帝国ホテルのプロ意識

 宇井洋『帝国ホテル 感動のサービス』(ダイヤモンド社2000.2.17)を読むと、プロの仕事とはこうありたいものだと思えることが多く出てきます。

 帝国ホテルには普段は誰も人の通らない、扉を閉ざした玄関がある。それは正面玄関とは別に本館南側一階に設けられたVIP専用の玄関である。この玄関は国賓級の賓客、つまり各国の王族、首脳、大臣クラスの方々を迎えるときしか使われない。(P.38)

 VIP専用の玄関がある理由は、VIPだけのためではないのです。

「VIP専用玄関を設けたのは、もちろん賓客の安全性や利便性を図るためもあります。しかし、それ以上に重要な理由は一般のお客さまにご迷惑をかけないことです。通常ですと、VIPをお迎えするときには警備上の問題からロビーの一角を区切って立入禁止の非常体制敷かなければなりません。しかし、そうしますと、一般のお客さまはその間は足止めされてしまいます。」(P.38)

 何よりも一般の客を大切にする姿勢があります。
 ランドリーのサービスもまさしくプロといえます。

「お客さまの要望以上の仕事をするのがホテルのサービスだと思っています。ですから、特に注文がなくても、点検の段階でボタンの取れそうなものは付け直し、取れて紛失している場合はこのケースから同じボタンを探して、新たに付けてお返しします」(P.69)

 それでもボタンによっては特別の飾りがついていて、替えのボタンがない場合もあります。もし洗濯して紛失してしまったら大変です。

そのため、帝国ホテルでは万が一のことを考えて、洗濯前に一度ボタンを外して、洗濯後にまた付け直す。そのときも、最初とまったく同じ状態で返却できるように、ボタンの位置、縫いつけ具合、順番や配列などをスケッチとメモで残しておく。(P.69)

 危機管理が徹底しています。(学校現場の危機管理のなさの対象的です。)
 最善のサービスをするために、次のような研修もしています。

 入社一年以上の客室係はお客として帝国ホテルに泊まる宿泊研修を必ず受けることになっている。日頃、自分たちが清掃している客室に実際に宿泊し、あらゆる備品やアメニティグッズなどを使用することで客室の使い勝手を肌身で体験する。

 お客の視点に立つというのは、重要なことです。教師が自分の授業をビデオに撮って見るのには、児童の立場で授業を受ける疑似体験をするためでもあります。

「私たちがそこまでこだわるのは、帝国ホテルは日本一のホテルだという自負を持っているからだと思います。傲慢といわれるかもしれませんが、そういう自負は持つべきだと思っています。お客さまに謙虚な気持ちで接するのは当然ですが、自分たちの仕事には自負が必要です。『帝国ホテルの伝統を守るのは自分しかいない』と、私は勝手にそう思い込んで、毎日働いています」(P.99)

『日本の教育を支えるのは自分だ』と言えるだけの自負を持ちたいものです。

(2007.2.18)