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17 三味線に合わせて篠笛を吹くときの、調律の仕方を教えてください。
 三味線の糸の主な調律の仕方は3通りあります。「本調子」、「二上り」、「三下り」の3つです。もっと変則的な調律もありますが、ここでは代表的な3つについて説明します。篠笛を吹くときは、三味線がどの調子(調律)であるかを常に意識しなければなりません。
 三味線の糸と篠笛の運指との対応は次のようになります。(数字は、篠笛の運指番号)
           
                (本調子)  (二上り)  (三下り)
       (一の糸)     三       二      三
       (二の糸)     六       六      六
       (三の糸)     3        2       2
         
 このように合わせておけば、三味線と一緒に演奏することができます。但し、三味線は曲の途中で転調するのが日常茶飯事なので、そのときには気を付けなければなりません。始めに本調子で合わせていても、途中で二上りになると同じ笛では合いません。二の糸が2度上がりますので、篠笛も2本高い調子に持ち替える必要があります。そうすれば、二上りにピッタリと合うのです。
 繰り返しますが、常に三味線の調子を頭に置いて篠笛を合わせることが、必要かつ絶対条件です。参考に、転調による笛の持ち替えパターンを書いておきます。

     本調子→二上り……2本高い笛     本調子→三下り……同じ笛
     二上り→本調子……2本低い笛     二上り→三下り……同じ笛
     三下り→本調子……同じ笛        三下り→二上り……同じ笛
16 長唄、常磐津、清元、等々の違いを教えてください。
 これは一番よく聞かれる質問です。ストレートな質問ですが、最も答えにくいものの1つです。どれも見た目は同じで、使う楽器も同じだからです。ローソンとセブンイレブンとファミリーマートの違いを言葉で説明するようなものです。
 歴史的なことや、楽器の若干の大きさの違いなどは、よく書物に書かれていますのでここでは省略します。実際に聞き手の立場での感じ方の違いを説明してみます。
 まずジャンルを大きく分けると、「浄瑠璃」と「唄」に分けられます。「浄瑠璃」というのは、物語的要素が非常に強いものです。代表は、義太夫です。文楽を見るとわかるように、義太夫というのは、物語の台本をセリフもト書きもすべて一人で語っていきます。極端な言い方をすれば、物語の朗読的なものです。セリフがふんだんに出てきます。三味線は、セリフの間を埋める効果音的な役割です。
 その路線において、ト書き(ナレーション)部分に少し音楽性を取り入れたのが常磐津です。三味線が旋律を弾き、太夫がその旋律に乗って節回しを聞かせます。しかし、多くのセリフで物語りを進行していく傾向は義太夫と同じです。
 さらに音楽的要素が進んだのが、清元です。セリフはほとんどなくなり、ナレーション部分を旋律に乗せた節回しで聞かせていきます。三味線の旋律が、物語の進行に不可欠となります。また「甲」(カン)と呼ばれる高音域を生かした節回しも生まれ、語ると同時に唄う要素が濃くなります。
 これらが「浄瑠璃」の代表的なものです。個々の演奏会で聞き比べるとかなり違いがハッキリしますが、舞踊会ではわかりにくいと思います。舞踊会では、どうしても音楽性を重視した出し物が演奏されるからです。義太夫や常磐津の中でも、特に音楽的要素の強いもの、踊り用に作られたものばかりが上演されますので、比較しにくいと思います。
 次に「唄」ですが、これは「浄瑠璃」から派生して音楽的要素をいかんなく取り入れたものです。長唄は、始めから終わりまで三味線の旋律に乗って唄います。三味線に合わせて、声の良さ、節の心地良さを聞かせます。物語性も薄くなり、名所の情景描写や風俗の描写などを唄ったものもあります。
 大和楽は新しいジャンルで、唄は女性だけの編成です。洋楽的手法をかなり取り入れ、コーラスやハミングなどもあります。また三味線も洋楽のようにパートに分かれ、それぞれ違った音を弾いたり、低音域専用の三味線を用いたりします。
 邦楽はどれも見た目が同じで、違いがわかりにくい面があります。言葉でもなかなか説明しにくいものです。実際に聞いて、雰囲気を感じてもらうのが一番です。チャンスがあれば、同じタイトルの曲を異なったジャンルで聞くとよいでしょう。例えば、「吉原雀」なら長唄と清元にあります。また「吉野山」は義太夫と清元。「屋敷娘」は長唄と常磐津。「猩々」は義太夫、長唄、常磐津。これらを聞き比べてみるとわかりやすいかも知れません。
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