アドバイスはダメだ

 今日、住吉同和教育推進協議会新転任研修が、ありました。
 そこで、体験的参加型人権学習というのをしたのです。
 例えば、「あなたもアドバイザー」という学習では、次のような悩みをその人になって読み、他の人がそれぞれにアドバイスをするというのをしました。

【自己紹介】 竹内 直人 五〇歳
       警察・副署長
【私の悩み】
 一九歳の娘の交際相手は、茶髪の元暴走族で、今トラックの運転助手です。収入が低く、娘が幸せになるとは考えられません。反対しているのですが、家出をするのではないかと悩んでいます。

「19歳といえば、未成年ですが、もう大人なんですから、いくら反対しても結婚する時は結婚しますよ。むしろ反対されることで、かえって、結婚しようと思うかもしれませんよ。ここは、彼氏とじっくり話し合ってみるのはいかかでしょうか。」
というようなことを私は偉そうに言いました。
 他の人も、だいたい似たようなものです。
 私は、次の悩みを読みました。

【自己紹介】 反町 隆男 一六歳
       高校一年生
【私の悩み】
 高校に入学してすぐに仲良くなった友だちにA中学は部落や在日韓国・朝鮮人が多いので、ややこしく気をつけた方がいいと言われました。しかし、部落や在日韓国・朝鮮人の友だちも大事にしたいし、今の友だちとの関係も崩したくないので悩んでいます。

「今の友だちの部落や在日韓国・朝鮮人の人たちの誤解をとくように話していくべきです。」
「何がややこしいのか聞いて、理解してもらう。」
など、もっともらしいアドバイスを受けるのですが、反町くんの立場になった私はどうもしっくりいきません。
「そうできればいいのでしょうが、そうする自信がありません。」
と、答えるしかなかったりするのです。
 アドバイスというのは、相手にとっては、それがいいのは、案外わかりきったことで、だけど、そうできないから悩んでるのではないでしょうか。
 ここでは、高校一年生の反町くんが、仲介役となって、それぞれのよさを主張すればいいのかもしれません。
 ただ、そんなことは、簡単にできることではないのです。
 私は、けっこう反町くんの立場になれるような気がします。
 私は、国語サークルや児童文化研究会などに入っていますが、そういう場で、なかなか教育技術の法則化運動のことや、向山洋一氏について、語ることはできません。
 主義主張の違い、好き嫌いというのは、なかなか説得によっては、変わらないと思うからです。
 また、そういう主張をすることで、自分がはねつけられることが、こわくなったりします。
 今日の学習で、アドバイスというのは参考になるけど、重荷にもなるからダメだと、思いました。
 授業のやり方とか就職や受験の問題なら、具体的なアドバイスがあるかもしれない。
 しかし、その人の心に起因する悩みは、アドバイスでは、どうにもできないのではないだろうか。
 ここはひたすら、相手の悩みを聞いてあげるしかないのではなかろうか。

(1999.5.18)