったところを勢いをつけてこすり上げられ、ますます腰が浮く。

「っあ、あ、あっ――――!!」

達するように仕向けられて、抵抗もできずに絶頂を迎える。
射精の余韻にびくびくと体を震わせていると、獄寺君はいつもの笑顔でとんでもないことを言ってきた。

「こんなにすぐイッちゃって・・・あいつにイかせてもらえなかったんですか?」
「なっ!!そんなことしてないって言ってるじゃないかっ!!」

荒い息もそのままに反論しても獄寺君は特に気にすることもなく、行為を進めた。
ひざの裏に手をかけて体を折りたたまれる。

「やだよ、獄寺君・・・!」

その格好は下半身が全部丸見えで、恥ずかしいなんてもんじゃなかった。

「あいつと何もないのなら、オレに見られたって構わないでしょう?」

そりゃやましいことなんて何もないんだから見られたって構わない。理屈はそうだ。
でもこの格好を受け入れるわけにはいかない。
ネクタイでまとめられた腕を上げて獄寺君の肩を突っぱねる。
つかまれて固定された足も動かして、全身で抵抗する。
だけど獄寺君の力は強くて、腕は動かないし体もびくともしない。
無駄な抵抗とは分かっていても、素直にこのまま納得いかない行為に流されるのは嫌だった。

「もう、ほんとにやめてってば!何でこんなことするんだよ!!」
「教室でも、山本の家でも。オレに内緒であいつと親しげにしてたでしょう」
「親しげにってそりゃ山本は友達なんだから・・・」
「オレの知らないところで俺以外の奴があなたに触れてると思うと、耐えられないんです」

肩を押し返す手に手を添えられる。
そのまま両手を頭の上に縫い付けられた。

「獄寺君・・・?」
「あなたのこんな姿を見ていいのは、オレだけなんですから」
「ちょっ、待ってよ獄寺君っ・・・!」

何だか獄寺君の考えがおかしな方向に向かっている。
オレに獄寺君以外の人が触ると嫌だっていう気持ちは分かるつもりだ。
オレだって獄寺君が女の子からきゃーきゃー言われてるのを見ると、気分は良くない。
それにこんな恥ずかしい姿を見せるのは獄寺君にだけだ。
獄寺君だから見せられるのに。

「ねえ10代目」

幾分穏やかな、でも影に低い響きを残した声で獄寺君が話しかける。
その声に閉じていた目をゆっくりと開けて、獄寺君を見上げる。
すると目の前に手のひらをかざされた。

「・・・?」
「10代目の精液ですよ。めちゃくちゃ濡れてんの、分かります?」
「っ・・・!?」

にっこり笑いながら自分の腕に口を寄せて、手のひらから流れ落ちる精液を舌を伸ばして舐め取る。
細められた視線はオレの目を射抜くように鋭く、そして淫靡だった。
白い液体と赤い舌の対照的な色や
濡れた液体の表面に光が反射する様子をそれ以上見ていられなくて、顔を背けた。
くすりと上で獄寺君が笑う気配がする。
痛いくらいに視線を感じて、獄寺君がオレの様子を穴が開くほどじっくり見ているのが分かる。
それからその視線がふと逸らされて、尻にひやりと冷たいものが撫で付けられる。
一瞬びくりとしたものの、それはすぐにオレの体温と獄寺君の体温で暖められた。
ぬるぬるとそのぬめりを借りて手が秘所へと辿り着く。
入り口の周りを精液で濡らし、次の衝撃に備えて息を吐いた。

「っあ・・・!」

タイミングを見計らったように、力が抜けたところで指を押入れる。
浅く含ませた指をぐるりとひだをなぞるように一周させてから引き抜かれた。
それでも入り口の近くに指を置かれて、
その指を奥へ押し込んで欲しいとでもいうように、入り口がひくつくのが自分でも分かった。
入るか入らないか、というぎりぎりのところで指を動かされる。
ぬるぬるとした硬い指が表面を這い、時々気まぐれに差し込まれる。
そのたびにオレは声を上げ腰を揺らし、何も考えられなくなってきた。

「あ、も・・・獄寺君!も、やだぁっ!!」

腕に添えられた手に力をこめて、獄寺君は乾いた唇をぺろりと舐めた。
オレの反応を見ながら、ゆっくりと濡れた指を後口に潜り込ませてきた。

「っ、う・・・」
「10代目、すごいひくひくしてますよ。オレの指そんなにおいしいですか?」

耳に吹き込まれる卑猥な言葉に首を振る。
だけどじりじりと与えられる刺激に知らず背がのけぞって、胸を突き出す格好になる。

「やらしいですね・・・触って欲しいんですか?」
「っ、あっ!やっ・・・!」

俺の手を縫い付けていた手が離れた。
乳首の先を指の腹でこすられ、そこからびりびりと刺激が広がる。
唾液でぬめった指はスムーズに動き、ますます俺を追い詰める。

「こっち、触ってないのに尖ってきてますよ?そんなに気持ちいいですか?」
「ぅ、ちがっ・・・」
「違う?ああ、左ばっかりじゃなくて、右も触って欲しくて立ち上がってるんですか?」

乳首の先端にそっと指を置かれ、立ち上がったそれを指でゆっくりと回される。

「あっ!あぁっ!!」

さっきまでとは違う、ゆるくて、だけど無視できない刺激に声が上がる。
乳首をいじられている間も性器を包んでいた指はいつの間にか離され、
支えられなくても立ち上がっている性器の裏側をくすぐるように指先で撫でられる。

「っく、ん・・・っ」

乳首をぎゅっと摘まれて、体の奥を指でまさぐられ、せわしなく息を吐き出す。
焦らすだけ焦らされて、気が狂いそうだった。
涙でぼやける目で精一杯獄寺君を見つめる。
そして縛られてうまく動かない腕を差し出した。
手を広げて獄寺君の背中に腕を回したい。
怖くてすがりたいんじゃない。愛しいから抱きしめたいんだ。
行為の最中には自然とそう思う。
だけどぼやけた視界に映るのは腕に巻きついた青いネクタイ。
こんな風に思ってるのはオレだけなのかな。
目の表面を覆う涙を、新しい涙が押し流す。
ぼろぼろと涙がこぼれて頬を伝う。
鼻の奥がつんとして、泣き顔なんて見られ慣れてるんだけど、今の顔は見られたくなくて顔を背けた。

「うぇ・・・ひっく、ぅ」
「・・・10代目?」

唇をかみ締めても、嗚咽が漏れる。
生理的な涙ではなく本格的に泣き出したオレに、獄寺君は動きを止めて顔を覗き込んできた。
上にのしかかられてこれ以上逃げられないから目を閉じて視界を閉ざす。
獄寺君はオレの体から手を離して、体の横に手をついた。

「10代目?どうかしましたか?」

顔を近づけてくる気配がする。
でも目は開けてやらない。
どうかしたのはオレじゃなくて獄寺君だ。
近づけられた分だけ顔を背けてシーツに埋めて、それ以上首が回らなくなったから逆の方向を向いた。
10代目?10代目?とオレが動くのに合わせてついてくる様子に、だんだんと安心してくる。
さっきまでの冷たい感じが消えていつもの獄寺君の感じに戻った気がするからだ。
そろりと目を開けて獄寺君の様子を伺う。
オレが目を開けて自分を見たことにほっとしたような表情。

「どうかしましたか?・・・あっ、もしかしてオレ、どこか痛くしてしまいましたか?」

オレを心配する様子も、いたわる様子も、すっかりいつも通りに思えた。
だからこそ、今日一日様子がおかしかったのが余計に気になった。


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