写させる

「TOSS向山洋一教え方教室」に参加してきた。
 今回の教室で学んだことを一言であらわすなら、「写させる」である。
 算数で使われる『計算ドリル』を教師はどのように使っているか。いろんな先生に質問が回っていった。
「授業中に5分ぐらいとってやってます。」
「5分で終わらなかった子は、どうするんですか。」と向山先生。
 その質問に対して、「宿題にする」やら「放課後させる」やら、出るか、それは徹底できないことを向山先生は示します。

教師が出した宿題を全員徹底させないと、教室は荒れる。

と、向山先生。「教師の信頼問題だ」とも言われました。
 私の経験でいえば、徹底しきれない時もあるけれど、「全員、徹底させてるポーズ」は示している。出しっぱなしということはない。
 しかし、「宿題でもできない子がいる」と向山先生は言う。「わからないから」である。できる子なら、授業中に終わらせることができる。
 かといって、授業中に、わからない子に個別指導する時間は、教師にはない。
 そこで、『赤ねこ計算スキル』の登場である。
 資料として、実物を1冊もらった。そして、実際に向山先生の説明通り、1つのページをやった。最初2分。
 2問・5問・10問とコースがあるが、私は5問までしか間に合わなかった。
 2分後、正答は向山先生が⑩の答えから発表していく。⑥まで言ったあと、「5問コースの人、お待ちどう様でした」と言われて、⑤からの答えは、2問コースの②①の式と答えは、実にゆっくり言われた。
「百点だったと人?」手をあげれて、嬉しい。
 確かコース選択について、向山洋一氏は、「早い人もいるでしょうし、遅い人もいるでしょう。かけっこだって、スキーだって、早い遅いがあるのですから。」というように、言われた。「自分のペースでやればいいんです」とも言われた。
 なんか2問コースでも本当にいいんだ!と思わされる語りであった。
 さて、丸つけのあと、「3分間、時間をあげます。やってないところ、やりなさい。できたら、今度は自分で答えを見て丸をつけなさい。それも終わったら、早く終わったら問題をやりなさい。それもできたら、丸をつけたところに赤ねこシールをはりなさい。」と指示された。そして、このあとが重要、

 わからなかったら、写しておきなさい。写すのも、お勉強です。

 わからなかったら、堂々と写していいのである。しかも、写しやすいように、『赤ネコ計算スキル』では、プリントの縮小版に答えが書き込んであるのである。 向山算数でも、CDを聞いていると、「合ってたら丸をしなさい。間違えてたら、なおしなさい。できてなかったら、写しておきなさい。写すのも立派なお勉強です。一番、いけないのは、何も書いてないことです。」と言っている。
 向山先生の話によると、4年生でたし算のできない子が、「算数好き」と言い回っているそうである。
「わからなかったら、写しておきなさい。写すのもお勉強です。」というのは、向山先生の、できない子に対するいとおしさが生んだ言葉なのである。
(余談ですが、赤ネコシールは、出来た問題の番号に一つずつ貼る。「シールを貼るのが一番時間がかかるんです」と向山先生。シールは賞ではなくて、時間調整のために、あるんだそうである。)
 教え方教室後に、2次会があった。その席での自己紹介の中で、印象に残った話は、「答えを写させることをやらせていったら、算数の成績があがっていった」というものである。3人もの方が、その事実を実感こめて話されていた。
 教え方教室で、向山先生が社会のワークを紹介していた。
 1回目、答えを写させる。2回目、答えを折ってやらせる。(わからない時は見ていい。)3回目、答えを切り取ったものをやらせる。
「子どもは覚えるのが嫌いだ」と言ってたが、私もそうだったから、なるほどだ。

(1998.3.14)