学力研ニュース6月号の原稿です。
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小学校を卒業するまでに、全員が25m泳げるようにする。
水泳指導をするうえで、いつも念頭に置いていることです。
大阪では、6月中旬から水泳指導が始まります。雨が降ることもあるので、水泳指導にとれるのは10時間程度です。(地域によって当然違ってきます。)
5年前に担任した4年生の最初の記録を見ると、次のようでした。
3m…1人 5m…2人 6m…2人 7m…1人 8m…2人
9m…2人 12m…1人 13m…1人 25m…8人
まとめてみると、次のようになります。
10m未満…10人 10~15m…2人 25m…8人
これが学力であれば、すごい格差です。このとき、欠席が1人、見学が2人いました。水泳が苦手な子ほど、見学する場合が多いのが現状です。
少ない指導時数、子どもたちの泳力格差などの問題をかかえながら、水泳指導をしていかなくてはいけません。
一、楽しい活動を必ず取り入れる。
学年に合わせ、安全に考慮しながら、楽しい活動を必ず取り入れるようにします。なぜか、まずは、水泳の授業に子どもが参加しなければ始まらないからです。泳ぐのが苦手な子が、「プールの時間が楽しみ」と思わせ、とにかく授業に参加させなくてはいけません。
私の場合は、プールの外周を歩いたり泳いだりさせる洗濯機をします。水流が速くなったところで、「反対回り」をさせると、子どもたちはキャーキャー喜びます。あと、自由時間を1,2回取り入れ、ビーチボールなども使わせ、楽しく遊ばせています。
二、25mを泳ぎ切る体感を味わせる。
跳び箱を跳べない子、逆立ちができない子、竹馬が乗れない子の共通する点は、一つです。できたときの体感がないのです。
まずはできたときの体感を味わせる指導をしていくのです。
25mを泳ぎ切る体感を味わせる最強の教具は、ヘルパーです。
できれば、ワンタッチで腰につけられるものがいいです。購入が無理なら、発泡スチロールに紐をつけて作ることもできます。
昨年の6年6月の水泳指導の記録が残っていたので、次に紹介します。
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●プールが始まって、昨日で計4回目です。
1回目は、1年生と一緒に入ったり、測定をしたりして終わりました。
2回目は、途中から2つのグループに分けました。
私は、25m泳げない子を担当。早速、腰にヘルパーをつけさせ、25mのコースを足がつくまで泳がせました。
3回目は、着衣泳で、2グループに分けるのはありませんでした。
そして昨日の4回目で、2回目の2グループ分けとなりました。
ヘルパーありで25mが3回泳げた子から、ヘルパーなしで泳がせました。
すると、どんどん25m泳げるようになっていくのでした。
私はプールの中に入り、子どもたちに声をかけます。
「あと7m。あと6m、5m、4m、あと3m……。」
今まで25m泳げたことのなかった子が、10人近く泳げるようになりました。
だいたいがもともと10~20m泳げてたので、全く泳げない状態からではありません。
でもヘルパーは、浮くことによって、25m分の距離感や、呼吸の仕方なんかを学ばせてくれます。
泳ぎ方の指導をしなくても、ヘルパーが勝手に子どもを助けてくれるのです。
この日、初めて25m泳げた子の書いた日記です。
プール 6月27日 田上(仮名)
今日の5時間目にプールがありました。今日は、5年間の目標がかなった日でした。25m泳げました。みんなにとっては普通かもしれませんが、私にとってはすごくがんばりました。本当にうれしかったです。
今日は、風が強くて、すごく暑くて大変でした。シャワーをあびるといつもふるえるのですが、今日はすごく気持ち良かったです。プールに入って、もぐったり浮いたり、クロールや背泳ぎなどをして、レベル別に分かれて練習を始めました。去年は、私と同じレベル別のクラスだった川島さんは、25m以上泳げるようになったらしく、すごい練習したんだと思いました。何回か泳いでいても、足がついたり、息が苦しかったりして泳げませんでしたが、最後のときにすごいがんばって、25m泳げました。その時は、「やったぁ泳げた。25m泳げた」と思って、本当にうれしかったです。
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ビート板では、こうはいきません。25m全員完泳のため、ぜひ、ヘルパーをお使いください。
三、うそでも成功体験を味わせる。
25m泳げたことは、子どもにとって、大きな自信になります。ヘルパーで練習したけれど、なかなか25m泳げない子も出てきます。
そんなときは、教師が子どもの進行方向に立って励ましながら、水の流れを子どもの泳ぐ方向につくってあげます。
泳げた体験が子どもを変えるのです。
(2012.5.26)