動物実験と法規制

 資生堂のホームページを覗いてみたが、パッと目に付くところには、動物実験廃止のことは書いていません。企業イメージのアップに大々的にそのことを載せてるかもと思ったのですが、それは逆効果なのかもしれません。
 動物実験を廃止するという声明は、これまでは動物実験をしてきた、ということの裏返しでもあるからです。消費者にとっては、知りたくないことは知りたくないのです。化粧品を使うことから、動物実験が連想されるようでは、買うことにためらいが生じるかもしれません。
 それに、資生堂も、積極的に動物実験を廃止したいわけではないとみました。

 資生堂は2013年4月から化粧品の開発で動物実験を原則廃止すると、28日発表した。動物愛護の観点から、動物実験を経た化粧品が3月11日以降欧州連合(EU)域内で販売できなくなるのに対応する。同社は動物実験に代わり、細胞や人工皮膚を使った試験などで安全性を保証できる体制を確立したとしており、これら代替法の認可を国に働き掛ける方針だ。      『日本経済新聞』2013/2/28

 EUの販売禁止に合わせているわけです。

 EUは03年に化粧品に関する動物実験の禁止を定めた法規制を発効。発効から10年の猶予期間を経た13年3月11日以降は、動物実験をした製品や動物実験済みの原料を配合した製品の販売も全面禁止となる予定だ。これに対し、売上高全体に占める欧州の割合が12%と他社と比べ高い資生堂は、動物実験を廃止する方針を10年3月に明らかにしており、今回正式に廃止を決めた。  同記事引用

 ここで注目したいのは、EUがこの法規制を発効したのが、10年前の2003年であることです。10年もの猶予期間を設けているのです。その10年で、動物実験をしないでいい方法を考え出しなさい、ということです。
 次に、法規制の有効性にも注目したい。
 やはり法規制があるからこそ、多くの企業はその法規制に合わせて動くのでしょう。動物実験はおかしい、という声がいかにあがっても、これまでは、「安全性のために仕方がないのです」とお詫びすればすんだけれども、法規制で販売できなくなるとなれば、そうも言ってられないわけです。
 性善説では世の中は、なかなか動いていかないものです。
 正しいことダメなことは分かっていても、なかなか正しいことだけができるわけではありません。それは人間の弱さなのだけれど、その弱さを見越しているからこそ、人は法律を作ったのでしょう。
 自分の弱さを自覚して、自分の外に自分を戒めるものを作り出した。
 そのことこそが、人間のすばらしさではないでしょうか。
 ところで、動物実験に反対する人たちは、反対するだけでなく、法律を作るよう議員に働きかけたり、動物を使わない実験方法を開発するよう依頼したりもできるわけです。(実際にそうしているでしょうが。)

(2013.3.3)