『エコノミスト2011.11.1』(毎日新聞社)の「問答無用」で、宗教学者の山折哲雄氏が、インタビューを受けていました。
イエス・キリストの活動した地域を回ったのですが、驚きました。イエスが少年時代を送ったナザレ、伝道活動をしたガリラヤ湖、洗礼を受けたヨルダン川を旅して、目に飛び込んできたのは砂漠、砂漠、砂漠……。最後に訪問した聖都エルサレムは砂漠的廃墟の上に建てられた都市にしか見えませんでした。
この旅を通して感じたのは、そこでは地上には頼るべきものが何一つないということでした。天上の彼方に唯一価値あるもの、絶対的な神を想定せざるを得なかった砂漠の民の精神的な願望というものが、理屈を超えて胸に迫ってきました。それは一神教が成立する風土的背景とでもいいましょうか。
帰国して日本の緑豊かな自然に目が洗われました。変幻極まりない自然を持つ日本で八百万の神々が生まれ崇拝され続けるのは、ごく自然なことだったでしょう。
一神教が成立したのは、砂漠ゆえだというのです。
考えてみれば、砂漠は自然を破壊することによって成立します。自然に対する畏敬の念がないからこそ、森の木を全て伐採し、草原を焼き払うことにためらいがないのでしょう。
自然と共存するゆえに、日本に一神教はなじまないのです。
(2011.10.25)