30 | 長唄 | まかしょ |
寒参りの願人坊主を描いた、軽快な曲。ふざけた俗っぽい内容だが、曲調が軽快で、ウキウキしてくる。三味線の旋律も心地良いが、唄の節もシャレた粋なところが多い。全般にリズミカルな旋律で、演奏していて楽しくなる。 「チョボクレ」と呼ばれる独特の旋律と小鼓、大皷のリズムがとても心地良い。この旋律はいろいろな曲で使われているが、作った人は大したものだと思う。大小鼓のリズムに、「宮神楽」という太鼓と篠笛の演奏が絡んで、愉快なことこの上ない。 曲を通して、篠笛は「宮神楽」と「宮正殿」という2種類の手を吹くだけだが、それぞれの場所に合わせて、ハデに吹いたり、かすめて吹いたりとメリハリがあって面白い。 歌詞がどうこうというよりも、三味線と囃子のリズミカルな演奏を聴いてほしい。 |
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29 | 長唄 | 紀文大尽 |
セリフが多く、従来の長唄の型にはまらない曲。「紀文」とは紀国屋文左衛門のこと。曲の前半は、文左衛門が嵐を乗り越えてミカン舟の航海に成功し、大きな財を築く実績を描写。後半は、息子の二代目文左衛門が親の財産を使って、廓で豪遊する様子を描写している。「大尽」とは豪商のこと。 「早笛」の囃子で始まり、三味線の旋律で見事に海上の嵐を表現している。嵐を乗り越えたときの、達成感に満ちた頼もしい感じもよくでている。情景描写に優れた素晴らしい曲だ。 後半は一転して、二代目の放蕩ぶり。廓でのやりとりのセリフが多く、従来の長唄のイメージとは全然違う雰囲気。遊女を身請けしたり、小判をばらまいたりと散財三昧。「父は巨万の富を作り、我は巨万の富を消す」と自分で言っているのが印象的。反省しているのかと思うとそうではなく、あとは賑やかな廓遊びの描写が続く。 |
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28 | 長唄 | 雨の四季 |
昭和42年にできた新しい曲。江戸の風物を季節ごとに描いたもの。 縁日の描写がとても楽しく、ワクワクさせられる。「飴屋が唄う国づくし、備前の名産水蜜桃、紀州ぢや有田のみかん入り、津軽の名物りんご入り、台湾名代のバナナ入り、信州の名産胡麻と薄荷のすり合せ、大阪名物市岡新田、種までまっかな西瓜入り、江戸は谷中の生姜入り、常陸ぢや西山杏入り、もひとつおまけに、甲州姐さん、絞り上げたる葡萄入り、ホイまけとけそえとけ、おまけだおまけだ」 とてもリズミカルな節で、テンポよく運ぶ、気持ちのよいところ。囃子も「カンカラ」と「飴屋太鼓」で拍子をとる。ぜひ舞台で実際にお聞きいただきたい。 後半の太鼓地も橋づくしになっており、趣向の多様さに驚く。ここもハデで賑やか。篠笛を吹いていて楽しい。 最後は、「聞くだに寒き、冬の雨」で流し笛となって、余韻を残して幕になる。このあたりも古典曲にはみられない演出効果が味わえる。 |
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27 | 長唄 | 君が代 松竹梅 |
「松」、「竹」、「梅」の構成になっており、お目出度い内容の歌詞。「松竹梅」という題名は他にもあるので、区別するために歌詞の冒頭部分をとって「君が代松竹梅」と呼んでいる。 お目出度い曲にありがちな、堅苦しさがなく、明るい賑やかな曲。囃子もふんだんに入り、曲を盛り上げる。 幕が開くと、能管のヒシギで曲が始まる。荘重な「下り羽」で始まり、「楽」、「鞨鼓」と続く。「鞨鼓」の後半は三味線が切れて、囃子方だけの舞になり、荘重な雰囲気を増幅する。 次は二上りになって、「竹」の部分。ここがクドキになる。ガラッと感じが変わり、ゆったりとして艶のある旋律になる。途中で三下りになるところが、自然な転調で面白い。 華やかな合方があって、「梅」になるが、ここは賑やかでノビノビした旋律。大小鼓入りの太鼓地で、篠笛もノビノビと吹く。少し長めだが、旋律が楽しいので気にならない。最後は元の荘重な雰囲気に戻り、段切となる。 「松」、「竹」、「梅」と雰囲気を変えながらも、自然なサラリとした曲調で、良くまとまっている。囃子も多く入り、華やかな曲。 |
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26 | 長唄 | 浦 島 |
前回は「かちかち山」の話だったが、今回は「浦島太郎」。内容的には、昔話そのまま。浦島が竜宮城へ行き、玉手箱をもらって帰って来るというもの。 この篠笛を覚えるのに、少々てこずった。旋律の流れが他の曲と異なっており、運指も独特。聞いているだけではそんなに違和感はないが、吹いてみると戸惑う。しっかりと腹に入れてしまわないと、頭で考えながらでは難しい。 踊りとしては、前半は若者として踊るのだが、後半は一転して老人の踊りになる。玉手箱の中に老人の面を仕込んでおき、大太鼓の音で面を着けて変身する。衣装も「ブッ返り」で白っぽい老人の衣装に変わる。そこから、腰を曲げて老人の振りになる。 この曲で興味があるのは、大阪の山村流と京都の井上流の公演のときは一部歌詞が異なる。旋律は一般的なものと同じなのだが、歌詞だけが一部異なる。長唄は、上方の地唄から枝分かれしていった歴史があるので、この2流派のものがオリジナルであろう。現在の一般的な歌詞は、おそらく江戸で改訂されたものだろう。こういう伝統が大事に残っているのは嬉しい。 |
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