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 12      音登夢コンサート

 おなじ三味線の師匠、杵屋勝宣江氏の下で三味線を習っておられる木村直子さんのコンサートに行ってきた。場所は新生心斎橋そごうに設けられたそごう劇場。木村さんはプロのヴァイオリニスト、旦那様の木村政雄さんはチェリスト、次男の登夢くんは現在、杵屋禄宣氏に長唄を、杵屋勝宣江氏に三味線を師事、という音楽一家。木村さんご夫妻はふたりとも京都市立芸術大学卒業後、ウィーン留学を経て、京フィルに10年ほど在籍されておりました(しかも木村さんはコンミス)。 そんなおふたりが立ち上げられた音楽集団がこの「音登夢」だ。
 結論から述べます。感動した!泣いた!笑った!少人数なのにこんなにひとをこころを動かす力があるんだ、と思った。いつも大編成のオケばかりで、こういうアンサンブルのような演奏はあまり聴く機会がないので、正直どんな感じなんだろうと思っていたけど、本当にビリビリきた。木村さんのバイオリン、旦那さまのチェロ、それぞれがダイレクトに胸に響いてきた。おふたりだけのデュオによる「猫のセレナード」はほんとうに猫が鳴いてるようでかわいかった。毛を逆立てて「フーッ」って威嚇してそうなのも楽しかった。ヴァイオリンは人間の声にいちばん近い楽器って言われるだけあって、表現方法がとても豊かだ。繊細な音から大胆な音まで変幻自在でおもしろい。あと「カルメン」もおいしいところだけがぎゅっと凝縮されててすごくかっこよかった。そして日本むかしばなしでおなじみの時田富士男さんとのコラボレーション、これが最高だった。別役実氏の「なにもないねこ」というおはなしを、時田さんがあの独特の語りで読み聞かせてくれて、そのシーンごとに音登夢のメンバーがたが演奏をはさんでくれるというもの。すごく悲しくて切ないのに、最後はすこし救われて、なんだか現代社会を反映してるようなはなしだった。聴いてるうちに涙があふれてきた。まわりのひともハンカチで目をおさえていた。最後に時田さんがねこのうたを歌ってはなしが終わった。以前から時田さんは音登夢コンサートに出演されていたようだ。ちなみに「音登夢」という名前は、時田さんが木村さんご夫妻の長男「音登」くん、次男「登夢」くんをあわせて命名されたのだそうです。時田さんの背広の胸のあたりには、銀の羽根を広げた蝶々がとまっていた。女の子が髪の毛につけるクリップのようなものだと思うけど、なんだかかわいかった。
 結婚して24年になるとおっしゃっていた木村さんご夫妻、本当にあたたかくて和やかな雰囲気だった。ああいう夫婦関係になれるなら結婚もいいなとふと思った。そして登夢くんがあんなに素直なわけもおのずと納得できた。そんなわけでまた機会があれば絶対に聴きに行きたい。
 
 
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