習字を教えていて、ひとつの口癖ができた。
うまい字は書かなくていいです。手本とそっくりの字を書きなさい。
手本とそっくりなら、もちろんうまい字である。しかし、世の中には、書道家というのがいて、実に個性的な字を書かれている。そして、うまい、といわれる。 ただ、小学校の習字はプロが書くような字を書かせるのが目的ではない。
芸事でいえば、「守・破・離」の「守」の部分を学校では教えるのだ。
将棋なら定石を覚えること。空手なら基本技からである。
そして、小学校の学習というのは、根本的に「守」なのである。
それゆえ、学習は「素直」な子ほど、成果が高いのである。
習字の場合もそうだ。
4年・5年・6年と教えていて、ちょっと反抗的な5年より、素直な4年生の方が、手本をよく見て、丁寧な字を書いている。
「言われた通りさせる」
ということが、小学校教育では、徹底するほどに、大切にしていかなければいけないのである。
(1998.11.9)