パラシュート型アンカーによる流し釣り

パラシュート型アンカーは、荒天時の救命用シーアンカーとして1960年代に広く普及し、その後操業船の漁労設備としても使われるようになりました。それ以来、操業用パラシュート型アンカーとして船に合う形状が改良され、様々な漁業船で使用されています。
FRPで作られている小型フィッシングボートに適合するパラシュート型アンカーのサイズ(直径)は一般的に船の全長の30〜50%の範囲だと言われています。ただ、確かなデータは何もないのが現状です。

はじめに:パラシュート型アンカーの適合サイズ

1:パラシュート型アンカーの基礎知識

基本的な効果

@パラシュート(抵抗体)を使って抵抗をかけることにより、船が風に流されるスピードを遅くすることが出来ます。
Aパラシュート(抵抗体)にあたる潮流の抵抗により、船が引っ張られることで船を潮流の方向に流します。だだし風が無い場合か、風の影響よりも潮流が強い場合に限られます。
B船首からパラシュートを投入することによって、船首が風上に向くので船は安定し揺れを防ぎます。

以上のようなパラシュート型アンカーの基本的な効果を利用して、船が風に流されるスピードを調整して、釣りの仕掛けがほぼまっすぐに下りるように潮流の方向と速さに合わせて船を操ることができます。

潮流

船を流す方向

船を流す方向

潮流

2:パラシュート型アンカーによる船の流し方

<潮流が止まっている時や風と潮流の向きが同じ場合

<風と潮流の向きが逆(向かい風)の場合

曳き索を長くする(船の長さ以上)ことによってパラシュートは深く入り、船の流れるスピードを遅くします。逆に短くすると、パラシュートがしっかりと開かないために船が流されるスピードを止める抵抗力は小さくなります。

※パラシュート型アンカーによる船の流し方の基本は、潮流の方向に潮の流れよりもやや遅く船を流し、釣りの仕掛けがほぼ真っすぐに下りるようにパラシュート型アンカーで船のスピードを調整することです。

船は風によって潮流の方向と逆に押し返されることになるので、パラシュートにあたる潮流の抵抗により船を引っ張ることで、船を潮流の方向に流します。この条件でのスピードの調整は難しいです。風の強い場合にはだいぶん大きなサイズのパラシュートが必要になってきます。

<風と潮流の向きが異なる場合

風と潮流があれば船は受ける影響が強い方向に流れます。風が強ければ風下(図の@)に、潮流が強ければ潮下(図のA)にということになります。このような時は曳き索を2本取り(1本を船尾方向から出し風のベクトルと一致させます)して、船首を風上に向けて船を安定させます。


ベクトルを合わせる

@

A

<風と潮流の向きが異なる場合

船はパラシュートのあたる潮流の抵抗により、潮下の方向に流れようとしますが、風により風下にも流されようとします。この場合にも左図の@のように曳き索を2本取りして船首を風上に向けて船を安定させて潮流の方向へ流します。あとはパラシュートを操ってスピードを調整するのですが、風の影響がある場合には風で押し返される船を、潮流の方向に引っ張るだけのだいぶん大きなパラシュートが必要になります。左図のAのように流す方法もありますが、風の影響がある場合には、船は風下に対して左右に振れやすくなるため、釣りの範囲が増える利点がある一方で、流す方向やスピードコントロールが不安定になります。

※海の状況が下記のような時は、パラシュート型アンカーによる流し釣りは出来ません。

・波が高いとき
・風が強いとき
・潮流が速すぎるとき
・風下、潮下に障害物や浅瀬が間近にある場所
・流し釣り、他の魚労中の船舶の邪魔になる場所