薬の援助が起こす問題

 世界で一番いのちの短い国「シエラレオネ共和国」の授業の原実践をされたのは、TOSS岡山サークルマックの藤原能成氏です。
 昨日、山本敏晴著『世界で一番いのちの短い国~シエラレオネの国境なき医師団~』(白水社2002.11.5)を買いました。山本敏晴氏のすべての書籍は、国際協力の世界を読者に知ってもらうために刊行されており、印税・原稿料はいっさい受け取っていないそうです。この本の利益が、国際協力の寄付にまかなわれるかどうかは、書いていません。
 さて、薬の援助がいいことにはならない理由が書いてある記述を引用します。

 つまり難民たちはお金に困ると、NGO系の病院に来て「熱がある、咳がでる」とウソをつき、患者のふりをして薬をタダでもらい、それを町で売って生活しているのである。
 こうして医薬品が、地域社会にお金の代わりに簡単に出まわっていることは、決していいことではない。なぜかというと、一つは医学知識のない人が薬を簡単に手に入れると、それを必要以上に飲みすぎて、生命の危険にさらされることがあるからだ。さらには、地域社会の病原体が簡単に出まわる薬に対して急速に耐性化していくことがあげられる。
 たとえば、肺炎を治すための抗生物質は、正しい飲み方をしないと、病原体のほうがそれに抵抗力をもってしまう。抗生物質というものは、一般に一日二~三回、四日から一週間だけ服用するのが正しい飲み方だ。これが短すぎても、長すぎても病原体は耐性化してしまう。 (P.121~122)

 このため、肺炎を治すための薬が、病原体の耐性化によって、役に立たなくなってしまいます。そうすると、より効果の高い薬が必要になります。より効果の高い薬は、値段も2倍、3倍します。その少し高い薬もまた出回り、効果がなくなり、さらに高い薬が必要となってきます。

 MSFをはじめとするNGOの予算には限りがある。サルファ剤を百個買うお金で、ようやく第三世代セフェムを一個買えるぐらいなのだが、現在のシエラレオネでは、しかたなくこうした高額の薬を使わなければならない現状にある。このため、予算の関係で助けられる患者の数は制限されており、すべての人を救うことはできない。
 このように最悪の事態が生じてしまった主な責任は、ウソをついて薬を買いにくる難民たち自身ではなく、簡単に薬が手に入るように「ばらまいて」いる、われわれ援助団体にある。         (P.122~123)

(2005.11.6)