笛の管理
 笛の管理には充分気を遣う必要がある。素材が竹なので、実にもろいところがある。固い所に当てたりすると、衝撃で割れてしまう。「竹を割ったような」という言葉があるが、その通り見事に割れてしまう。持ち運ぶ時は、特に注意が必要だ。
 乾燥にも弱い。エアコンの効いた部屋に長時間放置するのは危ない。エアコンは大敵だ。少しでもヒビが入ると、あとがもろい。特にこれから冬に向かって、暖房に注意しないといけない。私の笛も、楽屋の暖房のせいで何回かヒビが入ってしまった事がある。
 応急処置としては、瞬間接着剤でとめるしかない。ヒビ割れを発見したら、すぐにとめておく。下手をすると手遅れになってしまう。筒の内側にまでヒビが入ると、音に影響してしまう。正式には、笛師(ふえし〜笛を作る人)の方にお願いして、漆でとめてもらうのが一番だろう。
付  笛
 日本舞踊の演奏手法に「付笛」(つけぶえ)というものがある。曲の中で、踊り手が笛を吹く仕草をする時に、御簾内(下手の中)でこちらが笛の音を出してあげるのである。踊り手は実際に笛を吹くことができないので、こちらがサポートする。TVの時代劇などで、俳優が笛を吹く場面に音を入れ込んでいるのと同じ理屈だ。
 面白いのは、踊り手が小道具の笛を使っていることもあるが、扇子を使って笛の様に見せていることもある。この時も「付笛」を入れる。踊り手が扇子を構え、口元に持って行くと、陰から音を出してあげる。
 吹き始めは良いのだが、終わるところが難しい。急に止めるられるとあわててしまう。曲の雰囲気に合わせた音を出しながら、終わる時は静かにきれいに終わるのが理想だ。長唄「喜三の庭」や清元「傀儡師」、清元「津山の月」などでよくやっている。(振り付けによっては、ないこともある。)
 同様に、「付鼓」(つけつづみ)という手法もある。
人形振り
 長唄に「操り三番叟」という曲がある。日本舞踊では踊り手が人形の物真似をして、わざとギクシャクしながら踊る。このような趣向を「人形振り(にんぎょうぶり)」と呼ぶ。
 この種の代表は、なんと言っても義太夫の「お七」である。上演頻度で「お七」の右に出る曲はない。ほかにも数曲同じ様な趣向の曲はある。ただし、どれもが文楽人形の物真似なのだ。
 それに対して「操り三番叟」は、まさに操り人形の体で踊る。上方から数本の糸でつるされた人形が三番叟を踊る様を見せるのである。この曲が作られたのが嘉永6年とされているので、当時この種の人形が庶民の間で人気があったのだろうか。それとも逆に、手に入りにくい品物ゆえに、こういった趣向が生まれたのか。どなたか、当時の風俗等に詳しい方がいらっしゃれば教えていただきたい。
 ついでに、初演時には、曲の前半に登場する翁と千歳がゼンマイ人形の振りだったそうだ。
楽屋は無礼講
 朝晩めっきり涼しくなってきた。残暑のせいでまだ夏服を着ていたが、いよいよ衣替えか。7月8月の猛暑の中でもスーツにネクタイ姿のサラリーマンが多いのには驚く。近年特に目立つようになった。一昔前は半袖の人がいっぱいいたのだが。
 とてもバカげていると思う。暑い盛りに上着をきて、ネクタイをしめて、エアコンを目一杯効かせている。こんな無駄なことはない。半袖にノーネクタイで良い。百歩譲っても、半袖シャツにネクタイで十分だ。決して失礼な格好ではない。社内的にも対外的にも何か呪縛があるのだろう。「右へ倣え」をしていないと、白い目で見られるというような。
 もっと合理的というか、自然な考え方にすればどうか。こんなことをしていて、「省資源」などと言われると、あきれるしかない。アロハシャツがハワイの正装だというのは有名である。
 歌舞伎の世界では、夏場は全員浴衣姿である。7,8月の2ヵ月間楽屋の廊下に「無礼講」と書いた紙が貼り出される。1日中浴衣で構わない。もちろん舞台の上では、伝統通りの衣装をつける。これは舞台演出上仕方がないことであり、観客も夢の世界を見に来るのだから。しかし舞台を降りるとみんな浴衣でうろうろしている。本人も涼しいし、ハタ目にも涼しい。実に合理的である。
「邦楽」と「純邦楽」
 一口に「邦楽」と言っても、かなり幅が広い。雅楽、能楽、歌舞伎、文楽、義太夫、常磐津、清元、地唄、箏曲、長唄、荻江、神楽、祭囃子、民謡等々まだまだ数多くのジャンルがある。各々に特色があり、どれも面白い。
 最近レコード業界で、「純邦楽」という単語が定着してきた。CDショップへ行って「邦楽」のコーナーを見ると、日本人歌手、アーチストの曲が並んでいる。(内容は洋楽) 「純邦楽」の棚へ行かないと、お目当てのCDが見つからない。この業界では、「邦楽」の意味をねじ曲げてしまったようだ。辞書にもこういう使い方は載っていない。
 これでは「洋楽」の対義語が「邦楽」ではなくなってしまう。CDショップやレンタルショップに出入りしている若者は、「邦楽」という言葉にどのようなイメージを描くのだろうか。
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よもやま話
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邦楽に関する事を書くつもりですが、何事にも例外は付き物です。
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