10 「よもやま話」の中で、「窮屈な吹き方」とありましたが、どういう事でしょうか。
 10月12日付の内容に関することですね。三味線の糸の延び縮みによって、微妙に音程が変わるのですが、篠笛はそれに対応しなければなりません。
 篠笛は、息の入れ方(強弱や角度)によって音程が変わります。強く吹くと若干音は高くなり、弱く吹くと低くなります。また、歌口を外へ向けて口との角度を浅くすると音は高くなり、反対に歌口を内側へ向けると音は低くなります。これらの動作によって音程のズレを修正するのです。
 仮に三味線の音が下がってきた時は、歌口を内側へ向けて調節するのですが、この幅が大きいと、音量に影響が出ます。小さな音しか出なくなります。これを避けるためには、1レベル低い調子の笛に持ち替えると良いのですが、笛の高低差が半音もあると今度は逆の意味で苦労します。
 このように、自分のベストの状態で吹くことができない状態を「窮屈な吹き方」と表現しました。実際の舞台では、このような事は日常茶飯事に起こっています。この音程のズレと悪戦苦闘する毎日だす。
お祭り(天神祭、祇園祭など)でも笛を使っていますが、あれも篠笛なのですか。
 日本各地に多くのお祭りがありますが、だいたいは篠笛を使っている所が多いようです。竹に孔を開けただけの単純な構造ですので、普及しやすかったのでしょう。しかも、龍笛は宮中、能管は武士社会という手のとどきにくい存在だったことも、篠笛の普及に影響していると思われます。
 天神祭や葵祭、阿波踊りなどは篠笛を用いていますが、祇園祭は能管を使っています。京都という場所柄や祭発生の主旨に理由があるのかも知れません。私のお弟子さんにそういう事を研究している学生さんがいますが、いろいろ調べてみると面白いと思いますよ。
<div> 篠笛を使っている所でも、昔の様な単純構造の笛でなく、調律された篠笛を使う傾向にあるようです。
和楽器をされている方は、普段の生活でも着物を着ておられるのでしょうか。
 それはドラマか何かの見すぎです。先輩の方々はどうか知りませんが、私は全くそんなことはありません。カジュアルなシャツによれよれのズボンです。大好きな夏場は、Tシャツに半ズボンです。ごく普通の格好で、犬を連れて近所を歩き回っています。お弟子さんのお稽古も、自分の練習もこんな格好です。
 数年前に1度だけ、元旦に着物を着て初詣に行ったことがありましたが、それっきりです。着物は動きがある程度制限されるので、どうしても窮屈に感じますね。逆に舞台では、心身共に引き締まっていいですね。しっかりと帯を締めてきちんと正座すると、腰が安定して腹筋にも力が入ります。
 あと30年くらいしたら、普段も着物を着ているかもわかりませんが、今のところは全く普通の服装です。(ひょっとすると、他の人よりキタナイ格好をしているかも……。)
篠笛のビブラートについてお尋ねします。どんな曲に、どんな時に、どんな方法で入れるのですか。
 これは困りました。吹いている本人は、あまり意識していないと思います。と言うか、積極的に入れない方が良いと思います。私の場合も全く意識していません。腹筋を使って息を押し出す過程で、自然にそうなっている時があるかもしれませんが、本人は意図していません。
 反対に、できるだけストレートに吹こうと思っているぐらいです。あまり音を震わせるとイヤラシイですから。
 おそらく強めに大きく吹いた時などにビブラートがかかっているかもしれませんが、積極的には決してやっていません。こんなものは、練習する必要もありません。
篠笛を吹いていますが、息が続かず、曲が流れません。
 慣れるまで時間がかかりますが、次の事を参考に練習してみてください。まず1つ目は、息継ぎの仕方です。意識をお腹に集中して、息を出してください。悪い例はラジオ体操の深呼吸です。大きな口を開けて空気を吸い、ハァといっぺんに出してしまうやり方です。これはダメです。口を開けるのは少しだけにして、スッと素早く吸います。この時、お腹に空気を溜める様なイメージで行います。出すときは、腹筋に力を入れて、徐々に押し出します。腹筋を使って、お腹を動かしながらやると良いでしょう。
 2つ目は、ゆっくりと吹く練習をしてください。出しやすい音で結構ですから、ゆっくりと長く延ばす練習をします。最初は4拍、慣れてくると8拍という様に長く吹きます。この時に腹筋を使う事を忘れないでください。腹筋で押し出すイメージで、同じ音を長く延ばします。
 これらの練習は、意識の問題です。常に意識してやっていると、徐々に慣れてきます。すぐには効果はでないかもわかりませんが、これをやらない限り息継ぎはうまくなりません。こういう基本的な訓練は、地味で、面白くなくて、しんどいものです。
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