80手までは決まっている

 鈴木健二『スピーチに役立つ人を動かすいい話』(1995.12講談社)を開くと、赤鉛筆で線を引いた箇所がいくつもありました。

「プロの将棋は一局平均百二十手ぐらいですが、そのうち八十手までは決まっている手です。これを知っていれば、山登りでいえば、時間をかけずに五合目まで登れる道理です。初めて現れた局面にたっぷり時間を投入できます。勝負が始まってから考えるのでは遅いんですね」

 将棋士の羽生善治氏の言葉です。
 授業もやはり教材によっては決まった流し方があります。
 詩であれば、まず子ども各自に読ませ、数人読ませた後、全員で音読練習し、題名・作者・連の数を聴いていきます。この流れの中で、無駄な工夫は必要ありません。その後からが、詩の特性に合わせて授業していくことになります。
 題名を確認させるのは、その詩にとって、なぜその題名になったのかを意識させるためでもあります。それゆえ、題名の確認は、詩だけでなく、物語・説明文でも必要になってきます。
 作者の確認は、作者と話者がほぼ同じか、かけ離れているかを意識させることにもつながります。女の作者でも男になって書いたものもあるからです。
 最初の決まった流し方にも、それぞれねらいがあることも意識したいものです。

(2015.4.9)