分からない言葉を学ぶ意味

 内田樹『街場の教育論』(2008.11ミシマ社)より。

 私たちはまず言葉を覚えます。意味がよくわからない、何を指すのかわからない。それでいいんです。言葉を裏打ちする身体感覚がないというその欠落感をずっと維持できているからこそ、ある日その「容れ物」にジャストフィットする「中身」に出会うことができる。文字と読み方だけ知っていて、意味がわからない言葉というのは、磁石が鉄粉を引き付けるように、「その空虚を充填する意味」を引き寄せます。欠落感をいつも感じているからこそ、その欠落感を埋める方向に感覚が深化してゆく。

 意味の分からない古文や名文を音読する意味がここに載っていました。
 あれは、「容れ物」を作る行為だったのです。
 内田氏は、「赤ちゃんが言葉を覚えるのと同じ」と言っていました。
 赤ちゃんは、意味が分かってから言葉を覚えるのではありません。まずは、分からないけど、言葉を覚える。そして、その言葉の意味することを状況の中から発見し学び、自分の使える言葉として身につけていくわけです。
 すごく知的な作業をしているわけです。
 6年でも名文音読をやっていきます。両面で、表が新しく学ぶ名文、裏を4年5年で習ってきた名文を印刷していくつもりです。

(2010.4.6)