このコーナーは曲に対する考えや思いを綴っています。
独断に基づいており、客観性や学術性は全くありません。
専門的な言葉が出てきますが、あまり解説していません。
「掲示板」や「メール」でご質問くだされば、必ずお答え致します。
20 長唄 鞍馬山
 演奏会の定番曲。牛若丸が、鞍馬山で天狗を相手に武道修行をしている様子を描いた曲。内容はわかりやすい。
 勇壮な大薩摩で始まる。セリの合方があるが、非常に力強く、囃子方にとっては、「セリ」のお手本のような手がついている。これぞ「セリ」という感じで、鞍馬山全体がセリ上がってきそうな勢い。
 このあと回想の部分が少しあって、後半は天狗との立ち回りとなる。早笛や大小鼓の手がほどよく付いていて、リズムも良い。変化に富んだ良い曲調だと思うが、私には少し物足りない思いがある。もっと太鼓や能管が活躍しても良いように思うのだが、どうだろうか。
 逆に言うと、囃子の出番が必要ないくらい三味線の手がよくできている。場面描写が見事で、メリハリの効いた名曲だと思う。牛若丸や天狗の動き、チャンバラの音まで聞こえてきそうな気がする。最後も三重で盛り上げて終わる。非常によくできた曲だ。
19 長唄 都  鳥
 隅田川の情景を謳った上品な曲。元々は歌舞伎の下座音楽用に作曲されたらしいが、今では演奏会や舞踊会でよく上演される。隅田川の都鳥や情景を謳うとともに、男女の逢瀬も描写している。
 上品で綺麗な旋律。他の曲と少し趣きが異なり、三味線の手配りも粋な感じ。10分程の曲だが、前弾以外はずっと篠笛を吹きっぱなしの休憩できない曲。この曲や「松の緑」、「黒髪」など小品の方が笛方は忙しい。とにかく全編篠笛を吹く。
 唄の節回しも粋で綺麗なところが多いので、吹くのに気を遣う。結構高い音が出てくるので、メリハリはつくが、唄と衝突しすぎないように心掛けている。大きなホールで演奏するときでも、品を失わないように、お座敷で吹くような気持ちで演奏している。
18 長唄 鏡獅子
 歌舞伎や舞踊会でお馴染みの大曲。 
 初春の江戸城、鏡開きの催しに小姓が踊っているうちに、獅子の精が乗りうつってしまうという内容。本名題は「春興鏡獅子」。九代目団十郎が、娘の踊っている「枕獅子」を見て、アレンジしたという話は有名。それゆえ歌詞は「枕獅子」とそっくり。
 曲が始まると老女と奥女中に手をひかれて、小姓弥生が登場する。このときは「下り羽」という囃子。この後が「川崎音頭」の長い篠笛。ゆっくりとしたノリで、心地良い旋律。三味線だけでなく、唄の節回しにも合わせて吹く。こうした「音頭」は、ゆったりとした流れの波に乗せて吹くことが肝要。笛が目立ってはダメだと思う。心地良い流れを大切にする。ここの歌詞は化粧道具づくしになっており、題名の「鏡」にも通ずる。
 しばらくあって、「恨みかこつもな〜」からは、太鼓地だが笛は入れない。どうしてだろうか。陽気な手踊りになるので篠笛が合うと思うのだが。
 前半は女形の踊りだが、後半は勇ましい獅子となって男性の踊り。これを1人で踊り分けるところに、この曲の難しさがある。
 大薩摩の後、乱序で花道から獅子が登場する。七三まで来たところで、後退して一旦鳥屋口に戻る。花道を後ろ向きに一気に後退するので、ハラハラさせられる。再び出てきて今度は本舞台へ。狂い五段のあと髪洗いもあって、力強い踊り。曲のノリも速くなり、最高に盛り上がる。
 この曲では、前半の「川崎音頭」が一番難しいと思う。流れに乗りながらも、単調にならないようにする。と言って、でしゃばらない。このバランスが難しい。
17 義太夫 団子売り
 団子売りの夫婦を描いた、軽快な曲。15分くらいの簡単な曲だが、疲れているときには、なかなか辛い。全曲吹きっぱなしなのだ。クドキがない。
 幕開きは通り神楽。すぐに出の通り神楽があって、正殿になる。居直りにまた通り神楽があって、そのまま仕度ができるまでツナグ。この後、キリンや田舎笛、宮正殿などが続き、また通り神楽になる。とにかく休む暇なく吹き続ける。
 内容的には別段たいしたものではない。夫婦の団子売りが登場して、杵と臼で仲良く団子を搗く。少し所作事があって、また荷を担いで去って行く。ハデで軽快な踊りで、わかりやすく楽しめる。
 早い時間帯は良いのだが、夕方を過ぎて疲れた頃に演奏すると、よけいに疲れる。陰囃子だし、賑やかな曲なのでかなり大きな音で吹く。この調子で全曲吹き続けると、結構疲れる。観客は退屈せずに楽しめるが、こちらは辛い。
16 長唄 五  郎
 曽我五郎時到が、化粧坂の少将のところへ廓通いをするというもの。舞踊の場合は、五郎が傘をさしており、「雨の五郎」という題名にすることが多い。
 変化のある旋律がコンパクトにまとまっており、退屈しない曲。
 勇壮な置唄で始まり、力強いセリの合方。五郎の勇ましさ、力強さを彷彿させる。クドキっぽい歌詞があって、二上りになると私の好きな太鼓地。「藪の鶯〜」の太鼓地は華やかかつ軽快で素晴らしいと思う。太鼓地の中に大小鼓も入り、一層ハデになる。私はこういうタイプの太鼓地が好きで、太鼓と大小鼓が取り合いになっていると笛を吹いていても楽しい。曲にもメリハリがつき、聞いていても面白い。
 後半は、能管、太鼓、小鼓、大皷で力強くサラシの手を演奏し、また五郎らしさが戻る。いろいろと変化をつけながらもコンパクトにまとまっていて、初心者でも充分に楽しめる曲である。
ご意見はこちらまで