戦火の教科書

 大江浩光編著『「学級崩壊」の授業~道徳自作資料と学級経営で勝負~』(明治図書)に載っている「戦火の教科書」という授業を来週の学習参観でしようと思っています。
 微妙に発問も変え、付け足しもするつもりです。

発問1 あなたの夢は、何ですか。
発問2 その夢がかなう可能性は、何%ぐらいですか。
発問3 なぜ、100%ではないのですか。
発問4(追加発問)夢がかなう可能性がほとんどない、0%に近い国の人達がいます。どんな国の人たちですか。
説明1 日本からそう遠くないところに、カンボジアという国があります。
    昔、カンボジアで戦争が起こりました。戦争では鉄砲や爆弾、刀、地雷などのいろいろな武器が使われ、多くの人が傷ついたり、
    死んだりしました。
発問5 多くの人たちが戦争で死なないように、今住んでいる場所から、遠くの安全な国や場所に逃げ出したそうです。
    その時、三つの物を持って逃げたそうです。
    その三つの物とは、何でしょうか。
説明2 正解は、お米と鍋とくわでした。
発問6 お米は、何のために持っていくのでしょうか。
説明3 お米は、食べ物として持っていきました。
発問7 鍋は、何のために持っていくのでしょうか。
説明4 鍋は調理をするために持っていきました。
発問8 くわは、何のために持っていくのでしょうか。
説明5 くわは畑や田を作るためではありません。銃撃戦に巻き込まれた時、鉄砲の弾が当たらないように地面に穴を掘るために使います。
発問9 カンニーさんという女の人もこの戦争に巻き込まれました。
    (カンニーさんの絵を提示。)
    カンニーさんも逃げる時にある三つの物を持っていきました。
(修正)お米でも鍋でもくわでもありません。
    カンニーさんの持って逃げた三つの物とは、何でしょうか。
説明6 一つ目は、ある教科書です。二つ目は、英語の辞書です。三つ目は、フランス語の辞書です。
発問10 カンニーさんには、将来あるものになりたい夢がありました。
    何になりたかったのでしょうか。
説明7 それは、看護婦です。
(追加)カンニーさんが持っていた教科書は、看護婦になるための教科書だったのです。
    多分、英語やフランス語で書かれてあったのでしょうね。
発問11 カンニーさんは、看護婦になれたでしょうか。
    なれた、と思う人は、手をあげましょう。
説明8 そうなれたのです。(看護婦姿の絵を提示する。)
発問12 カンニーさんは、なぜ看護婦になれたのでしょうか。

 この後、あいちゃんの写真を提示して、メイク・ア・ウィッシュの授業につなげてもいいかな、とも思っています。
 夢をかなえることと、夢をかなえるお手伝いをすること、どちらもすばらしいことであることを教えたいのです。

 あいちゃんです。あいちゃんの夢は、ガラパゴスに行くことです。
 でも、あいちゃんには足りないものがあったのです。
 漢字二文字です。

 時間が足りないあいちゃん、そして、明日という時間が保障されていないカンニーさん。でも、その中でも、自分の夢をしっかり持って生きています。
 有り余る時間をもてあまして、夢もなく生きるよりいいのかもしれません。

(2003.2.21)

 大江浩光編著『「学級崩壊」の授業~道徳自作資料と学級経営で勝負~』(明治図書)に載っている「戦火の教科書」の授業を再追試しました。以前追試したのは、2003年の2月の学習参観(5年生)でした。(考現学P.2580~2582)
 今回、多少展開を変えて、授業しました。

①板書:ランプ(魔法のランプ)
②「どんな夢でもかなえてくれると言われたら何を言いますか。」
 (1分間の時間制限でノートに書かせる。)→数名発表。
③「魔法のランプがなかったら、あなたの夢がかなう可能性は何%ですか。」
④100%の人と0%の人に発表させる。

 100%の子はいないかなと思ったら5人もいました。

・お父さんのじん臓をなおしてほしい(古川)  ・おかしの家へ行く(大杉)
・おかしがいっぱいほしい。(小西)      ・身長をのばす(山本)
・スパイクがほしい。(石田)

 古川くんの夢は、少し重いものでした。
 0%の子も5人いました。

・かこにもどりたい。(早川) 
・アレルギーが全部ないようにしてもらう。(田中)
・何回でもねがいごとをかなえるようにもっとランプをだしてもらう。(舩倉)
・地球が超新星ばくはつをおこさないようにした。(平瀬)
・ホワイトタイガーがほしい。(小島)

 この後、「自分の夢をかなえる可能性が100%ではないのはなぜですか。」という発問をする予定でしたが、やめました。難しいかなと感じたからです。

⑤カンボジアで昔あった内戦の話をする。
⑥「カンボジアの人たちは、戦争で死なないように、安全なところへ逃げることにしました。その時、持って行った3つの物があります。予想して書きましょう。」

 全員に板書させました。

・水・食料・金(藤本・阿河・小西・高木・奥原・中野・上田・桂・糸井・舩倉・大杉・神谷・山本・)
・水・食料・ぶき(古川)     ・水・食料・かたみ(高島)
・水・食料・タネ(乾)      ・水・食料・くわ(田中)
・水・食べ物・おの(小島)    ・水・種・クワ(荒田・久田)
・飲み物・食べ物・お金(石田)  ・おの・土・たね(宮田)

 クワが出てくるのは、カンボジアが農業国で米を作っていたことを私が事前に話していたことを受けているからでしょう。(意図して言っているのですが。)
 同じ意見を言わせながらも、時々、「食料って何?」「なんで種がいるの?」とか「クワは何に使うの?」とか聞いていきました。クワは、田を耕すか武器として使うそうです。(つづく…5000ページ達成しました!)

(2007.12.13)

 1万ページに向けてスタートです。

⑦正解の「米・鍋・くわ」を告げた後、くわの使い方を考えさせる。
 (米は食料。鍋は調理。くわは避難する穴をほるため。)
⑧「カメラマンの中尾豊さんが、カンボジアでカンニーさんという女の人に会いました。カンニーさんは、他の人とは全く違う物を持って逃げていました。」
⑨カンニーさんの持って逃げた3つの物を予想させ発表させる。

 服・カメラ・ラジオ・武器・薬・スコップなどの予想が出ました。全部×です。

⑩正解の「①ある教科書 ②英語の教科書 ③フランスの教科書」を告げる。
⑪「カンニーさんは将来看護婦さんになりたかったのです。①のある教科書は看護婦になるための教科書だったのです。」
⑫「カンニーさんは、看護婦さんになれたと思いますか。」挙手半々。
⑬中尾豊さんが数年後カンボジアに行った時、カンニーさんの看護婦姿を見たことを話す。
⑭「夢をかなえるためには何が必要でしょうか。」

 ノートに3つ書かせて持ってこさせ、板書させてから発表させて授業を終えました。最後の発問は以前していませんでした。
文章ではなく単語で書く子が多く、あっという間にノートを持ってきました。

・がまんする(乾)      ・努力(神谷)        ・仕事(高木)
・あきらめないこと(川端)  ・努力(小島)        ・気持ち(酒井)
・ふだんの行い(石田)    ・脳(三宅)         ・気持ち(桂)
・ねがっとく(上田)     ・あきらめない気持ち(阿河)
・必要な道具(荒田)     ・あきらめない思い(浮島)  ・気持ち(石丸)
・あきらめないこと(山本)  ・できると信じること(宮田) ・お金(糸井)
・夢をかなえたい気持ち(舩倉)・本(高島)         ・どりょく(大杉)
・教科書(早川)       ・頭脳(古川)        ・やる気(平瀬)  ・勉強(中野)
・勇気(久田)        ・マイペース(中)      ・気持ち(小西)  ・頭脳(藤本)
・人に親切にする(田中)   ・金(奥原)

 本来なら、それぞれがなぜ大切なのかを理由や具体例をあげて語れないといけないのです。そうでないと、たんに言葉だけになります。
 何かを主張した時に、その理由や具体例を語れる、それが大事です。そうできないのであれば、それは思いこみや独断でしかないのですから。
☆ ☆
 日刊考現学を書き始めたのが1998年1月1日です。
 5000ページに達成したのが、2007年12月13日です。
9年と11か月と13日間ですから、約10年間です。5000頁の量よりも、10年間毎日書き続けられたことがえらいと自分をほめておきます。

(2007.12.14)