トリアージドクター

 トリアージドクターを知っていますか。
 中谷彰宏氏の『スピード危機管理』(ダイヤモンド社2001.12.6)を読んで、初めて、こういうドクターがいることを知りました。

「トリアージ」というのは、フランス語で「救命」という意味です。
 たとえば、大きな事故が発生して、死傷者がたくさん出ます。
 そこに救命ドクターであるトリアージドクターが駆けつけます。
 トリアージドクターは、3種類のシールを持っています。
 まず患者さんを診て、もう死んでいる人には、「黒のシール」を貼ります。
 軽傷者には「緑のシール」、重傷者には「赤のシール」を貼ります。

 大事故の場合、たくさんの死傷者が出ます。
 重傷者は、すぐに病院に運ばなければ死んでしまいます。
 すでに死んでいる人や軽傷者まで、病院に運んでしまうと、重傷者の手当が遅れてしまいます。
 日本では、このトリアージドクターの制度がありません。
 ですから、この制度のあるアメリカと日本では、災害後の死傷者の数が、大きく変わってしまうのです。
「トリアージドクター」で、検索してみると、神戸新聞の記事を見つけました。

(注:荒井 震災一年前の米ノースリッジ地震について)
 クリントンは、十五分後には災害の発生を知った。直ちにFEMA(連邦危機管理庁)に連絡し、記者会見で全米に支援を呼びかけた。一時間後には州兵一万人に動員命令がかかり、消火は七分後に始まって、午後四時に鎮火した。一方で、緊急治療の優先順位を決める「トリアージ(選別)ドクター」がヘリで現場に向かい、けが人の症状を判別して回る。ヘリや救急車は皆、重傷者を拾う。おかげで死者は六十四人で済んだ。
それに対して日本は
 日本の場合、第一報が午前七時半、閣議が十時すぎだが、決めたのは国土庁長官を非常災害対策本部長に指定することだけ。自衛隊の出動も決められず、トリアージ制度もない。だから死者は六千人超と、戦後最悪の惨事となった。 http://www.kobe-np.co.jp/sinsai/kataru/2000/000530.html

 死者の家族や軽傷者は、病院へ運んでもらえないことに、不平を言うでしょう。 しかし、本当に多くの命を助けたいなら、そんな不平は受け流すしかないのです。命に責任を持つ、というのは、そういうことだと思います。

(2004.4.27)