真水でタイを飼う

 童門冬二『大人のための人生論』(五月書房2004)に、「真水でタイを飼う」話が載っています。学級を変革するためにヒントとなります。
「真水でこのタイを飼ってみよう」と、松平頼恕という殿様が家来に提案しました。その時、家老が次のように答えたのです。

「殿、タイは海の魚でございます。しかも、大変敏感な魚なので、同じ海水でも、水の質、あるいは温度などによって死ぬ場合もございます。この池で飼うのもなかなかむずかしゅうございます。番人が苦労しております。それを、真水で飼おうなどというのはまったく海の性格を無視するものでございましょう」

 これは、やる前から無理だと決めつけている発言です。
 それに対して頼恕は、

「どうだろう、毎日桶に一杯ずつこの池の水を汲み出そう。そして、その分だけ真水をそそぎこんでみては」

 海水の池の水を桶一杯分だけ真水と交換するわけです。

「桶一杯ずつの水の変化なら、タイもそれほど気がつくまい。やがては、池の水を真水に全部替えても、あるいは生きているかもしれないぞ。実験してみよう」

 この実験成功します。真水の中でもタイは生きているのです。
 学級を変えるのも、真水を毎日毎日一杯ずつ注ぎ込んでいくようなものです。(2008.6.9)