川島先生の講演から、痴呆に関する部分をテープ起こししてみます。
音読や計算で脳が活性化するという事実に基づいて、私たちは高齢者の研究も今、取り組んでいます。
実際に、痴呆症になってしまった高齢者の方々に、音読や計算を毎日くり返してもらう、ということで、前頭前野が蘇ってはこないか、というテストを2年以上もやっています。
何でそんなことをしているかというと、これはまさに、子ども達に音読や計算をくり返してやると、子ども達の脳が大いに伸びるということを証明するためにやっています。
先ほど言ったように、子どもを直接対象にすると、様々な外来要因で、何で脳が発達したかということを見つけ出すことが難しくなりますから、そういう意味で、一番モデルになりやすいのは、痴呆症になっていて、施設に入っている高齢者の方々です。
彼らは施設に入っていますから、何をやっているかというのは、全部記録が残っています。さらに痴呆症になってしまいますと、不幸なことに、日々毎日、脳の働きが落ちていく、ということが、医学的には証明されています。
ですから、こういった方々を対象に介入を行って、音読や計算の介入で、
脳の働きがよくなって、痴呆症状もよくなってくれば、これは我々の脳に、確かに基礎的な学力をつけるトレーニングをすることで、いい働きがあるということを証明できる、というように思ったわけです。
で、その時の様子は、去年の6月に、NHKの全国ニュースの方で放送になったんで、少し見ていただきたいんですけど。
わずか1分30秒で、これだけの話を川島先生はしています。
まだ続きはあるのですが、私が疲れました。
ここまで書いて、川島先生の本の中にも、痴呆症に関する記述があったはずだということに気付きました。
まずは、『脳を育て、夢をかなえる』(くもん出版)2003.7.23より。
みなさんは、「痴呆症」ということばを聞いたことがありますか?脳の働きが悪くなってしまう病気の一つです。いろいろな原因があって、八十歳や九十歳といった高齢になると、足のけがでたった一週間動けなかった、というようなちょっとしたことでも、痴呆症になってしまうことがあります。
痴呆症になると、昔のことは思いだせるのに、今しがたやったことは思いだせなくなったりします。ひどいときには、ごはんを食べたかどうかさえ、忘れてしまうのです。顔を見ても、それがだれなのか、自分が今、どこにいるのかなどもわからなくなったり、まるで赤ちゃんみたいに、身の回りのことを、自分でできなくなったりすることもあります。
わたしは、痴呆症が世の中からなくなればよいのに、と思っています。みなさんだって、大好きなおじいさんやおばあさんが、あなたの顔を見ても、だれだかわからなくなったりしたら、すごく悲しいでしょう。
わたしは、痴呆症になってしまったおじいさんやおばあさんに、計算と音読の学習をしてもらうことにしました。痴呆症になってうしなわれるいろいろな能力は、前頭前野の働きによるものが多いので、計算や音読が前頭前野をきたえることになるなら、状態がきっとよくなるはずです。
この後、実験の様子と結果が書かれています。
計算や音読によって、この世から痴呆症を無くすことができれば、こんなにすばらしいことはありません。
上記の本には、おばあちゃんが学習している写真と、学習前と学習後のFAB検査の結果グラフ、光トポグラフィーによる学習前と学習から3ヶ月後の前頭前野の写真が、載っています。
今度作る授業で、使えそうです。
何よりも、映像がダイレクトでいいのですが。
(2003.11.16)