作者と教科書会社の意向

 伝記「手塚治虫」で、作者の国松俊英さんが何を伝えたかったのかを考えてみます。
 ここで考慮しないといけないのは、教科書会社側の意向です。
 国松さんに原稿依頼するのは、教科書会社です。
 5年生国語の最後の単元に、この伝記を持ってきた意図が教科書会社側にはあるはずなのです。
 それを考え合わせると、作者の言いたいことはだいたい見えてきます。

 好きなこと・得意なことを努力してやり続けることで、人は、困難に立ち向かうことができ、多くの人のためになる仕事をも残していけるものだ。

「もうすぐ6年生になる皆さんも、ぜひ、好きなこと・得意なことを見つけ、そ れを努力でより高めて、人生をよりよく生きていってください。」
というようなことを言いたいのでしょう。
 それゆえに、この伝記では、治虫がいじめられたり、戦争に出会ったりする困難があり、それが得意なマンガ、好きなマンガによって、その困難を乗り越えていけたことが書いてあるのです。
 手塚治虫がどんなにすごい仕事をしたかだけを紹介しただけの伝記では、上記のようなメッセージは生まれてこないのです。

(2013.2.27)