では、実際の授業です。
1)地図帳調べ(鈴鹿サーキット→まつたけの絵2つ→田原)
2)田原港の写真を見せ、「日本は世界一の自動車輸出国」であることをおさえる。
3)約4000台の車をどうやって船に乗せるか予想させる。
(乗って運ぶ。ラジコンで動かす。機械で持ち上げる。など)
4)ドライバーが運転して船に積んでいくことを資料から見つけさせる。
5)田原港が太平洋ベルトにあることを確認する。 板書:太平洋ベルト
6)「日本の自動車の生産台数と輸出台数のうつり変わり」から、気付いたこと・分かったこと・思ったこと、または調べたことを書かせる。(3つで持ってくる、5つで5年生レベル、7つで6年、10こで中学レベル)
7)板書しなかった子に1つずつ気付きを発表させる。(しっかり聴かせる。)
8)板書のものを発表させながら、問答していく。
問答は、くり返す内に、教師(私)の対応がうまくなっていくのを感じます。以前、野口芳宏先生が「教師の受けの技術について書いた本がない」ということを言われていました。でも、マルチ発問で板書させ、その板書された意見から問答していくことで、教師の受けの技術が鍛えられるように思います。
次の本は、この受けの技術(問答)をテーマに書いてみたいです。
・輸出台数は生産台数の半分ぐらい。(東)→確かにそうなってますね。
・2000年の生産台数は約1000万台ある。(岩井)
岩井さんの発言の後、「正確に何万台か分かる人?」と全体に聞くと、東くんが「1014万台。」と答えました。他の子は、何で分かるんだろう、という顔をしています。「何で分かるのか分かる人?」と問うと、数人が手をあげました。
実は、資料集に右のようなグラフが載っているのです。
こういう問答を通して、資料集を見ておく必要性を教えているのです。
・1960年がどっちともへっている。(西野)→少ないと言うんだね。
・1960年の時は車が高く(?)生産量も少なかったので買う人もあまりいない。(金谷)→調べたの?(首を振る)グラフから推理しているところがすごいですね。
・形ががたがた(広田)→全体的な形を見るのは大事です。
・1985年は、輸出台数がいちばん多い。(濱家)
濱家さんが言った後、「一番を見つけるのがいいですね。」とほめた後、「えっ1990年ちゃうん」というつぶやきが耳に入りました。「よく見て。生産台数の1番が1995年で、輸出台数の1番は1985年なんだよ。こういうのがテストに出ると、みんなひっかかって間違えるんだね。」
子どもの反応というか、納得してない時の雰囲気というのは、何となく感じられるものです。そこをキャッチすることが必要なのです。(なかなかできないで、スルーしてしまうことも多いのですが。)
・90年の次からへっている(桂)
桂さんの発言をグラフで確認した後、「このことを書いた人?」と聞くと、10人ぐらいの子が手を挙げました。「このグラフでは、ここのガクンと下がったところに目をつけることが大事です。これを見つけた人は、グラフの見方が分かっている人ですよ。」
ここまでもちあげてほめるのも、桂さんが4年の時、しょっちゅう教室を飛び出していたような子だからです。
学力の低い子、問題を抱えている子でも、気付きを3つ書いて持ってくることはできます。資料で調べたことは書けなくても、グラフのパッと見た感じは書けるのです。3つの気付きの中から、取り上げてほめられそうなものを1つ選び、それを板書させるといいわけです。
・1990年がいっきにふえている。(上土谷)
・へったりふえたりしてる(川上)
・1990年は生産台数が多い(上田)
・生産台数は、1990年が一番多い。(脇坂)
・日本は、生産はいっぱいしてるけど、輸出は生産にくらべてすくない(山南)
・かいだんの形になってる(多田)
・1995~2002までほとんどかわらない(馬越)→何でだろう?
・日本の輸出がふえている。(高子)
・1995年からは生産台数がかわらない。(真鍋)→何でだろう?
・昔は生産台数が少ないけど今では生産台数がふえている(六車)
・90年の次からへっている(山城)
一部の対応は省略しました。
山城くんの「90年の次からへっている」を最後に読ませたのは、この問題を中心問題として考えさせたかったからです。(黒板の左端の意見と右端の意見をパッと見て、最後に扱いたい方とは逆から読ませていくのです。)
9)「1990年から生産台数が減っているのはなぜだろう?」予想を言わせる。
10)車がハンマーで壊されている写真を見せ、アメリカで日本車を輸入しないぞ、ということが1990年代にあったことを語る。
11)そこで現地生産方式が採用されるようになったことも資料を見せながら話す。
12)板書:現地生産
13)「生産台数の中に、現地生産の分が含まれるのでしょうか。」を挙手で問う。
14)「証拠が資料集の中にあるから探してごらん。」(これは見つけられない。)
15)現地生産が増えているグラフを示し、現地生産が増えているのに、生産台数が増えていないのは、生産台数に現地生産が入ってないことになることを話す。
⑬~⑮は、子どものレベルが上がってないと、盛り上がらないようです。
(2007.10.31)