童門冬二『「人望力」の条件』(講談社2002.7.20)より。
黒田如水は、忠臣をそばに近づけない息子の長政をこのままにしておけないと思った。そこで、あるときに助言をして、「腹を立てない会をつくれ」と命じた。
「腹を立てない会」とは、如水に言わせると、「毎月日を決めて、何回か会議を開く。その会には、だれが出席してもいい。そして、どんなことをいってもいい。しかし、いわれた相手は、絶対にその会では腹を立てないという会だ。思いきった意見が飛びかって、さぞかし黒田家の発展のために役に立つだろう」という会です。この会によって、諫言に耳を傾ける機会を作ったのです。
この会が始まって、しばらくしてから如水が長政に言ったことが大事です。
「部下の意見はあくまでも意見だ。この中から何を選び、どういう行動をするかを決めるのは、おまえだ。つまり、部下には意見をいう権利はあっても、物事を決定する権利はない。決定者はおまえ一人だ。このへんをよくわきまえていないと、優柔不断なトップリーダーになってしまう。そこを気をつけろ」(P.245)
たくさんの意見を聞き、でも、それらの意見から1つを採用するのは、指導者の責任なのです。授業においても、学級経営においても、最終的に教師が責任者として、物事を決定していかなければいけません。
マルチがあって、そしてセレクトがあるのです。
(2006.10.22)