小阪裕司『「感性」のマーケティング~心と行動を読み解き、顧客をつかむ』(PHPビジネス新書2006.12.4)を読んでいます。
「売る」という行為は、教師の「教える」に近いところがあります。
いくら売りたくても、お客が買いたいと思わなければ、それは売れません。
いくら教えたくても、子どもが学びたいと思わなければ、不十分にしか教えられません。
「売る」という行為のうまい方法は、教育の方法にも役立つと考えるのです。
そうすると、ここが案外重要なのだが、「買う」というのは人間の行動なのだから、先ほどの酒屋でいうと、考えるべきことは「このお酒をどう売ろうかな」ではなくて、「このお酒を『買う』という『行動』をお客さんにしてもらうためには、何をしなければいけないか」ということだ。
「買うという行動」というのはまだピンとこないかもしれないが、例えば先ほどの酒屋でいえば、彼の店まで車に乗って行く、これは人間の行動だ。これはお酒を売りたい側にとっては大切なお客さんの行動で、なぜなら店まで来てくれないと買ってもらえないからだ。それから、駐車場に車を止めて、車から降りて店に入る、これも行動だ。そこまでお客さんが、せっかく店の前まで来てくれたのだが、気が変わってしまってそこで帰ってしまったら、売れない。だから、当然店内にもちゃんと入ってきてもらわないといけない。
店内に入ってきたお客さんが今度はこのお酒を買ってくれるかどうか、これも微妙だ。そのお客さんがその日本酒を買いに来てくれたのなら別だが、別の商品、例えばビールを買いに来たお客さんであるなら、ビールだけ買って帰ってしまう可能性は高い。そんなお客さんにこの銘柄を売りたいと思ったら、その商品が置いてある棚まで歩いてきてもらわないといけない。歩いてきてもらって、その棚の前で足を止めて、その商品に目をとめて、手に取って、考えて、決断して、レジに持ってくる。そこまで行動していただかなければ、自分が売りたいと思っているその商品は売れないわけだ。
そしてこれらはすべて人間の行動だ
そうすると、これらの「買う」という行動のステップの一つひとつを、どうすればお客さんにしてもらえるのかと考えて、そのために必要なことをやる。これは「この商品をどう売ろうか」と考えるのとは大きく異なるのである。
子どもが「学ぶ」というのも行動です。それを細分化して考えないといけないのです。まず学ぶためには、学校に来なければいけません。また、勉強道具も持ってこないといけません。チャイムがなったら自分の席にすわり、教科書やノートを用意して準備しないといけません。それから、先生の話すことに耳を傾け、言っていることを理解して行動しないといけないのです。
その一つ一つの行動について考えていく必要がありそうですね。
(2007.12.8)