・・・主に釣りの学校で登場した魚たちを紹介します。
サバ(鯖)
春から初夏にかけてはアジ釣りなどの外道でおなじみのマサバやゴマサバはハリに掛かった途端、下に向けてまるで円を描くように走り、釣り上げた後でもビリビリビリ・・・。ハリ数の多い胴突き仕掛けで狙うと、残りのハリにも次々と食いついてきてよけいに走り回るから、もたもたしているとオマツリしてしまいます。ただ、アジほどは口の周りが弱くないので口が切れてバラすことは少ないです。普通はアジなどのタナより上で食うことが多いです。
きゅっとくびれた尾ビレの付け根は、尾ビレを細かく激しく振動させて高速で泳げる証拠です。人間でいうなら、アキレス腱がキュッとしまったスプリンターであり、長距離ランナーでもあるのがサバ科の魚たちです。食べて美味しい季節には専門で狙います。
『秋サバは嫁に食わすな』なんていうひどい俗言がありますが、この言葉通り秋から冬にかけて非常に美味しいサバは、こってりと脂ののったマサバのことです。特に美味しいといわれる大分・佐賀関の船から狙う“関サバ”は近年ブランド化され、その名前を漁協が商標登録しているほどです。日本にはマサバとゴマサバの2種が生息しています。(厳密にはサバ科は日本で11属21種います・・・)
マサバは「鯖を読む」と辞書に載るくらい江戸時代から親しまれ『日本の魚』だと思われがちですがサバは全世界に分布しています。食卓にしょっちゅう登場するポピュラーな魚ですが、最近は北欧やフランスからの輸入物が多いようです。「鯖の生き腐れ」といわれるように鮮度が落ちやすい魚でもあり、各地で塩鯖や郷土名物の寿司にされてもいます。新鮮なものの刺身やしめ鯖はまさに最高ですが、釣り人にしか味わえない贅沢なものです。ただ、サバ類の筋肉にはヒスチジンというアミノ酸が多く、人によってはアレルギーを起こすヒスタミンになるので注意が必要で、また生食のときには寄生虫のアニサキス(下の【注】を参照)にも注意が必要です。
マサバがやや冷水性なのに対して暖水域に多く沖合性が強いのがゴマサバ。マサバに比べて体の断面が丸いので「まるさば」とも呼ばれています。マサバと同じように料理されますが、普通はゴマサバの方が不味いとされています。しかし、ゴマサバは年中味が変わらないですが一方マサバは夏に味が落ちるため、ゴマサバは「夏の魚」として喜ばれます。ゴマサバの幼魚は初夏に大挙接岸してきて「エサトリ」になる困りものでもあります。
ない
マサバ(サバ科サバ属)
ある
体の正中線上に黒色の小斑点が並ぶ
腹は真っ白で、ゴマサバに比べると体の断面が平たい
ゴマサバ(サバ科サバ属)
(注)アニサキス
淡水魚や汽水魚は人に害のある寄生虫を寄生しているものが多くて生食は出来ませんが、海産魚で人に害のある寄生虫は少ないです。その数少ない害虫のひとつがアニサキスです。アニサキスは線形動物門に属する、いわゆる腺虫類(ぎょう虫とか回虫が有名)です。
アニサキスは海産哺乳類につく寄生虫で、卵は糞とともに海水中に排出され、オキアミ類や魚などを中間宿主として生活し、海産哺乳類の体内で成虫になります。人は終宿主ではないのでアニサキスの幼虫は人の体内で成虫にはなれません。そのため、アニサキス幼虫を人が食べてしまっても普通は排泄されてしまいます。しかし、たまに数匹の幼虫が人の胃腸壁に侵入することがあります。いわゆる「幼虫移行症」と呼ばれるもので、激しい腹痛、吐き気、嘔吐がその症状です。
サバ・ニシン・スルメイカ・アンコウ・ヒラメ・イワシ・タラ・サケ・サンマなどの北洋回遊魚を生食するときは、魚をよく見て調理し、腹部の筋肉は厚く切り取って捨てるようにします。腹部周辺の幼虫侵入率が一般的には9割以上と高いので、内臓は生食しないようにします。十分に煮たり焼いたりしておくと幼虫は死滅しますが、簡単な冷凍では死にません。冷凍の場合にはマイナス20度で24時間以上冷凍する必要があります。
虫体は傷を受けるとすぐ死ぬので、念のためよく噛んで食べます。鮮魚を放置すると幼虫は内臓から筋肉に移行するといわれているので、なるべくはやく内臓を取り除いておくとよいと思います。
もし夕食に刺身かにぎり寿司を食べて、夜中から早朝にかけて、おなかが痛くなったら、まずアニサキスの感染を考えた方がよい.小さな線虫が胃に潜り込もうとするので痛みが起こるのです。時には小腸でも同じことが起こり、その場合にはもう少し時間が遅れます。内視鏡簡単に胃をのぞける現在、診断も治療も比較的簡単だが、海の魚を生で食べるときにはご用心!!
魚のおなかから取り出されたアニサキスの幼虫
イカ
コウイカ(甲烏賊)・・・十腕目、コウイカ科
アオリイカ(煽烏賊)・・・十腕目、ジンドウイカ科
おいしいだけでなく、4kg、5kgの大型になるのでイカの王様ともいわれています。小アジなど生きエサを泳がせてハリに掛ける釣り方が盛んですが、最近は餌木(えぎ)と呼ばれる専用の擬似餌を引いて釣る釣り方(餌木を使ったしゃくり釣り)が盛んです。餌木の良否が釣果を左右し、腕いっぱいに大きくしゃくり、フケた糸がまっすぐに伸びたら、またしゃくりという釣り方です。アタリは明確に出ます。
大きくなると胴長40cmを超え、胴幅も12cmにもなります。ひれは胴の全長におよび広い楕円形で、この点が同様に全長にわたるひれを持つコウイカ類に似ますが、コウイカ類特有の石灰質の貝殻(イカの甲)を持ちません。スルメイカやケンイサキイカと同じで、体の中には薄くて細長いキチン質の軟甲を持つツツイカの仲間です。体色は状況に応じて変化し、褐色から透明に近い色まで、数秒で変わります。この変色は他のイカに比べても特に激しいです。ミズイカの別称があるほど透明になります。また、形が芭蕉(ばしょう)の葉に似ているのでバショウイカと呼ぶ地方もあります。
身は豊かでイカの中でも最高に美味だと言われています。夏期に多獲され、この時期が旬です。
ケンサキイカ
関東ではマルイカ、紀州ではアカイカ、若狭ではシロイカやマイカ、九州では五島イカと、各地で釣りが盛んなせいか呼び名は多いです。ケンサキイカの子供はヒイカとも呼ばれます。盛期の夏から秋にかけては沖合いに出て夜釣りが定番です。布巻きスッテと呼ばれる疑似餌をゆっくり50cmほどしゃくりながら誘う釣り方が一般的です。
ヤリイカ
日本列島沿いに広く分布しており、胴長は大きな雄では40cmにも達します。雌は大きくなっても30cmそこそこで、雄に比べるとずっと太短いです。体色は普通褐色で、胴は細長い筒状で腹側に1本の縦うねが通っており、ひれは細長い菱形です。一見ケンサキイカとも似ていますが、とくに腕の部分が短く弱く、触腕の吸盤が顕微鏡的に小さいのがケンサキイカとは大きく異なります。ケンサキイカに比べてスリムな体をしているためか、ササイカ、サヤナガ、シャクハチ、テッポウ、テナシ、ツツイカ、ヤリンボ、ヤリケンなどと地方によって呼ばれています。産卵期は春から夏で、この時期に大きな群れをつくって接岸してきます。ゆっくりとソフトに乗りを聞くような感じでしゃくり続けることが大事です。身はスルメイカよりもうすく、味はよいです。
スルメイカ
スルメに加工することからこの名があります。夏を代表するイカです。耳が三角形に近く、胴の中央に黒い帯のような縞があるのが特徴です。関西ではマツイカ、九州ではトンキュウ、イカ漁の盛んな北海道ではマイカ、その他地方によってツツイカ、ガンゼキ、フユイカ、スルメイカの小型(子供)をムギイカと呼んだりもします。日本列島沿いに大回遊するイカとして知られ、日本海を北上したものはオホーツク海にまで達するそうです。生まれたばかりの幼いイカは1ミリにも満たなもので、海流に乗って流されながら成長するそうです。
釣り方は、底ダチを取ってから激しくアクションを加えながらしゃくってタナを探りながら釣ります。ムギイカ(小型スルメイカ)は浅場にも群泳してきます。ヤリイカなどの高級品に対し、普及品として扱われますが、新鮮なものは刺身、そのほか煮物、焼き物、揚げ物、酢の物と幅広いです。鮮度のよいものは指先で足の吸盤に触れると吸いつき、また胴を押すと身が縮み色が変わりますが、体の褐色が消え白くなったものは鮮度が落ちている証拠です。
おまけ@・・・大阪湾にいる魚
大阪湾では今までに359種以上の魚類が見つかっています。これらの種類は、一生のうちでいつを大阪湾で過ごすかという点から2つに分ける事が出来ます。一つは大阪湾で一生を過ごす「定住種(スズキ、メバルなど)」、もう一つは湾外から回遊してくる「入り込み種」です。さらに「入り込み種」は4つに分けることが出来ます。大阪湾を産卵の場所とする「産卵種(サヨリ、キスなど)」、子供の成長の場とする「成長種(マイワシ、マアジなど)」、季節的に回遊してくる「一時回遊種(ヒラソウダ、ニベなど)」、そして決まった回遊はなく、潮の流れの変化や水温の変化などで偶然に来遊する「迷い込み種(サンマ、シイラなど)」の4つです。