フィンランドの国語教科書

 メルヴィ・バレ他『フィンランド・メソッド 5つの基本が学べるフィンランド国語教科書 小学3年生』(経済界2006.5.5)より、発問をピックアップしていきます。

Ⅰ‐①今度の先生はきびしいのではないかと、こわがっているのはだれですか。つぎの書き出しに続くように書きなさい。
「こわがっているのは……」

 一番初めの発問です。答えは1つなのですが、答えの書き方をアウトラインで示しているところがすごいです。解答の書き方を教えているわけです。

Ⅰ‐⑤サーラは、この日の授業について、どういうふうに家で話すと思いますか。
  ⑥この話の中から、固有名詞をすべて書き出しなさい。

 ⑤も⑥もマルチ発問です。⑤は、物語の内容に合っていれば、何を書いても正解になります。⑥は、「すべて」ですから全て見つけて正解となります。

Ⅱ‐⑤カウノ先生は、この日の授業について、どういうふうに奥さんに話すと思いますか。

 Ⅰ‐⑤の発問に似ています。物語の内容を要約して捉えてないと答えられない問いでもあります。
 子どもに要約力も求めているのかもしれませんね。

すいせん図書‐①ここであげられた登場人物の中で、先生はだれだと思いますか。そう思った理由も答えなさい。
⑦本の表紙の中で、いちばん登場人物のことがよくわかるのはどれですか。

 3冊の本の紹介があります。あらすじ紹介の後に、上記のような発問がついているのです。①は本の中身を想像させるための発問なのでしょう。⑦では、本の表紙までも着目させているわけです。

物語「カラスとじょうろ」
⑥この物語のカラスは、どのような登場人物ですか。下のことばから当てはまるものをすべてえらびなさい。または、自分で適当なことばを考えなさい。そして、次の例をさんこうにして書きなさい。
[例]「カラスは(きおく力がよく)て、(がまんづよい)です。」
 しんちょう 頭がよい いろいろなことを思いつく おくびょう
 かしこい のんびりしている がまんづよい まぬけ なまけもの
 きおく力がよい せっかち
⑧この物語のはじめから終わりまで、どのくらいの時間がかかったと思いますか。下のことばからえらぶか、自分で考えなさい。
(数分間 ほぼ1日 1週間くらい 1時間くらい 1か月くらい 数時間)
⑪自分で書いた物語をパントマイムげきにしましょう。または、かげ絵げきにしましょう。

 ⑥の「どのような登場人物ですか」に答えるのは、6年生でも難しいでしょう。上記のように、当てはまるような言葉をあげて、そこから選ばせるという手法がとてもよく考えられています。
 ⑧のように時間の経過を問う発問は、秀逸です。
 ⑪は、お国柄でしょうね。真似したくはないです。
 フィンランドの国語教科書は、教科書の中に発問が載っています。ということは、親子で一緒にこの発問を考えているということも想定できます。ゲームもなく、冬は夜が長いといいます。親子で学ぶという習慣ができているのかもしれません。授業として、これらの発問をどう扱うかを見てみたいです。

(2006.10.8)