覚える必要のない暗記物

 5年の理科「天気の変化」のテストに、次のような問題があった。

〔4〕 次のような天気を予想することができる雲の名前を、下の□から選んで書き入れなさい。
(1) 雨の前ぶれ…………………………(     )
(2) しばらくするとくもる……………(     )
(3) やがて天気は悪くなっていく……(     )
(4) 晴れのしるし………………………(     )

うす雲・わた雲・うろこ雲・すじ雲

 サークルの例会で、参加した先生方にこの問題を出したが、全問正解した人はいない。
 わた雲が「晴れのしるし」というのは、ふだんの空を見ていると、よくわかる。 それに、わた雲は、空の下の方にできる。
 一般的にいって、空の高いところに雲があると、天気がくずれるしるしで、雲が低いところなら、晴れのしるしなのである。
 ただ、天気のくずれる雲を見分けるとなると、難しい。
 でも写真や絵なら、どれが「うす雲」で、どれが「うろこ雲」はわかるだろう。 しかし、「雨の前ぶれが、どの雲か?」と、問われると、どの雲でもよさそうな気さえする。
 だいたい、「雨の前ぶれ」と「しばらくするとくもる」と「やがて天気は悪くなっていく」では、どう違うのだ。
『国語辞典』(角川)で調べてみると、次のようになる。
「しばらく」は、①少しの間。②かりに。③長い間。で、
「やがて」は、①すなわち。②まもなく。③そのまま。④すぐ。ただちに。
 ゆえに、やがて天気の悪くなっていく「すじ雲」の方が、しばらくするとくもる「うろこ雲」より、早く天気がくずれるわけである。
 でも、どっちがどっちかなんて、覚えるのは、ややこしすぎる。
 テストでは、これが1問5点だ。一つ勘違い(覚え間違い)すれば、2問まちがうことになるから、10点も点数が引かれるのである。
 あるクラスで、ここを覚えさせるのに、だじゃれを使った。
「魚には、うろこがあるよね。しばらくするとくもるの、しばは「さば」だから、魚。だから「うろこ雲」だよ。」
 このだじゃれを教えなかったクラスより、平均点が大きく変わったのだ。

(1998.11.23)