本を読んでいて「これだ!」と思うところが稀にあります。琴線に触れるとでも、いうのでしょう。
「自分に正直に生きる」ということに対して、かつて師匠が言下に「そりゃだめだ。ものにならん」と否定したことを思い出す。
自分に正直に生きれば、あれも欲しい、これも欲しい、仕事は怠ける、人には意地悪をするで、ろくな生き方にならない。世間で何事かをなしたといわれるような人を見てご覧。皆、自分に不正直な人だった。眠いときに寝ず、食べたいときに食べず、遊びたいのを我慢し、自分を殺して努力した人ばかりだというのである。 南 鶴溪『文字に聞く』(毎日新聞社)より
今まで「自分の気持ちに正直でないのはよくない」という気持ちがどこかにありました。ですから、やらなければならないことがあるのに、別のやりたいことをやっても「自分に正直に生きてるんだ」と言い訳してたような気がします。
自分に不正直である、自分を殺して努力する、要するに、それは「死中生あり」ということではないでしょうか。
自分を殺してこそ、初めて本当の生があるわけです。
(2002.3.28)